しあわせのお宿
ヌリカベ
第一夜 しあわせのお裾分け
おはようございます。ようお眠りに成らはれましたか?
眠れんかった? 夜中にお目が覚めはりましたん。それはそれはよろしおしたなあ。お会いにならはったんどすか。
へえ、へえ。夜中の二時頃にいっらしゃいはりましたん。花瓶がこけて急に障子が開いたって。
その後、テレビも点いた。タイマーとかかかってはりませんでしたん? えっ、リモコン操作しても消えへんかったと。へー、テレビの画面にはなんにも映ってなかったんどすか。
不思議なことも有るもんやて…。そないな事おへんえ。ここでは時々起こるんどすえ。
あまり世間様には公開してまへんし、取材なんかもお断りしとるんですけど、人様の口には戸は立てられへんって言いまっしゃろ。
噂を聞いていらっしゃるお客さんも多いんどす。そないなお客さんの所には望みをお聞きにならはったんか、必ずとゆうてええ程にお越しにならはるんどす。
えっ? 何がって? そりゃ決まっておすがな。座敷童はんどすがな。
たいがい夜中においはって、音をたてたり、物をこかしたりせいぜいその程度のおいたをしはる程度ですけどなあ。
それでも、子宝に恵まれたとかお仕事が見つかったとか。中にはえらい出世しはって、会社の社長はんにならはったとか国会議員の先生にならはった方もいてらっしゃるんどすえ。
おかげで、こうして感謝のお手紙やおみやを送ってくれはる方がぎょうさんいてはるんどす。こうやってうちの宿も幸せをお裾分けしてもろてますのんえ。
それでも障子が開いたり、テレビが点いたりって、そこまでおいたしはる事は今までおへんどしたなあ。
お客さん、これはきっとエエことがおますのやおへんか。
えっ、なんどす。その座敷童はんが、どないしはったって。
へぇ、軍服着て血塗れやったって?
そら、あれと違いますか。ハロウィンが近いよってに、コスプレちゅうやつやおへんのどすか。
ほんなら、またのお越しを。どうぞよろしゅうに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます