第400話 愛する者を守る一撃

 みながディザスターを相手にして、苦戦を強いられている。本来あそこまで大量に出てくるものではないのだ。


 地上の様子を見ながらレンは、魔門の方に向かって飛ぶ。


「レン!どこに向かって」


 再びワイバーンに乗り空を駆けるフィレンがレンに驚きつつ声をかける。それに対してレンは朗らかに微笑んだ。


「魔門を壊して来ます」


 短く伝えてレンは行く。


「まさか……ね……」


 フィレンは、嫌な予感を感じつつディザスターの迎撃を続けるのだった。





 多くの者が命をかけて戦っている。違う国のフェインドラや聖騎士達。クシフォンやフィーズら種族が違う者ですら、協力を惜しまないで来てくれた。


「終わらせよう。これで全てを」


 上空に留まり、さらに上にある魔門に目を向ける。今も、ディザスターが垂れ流されている門は健在だ。



 切り札は、ナビゲーターに託した。《ーーーーーー》を活かしてもらうのは彼女が適任だ。失敗の恐れもあって実験できてないのが恐ろしい所だが、賭けるしかないだろう。


 自らの心臓の音が大きく聞こえる気がした。


「怖いな……ああ、怖いよ」


 これからすることを考えると、どうしても躊躇してしまう。それでも守りたい人のために、立ち上がらないわけにはいかない。



 パチンと一度自分の頬を叩いて気合いを入れる。


「さあ、やろうか!ステータス全開放!」


 自らの身体から光が溢れてくるのがわかった。その分、どこか壊れていくような感覚も。


 あの時、母はどのような思いでこの技を使おうとしたのか。


 いや、わかっている。今の自分と同じ気持ちだろう。守りたい者を守るために使ったに決まっている。



「戦いを終わらせる!全ステータスを代償に放て」


 レンから放たれる光が徐々に周囲に広がり始める。



「《愛する者を守る一撃》」


 レンから放たれた命の光が、戦う者達を、ディザスターを全てを包み込む。


 ディザスターとの戦いで傷ついたものを癒し、地上や空のディザスターを全て消滅させて魔門にまで到達する。


「届け!」


 レンの言葉に答えるかのように光が魔門とぶつかる。



「ありがとう、ユニークスキル。うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 持っているユニークスキルも全て代償に力に変えた。残されたものはもうない。徐々に身体から力が抜けていくが、魔門が壊れるまでまだ油断しない。



 レンの光が魔門を覆い、魔門にヒビが入り始める。


 みながその光景を見つめていた。魔門が崩壊して黒い粒子となって消え去っていく。


 災厄は去った。



「終わ……ったよ」


 その光景を見ながらレンは、地上に落ちていくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る