第398話 切り札と命をかけて

「キリがねぇぞ!」


「ええ、流石にこのままでは私達も保ちませんよ!」


「聖域!全くだね」


 王都の防衛でディザスターと戦うアルファード達は、ディザスターの侵攻に苦戦し始めていた。






「お姉ちゃん、レンさん達!」


「ベルゼはどうした?」


 レン達は、アンナやアイリ、フィレンと合流する。


「ベルゼは倒したけど……魔門が閉じなかった。どうするか考えないとだ」


「一旦、アルファード達と合流しましょ。ディザスターは王都の向かってるようだし」


 フィレンの言葉に一同が頷いて、合流するために移動を開始した。





「ベルゼを倒せれば魔門も閉じられると思ったが、そうもいかないのか……」


 レン達の話を聞き、空を見上げながらアルファードがつぶやいた。


「閉じる手段はないのかい?」


「これまでは、消すっていう手段がありましたけどね。魔門を破壊できるだけの火力が出せれば閉じれると思います」


 ディザスターに魔法を放ちながら、レンが答える。


「ミラ、大賢者の魔法で吹き飛ばせないの?」


「うーん、厳しいね。火力不足だね。みんなも疲労してるから魔門を吹き飛ばすのはちょっとね」


 ベルゼとの戦いでの疲労が大きかった。



「ディザスターが出て来なくなるまでぶっ倒すしかないってか?」


「予想ですけど、あれは無限に出てくると思います」


 シャンの言葉にリータが答える。空から落ちてくるディザスターは止まるところを知らない。


「マグノリアは、何か良い方法を知らないか?」


「わからないわね……相当の火力を出せれば良いけど。そんな方法」



「そうそう上手くいくわけがないか。あと少しなんだけどな」


 とレンは呟く。


「〈デリート〉もないからね。でも、どうしよう」


 とエリアスが答える。



 現在、目の前ではミラが魔法で大波を起こしてディザスターを少しでも王都から遠ざけている。


 フェインドラ率いる聖騎士達が盾を構えて迎え撃つ態勢だ。




『マスター、ベルゼとの戦い使うかもと思っていた切り札を使いますか?』


「下手したら、自分自身終わりだもんな。使いたくなかったけど、こうなったらやるしかないか」


 波に押し流されたディザスターがこちらを目指して向かっているのが見える。無限に出てくるディザスターをずっと押し留めるのは不可能だ。



「ミラ、まだディザスターを止めてられるか?」


「うん、まだまだやれるよ!」


 ミラはそう答えるが、無理をしているだろうことはわかる。そう長くは保たないかもしれない。



「ナビゲーターさん、出てきて」


「はい、マスター」


 人型ナビゲーターがアイテムボックスから現れる。


「よし、ちゃちゃっと魔門を閉じてきますかぁ」


 とレンが声を上げる。


「出来るのか?」


「ええ、俺のユニークスキルに任せてください!ばっちり、魔門を壊して見せますから。王都の方をお願いしますよ!」


 とレンはサムズアップして答える。


 レンの言葉を信頼してくれたのだろう。みなが前を向いてディザスターに相対する。


「じゃあ、ナビゲーターさん。後はお願いね」


「はい、マスター。ご武運を」


 後ろに下がってレンとナビゲーターが会話する。後は彼女に託すことになるからだ。



「レン、もしかしてレミさんと同じことをする気じゃないよね?」


 エリアスだ。レンとしても普通に気づかれるよなと思っていた。


「そうだな、止めようと思ってるのか?」


「そうだよ、あなたに死んでほしいと思ってるわけない」



 そう言ってくれることはわかっていた。だから、悪いけど気を失ってもらおうとレンは思う。


 素早くエリアスのうなじに拳を落とそうとする。


 だが、


「させないわよ!」


「ルティアまで……」


 ルティアにレンの拳は止められているのだった。

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