第397話 撃破と閉じない魔門

「おのれ!」


 剣を突きつけるレンに対して、ベルゼは闇を纏った拳で殴りかかろうとする。だが、その拳は腕に絡みつく鎖に絡みとられていた。


「神獣の鎖」


 エリアスがベルゼの拳を止める。片腕を止められたベルゼの懐に、ルティアが突っ込む。


「聖拳!」


 渾身の一撃は、腹部に吸い込まれベルゼが血を吐く。だが、ベルゼも動く左の拳をルティア目掛けて振り下ろそうとする。


 しかし、ルティアが身軽な動きで拳を回避して腕を掴みベルゼを投げる。


「ガァっ!」


「レンのお母さんの分、返させてもらうわよ!」


 とルティアが言った直後に、鎖が引かれベルゼは宙に舞う。



「よもや、奴らまでここまで実力を上げていよとは!ぬっ!」


 ベルゼの正面では、ミラが杖を構えて詠唱を終えていた。


「マキシマムマジック、ドラゴニックファイヤ!」


 大賢者の強力な炎に飲まれて、ベルゼは地面に落下する。落下先では、レンが構えていた。


「おのれ!小賢しいことを、災厄の力を思い知らせてやる!」


「何度でもそれを超えてみせるさ」


 ベルゼの全身から闇が解き放たれた。もう人型ではない、正真正銘の化け物の見た目だ。


「ガァァァァァァァァ!」


 ベルゼがドラゴンのような姿を取り、咆哮を上げる。


『決めに行きましょう。《プログラミング》で作ったウイルスでベルゼの力も長くは持たないでしょう』


「ああ、全力でぶつかる」


 レンがマジックボックスと共にベルゼとの距離を詰める。闇を振り撒き攻撃を仕掛けてくるが、レンは多少の怪我は構わずに進む。


「形状変化、槍。一斉掃射!」


 マジックボックスを大量の槍に変形させて、ベルゼにぶつける。


「ガァァァァァァァァぁぁぁぁ!」


 ベルゼが苦しみの声を上げるのを見て、トドメを刺すために踏み込む。


「いくぞ!決着をつける」


 レンの声に、エリアス達も動く。


「形状変化、鎖。ベルゼを捕らえろ!」


 マジックボックスがベルゼを完全に止め上げる。



「《神獣化》、雷速……神獣の一閃!」


「聖炎付与、聖剣!」


「マキシマムマジック、セイクリッドバレット!」


「破黒の剣戟!」



 エリアス、ルティア、ミラ、レンの4人の攻撃がベルゼに刺さる。闇が吹き飛ばされて、ボロボロのベルゼが現れる。



「がはっ……よもや、我が破れる……と。ありえぬ……」


「お前の負けだ、ベルゼ!」


「ワシの負けじゃ……じゃが、これで終わるとは思わんことじゃな」


 ベルゼから闇が抜け出して魔門に向かっていく。そのままベルゼは力尽き倒れた。



「勝ったんだよな……」


「うん」


 レンにエリアスが答える。災厄ベルゼを打ち倒すことができた。これで、戦いは終わった。




「レン、あれ……」


 ルティアが空を指さす。未だに上空の魔門は健在だ。ディザスターが溢れるのも止まっていない。


「ベルゼは、確かに死んだ。でも魔門は止まらないってことなの?」


 ミラがベルゼの死体を見ながら言う。



「まだ危機は去ってない……」


 ベルゼを討つことが出来たが、魔門が閉じていない。レン達は、揃って空の門を見つめるのだった。

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