第248話 封龍の森へと魔物

「錬金魔法!」


 フェレンスから封龍の森を望むことが出来る場所、そこでミラが魔法を発動して岩壁を作り出す。


「素晴らしい腕前です!お若いのに、良くここまでの魔法を行使出来ますね」


 と周囲にいた魔法使いの1人がミラの魔法を見て声を上げる。


「いやぁ、それほどでも〜」


 嬉しそうに答えるのだった。


 賢者カラミィに魔法を教えてもらっているのは伊達ではないのだ。


「じゃあ、どんどんやってくぞぉぉ!」


 と言いながら調子良く魔法を発動していくのだった。




「頑張ってるわね、ミラ。ルティア様は、ご無理はなさらないでくださいね」


 と近くにいるルティアに声をかける。国王に言われていることもあるため、目の届く所にいて欲しいと思った。


「これでも聖女になるために頑張ってるんだから、誰かのために無理をすることもあるわよ」


 と言いながら、怪我して戻ってきた冒険者に回復を行なっている。フィレンとしては、昔の聖女ネーヴァンを見ているような気持ちになった。



「何も起きなければ良いんだけど無理か……」


 みんなが懸命に動いている。最善を尽くすしか無いのだろうと思うのだった。






「それでは、帝国に向けて出発するとしましょう」


 ハルカがエリアスとナビゲーターの2人に声をかける。場所は、フェレンスの街中だ。


 大抵のものは、アイテムボックスに入れてあるため手ぶらの状態だ。


「はい!」


「ええ」


 と2人が答える。そして、ナビゲーターが指をパチンと一回弾くと3人は、封龍の森の目の前に移動していた。


「さすがですね、転移が出来るというのは偵察にとってとても利益が大きい」


 周囲を見渡しながら、ハルカが答える。


「いえいえ、私のマスターが優れているからですよ」


 朗らかにナビゲーターが答え、金髪の髪を撫であげる。



「近くに魔物はいないみたいです!」


「ありがとう、エリアス。では進みましょう」


 嗅覚の良いエリアスが周囲を探ったが魔物は見つからないので、そのまま進むことにする。



「ナビゲーターさん、歩き辛くない?」


 森を進むナビゲーターにエリアスが聞く。ナビゲーターの服装は、ハイヒールに黒のドレス。とてもではないが、森を進むのに適してるとは言えない。


「いえ、そうでもないですよ。マスターの作った服の性能が素晴らしいものですので」


 レンが作成したナビゲーターの装備品にもエリアス達同様スキルが付与されている。


「レンは、なんでも出来るようになっていくなぁ」


「そうですね、いつかは私も要らなくなるかもしれません」


 遥か先を見据えるようにナビゲーターが呟く。


「それはないと思うよ。レンはそんなことを言う人じゃないからね!」


「ふふっ、そうですね。マスターにずっと大切にしてもらいましょう」


 とナビゲーターは微笑む。



 エリアスは、どこか羨ましく感じるのだった。





「足音が聞こえます。魔物でしょうね」


 とハルカが呟く。


「ゴブリンかな……そこまで数はいない」


 とエリアスも言いながら、武器に手を添えるのだった。

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