第217話 期限と死の宣告

 魔物では無い普通の鳥が鳴きながら、大量に飛んでいくのが見えた。


「もしかして、良くない予兆じゃないよな?」


 どこか遠くへと飛んでいく鳥の姿を見つめながらレンは呟く。少し前にあった聖騎士長、フェインドラとの戦い。その最後に起きた出来事……それにより事態は深刻なものになろうとしている。


「レン殿、急ぎましょう」


「はい、すみません」


 前を歩くフェインドラに声をかけられてレンも続いて歩いていくのだった。






「レン……」


 夕暮れの空を見上げながらエリアスが呟く。何故だかわからないが急にレンのことが強く頭をよぎり言葉に出した。


「エリアス、この話を聞きましたか?」


 と今エリアスの師であるハルカが紙を手渡してくる。彼女はいつの間にかエリアス殿からエリアスと言うようになっていた。弟子になったからだろう。


「神聖国からですか?どれどれ……これって……」


 エリアスは、一通り手紙に目を通した。書かれていた内容は、近いうちに神聖国と帝国に置いて起きるであろう災厄についてのことだ。


「ええ、神聖国の神女の神託によるものです。これは確実に当たると言っていいものです」


 ハルカが本当だと説明する。


「レンに何かあったら……」


 神聖国に向かうべきではないだろうか……とエリアスは思うが、ハルカが言葉を続ける。


「あなたでは足手まといになります。逆にレン殿が庇って何かが起きるかもしれません。悔しいでしょうが、耐えてください」


「ぐ……はい……」


 唇を噛みながらエリアスは答えた。まだまだレンと並ぶには程遠いのだ。まだ力になれないことを悔しく思うのだった。


「さあ、強くなりますよ」


「お願いします!」


 ハルカに声をかけられてエリアスは、剣を取るのだった。






「災厄が降り注ぐ!とてつもない展開じゃん、師匠!」


 ミラがカラミィに伝えられた言葉に反応する。


「声が大きいぞ、馬鹿弟子!イベントみたいな反応をしてるが、これは結構な危機なんだからな」


 とカラミィに怒られる。


 ミラとしては、ゲームなんかのストーリーが頭を抜けていない様だ。


「うーむ、なかなか実感が……」


「もう喋っていても仕方ない。ほれ、続けるぞ」


 と言いながらカラミィが魔法を放つ。ミラもそれに続いて鍛えるのだった。






「師匠、神聖国のことはどうするの?」


 聖女ネーヴァンに対してルティアが質問する。


「そうだね……まだ、国同士で協力することになったとはいえ、完全に緊急時の動き方が決まったわけじゃないからね……下手に動けないね」


 難しい表情をしながらもネーヴァンが答える。


「レンもいるし、何かあったら不安だわ……」


 ルティアがポツリと呟く。


「まあ、アルファードもいるから心配は無いと思いたいねぇ」


 ネーヴァンも呟くのだった。






「聖騎士長、其方が斬った物を見せて貰いたい」


 謁見の間において、聖王が口を開く。


「はっ、ここに」


 フェインドラが言うと聖騎士が鳥型の魔物の様な機械のような物を出す。


「なんとも不気味な……我が国を見ておったのだろうか……」


 それを覗き込みながら聖王が言う。レンも同じ感想だ。


「もしかすると近いのでしょうね……災厄が」


 神女が口を開く。瞬間に広間の聖騎士達に緊張が走る様子を感じた。



「また魔門が開くってのは嫌だな……」


 アルファードがレンに声をかけてくる。


「ええ……」




「暗くなるのも仕方が無いが、まだ起きてない!落ち込むのは速いぞ!」


 聖王の言葉が飛び、周囲の空気が和らぐのを感じた。


「そうですね。我々が折れれば国を守る者はおりません!神聖国聖騎士であればどんな困難にも立ち向かいましょう」


 フェインドラが続く。


「私も、神託が頂けるように祈ります!」


 神女様が手を組み合わせて、跪く。




 徐々に神女様が光だしていた。


 おお……と周囲の聖騎士達から声が上がる。


「凄いな……」


 なかなか言葉が思い浮かばずレンは安直なことを言う。



 神女が目を見開き言葉を発する。


「2日後です……2日後の昼過ぎ。開戦の一撃が我が国に放たれます……。はぁ……はぁ」


 神託をもらうのもMPが必要なのか、神女は苦しそうな様子だ。だが、言葉を続ける。


「誰かの死が……見える……。大きな損失となります……あっ……」


 神女が倒れそうになるが、アルキア王子が支える。




 リディエル神聖国への災厄が目の前に迫っているのだった。



「後2日か……いきなりのことだ。其方らはどうする?」


 聖王がアルキア王子に聞く。


「協力する約束を交わしました……我々も少しでも力になりたいと思っております」


「そうか……娘を連れて逃げて欲しい気持ちもあるのだがな……」


「いえ、神女様もお逃げにはならないでしょう」





「神女様、かなり無理されましたね……」


 フェインドラは、神女を送りつつ言葉をかける。


「国の危機ですので当然です……」


「もしかして、誰か死ぬか見えたのですか?」


 フェインドラが疑問を投げかける。もしかすると結果まで見えて隠しているのかもしれないからだ。



「隠し事は出来ませんか……」


 はぁ……息を吐き出しながら神女が答える。


「誰が死ぬのでしょうか?」


「わかりました、教えましょう。まだ完全に確定ではありませんが……アルファードさん、レンさん、そして聖騎士長……この中の誰かが死ぬことになります」


 神託を受けた神女が告げるのだった……

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