第200話 無敵の盾と戦いの終わり

「転移は妨害されてるから駄目、正面突破あるのみだな」


 と言いレンは剣を構える。上空から迫るのは魔族だ。1番最初にこちらに屈強そうな3人が向かってくる。


「魔の八翼なのじゃ!」


 とクシフォンが言う。彼女は相手の強さにくわしいのかもしれない。


「下がってください、クシフォン様。あなたが標的かもしれません」


 とフィーズがクシフォンを庇っている。


 魔の八翼は、ナビゲーターとアルファード、ハルカが倒しているためもう残りは3人となっていた。


「貴様の命をもらう……」


「強い魔族のために平和はいらない……」


「今の魔王に従うものには死を……」


 と言い相手も構えている。目が虚で変な感覚があった。


「魔の八翼で、残り3人と……魔王側1人もいないんだな」


 と思ったことを口にしてしまう。


「むう……血の気が多いのばっかりなのじゃ!」


「貴様、魔王様を馬鹿にしたな?」


 クシフォンとフィーズから文句が飛んでくる。


「悪かったな……」


 とレンは答えながら、クシフォン達を狙った攻撃を剣で受け止める。そしてそこにエリアスの攻撃が入り、敵が怯みながら後退する。




 会場の上の方では、観客への被害を食い止めるためフィレンがひたすら矢を射っている。


「不思議ね……全盛期の感覚を超えて力を取り戻しつつある」


 自分の弓矢の技量を見ながら呟く。ギルド長になってからは、そこまで武器に触れる機会が減ってしまった。何もしなければ当然、力は落ちてしまうのだ。


「ここまで速く戻るのは普通じゃないわね。きっと彼のお陰かしら……」


 とフィレンが微笑む。フェレンスで出会った冒険者、レン・オリガミ。彼は自らのステータスに新たなステータスを与えてくれた。そしてその時に付いた称号加護を受けし者これのお陰かとてつもないスピードで成長している。


「素敵な人ね……レン。マジックアロー!」


 フィレンが複数の魔法を付与した矢を放ち、会場を襲撃しようとする魔族達を貫いていく。


「そして……ステータス外スキル発動!」


 フィレンが先ほど放った矢は、それぞれ1人を貫いただけに留まらず、次々と他の敵に向かっていく。


 フェレンスでレンが見たフィレンの技は、ステータス外スキルだったのだ。


「それでも、あの魔法陣はどうにも出来そうにないわね……」


 とフィレンが呟く。自分は、少しでも多くの魔族を倒して負担を減らすしかないなと思うのだった。





「ライトニング!」


 エリアスがとてつもないスピードで、跳躍し魔の八翼の1人を倒す。


 近くでは、ハルカやネーヴァンもそれぞれ倒したようだ。


「俺の見間違いかな?拳で倒したよな?」


 とレンは呟く。ネーヴァンは、敵を殴って終わらせていたように見えた。


「そう、師匠は拳で戦えるんだよ!格好良いよね」


 とルティアが後ろから言ってくる。聖女じゃねーのかよ?と疑いたくなるが怖いのでなんとか心に留めておく。



「これはキリがありませんね、レン殿援護しますので飛んで魔法陣を目指せませんか?」


 会場に近づく敵を狙撃していたハルカが言ってくる。


「わかりました!」


 と言いながらレンは飛び上がる。



 転移が妨害されるため少しでも飛んで近ずく必要がある。当然、それを魔族が許すはずもなく狙ってくるがハルカやフィレンの援護によって楽に飛んで行ける。





「シャシャ、そろそろ準備出来ましたかね?撃ちましょうか、破壊の魔剣を」


 サジャードが武器を持つ手にさらに力を入れると、切っ先から黒いオーラが吹き出し始める。


「さあ、破壊を!」


 剣から赤黒い光線が放たれた……





「予想より放たれるのが速い!レン殿!」


 ハルカが声を上げる。


「私も上に行くわ」


 とレミがレンの方に向かって飛びあがる。



「私も何か」


「エリアス、少しの間ですが風魔法を付与します。それでマスターの助けになってください!」


 とナビゲーターがエリアスに声をかける。


「分かった行ってくる!」


 と言いながらエリアスは飛び立つ。


 ナビゲーターは、現在はレンのようにインストールは使えないが高度な魔法でサポートすることが出来る。


「あ、やっぱりナビゲーターさんだったんだ」


「すっげえ、金髪の美人いるじゃんって思ってたよ」


 とルティアとミラが声をかける。


「ええ、2人とも久しぶりですね。それにしても随分余裕そうですが?」


 とナビゲーターが言う。


「レン達ならどうにか出来るって分かってるからね」


 と答えるのだった。




「ヒャハハ、喰らいなさい!破壊の闇を!」


 サジャードから放たれた攻撃はとても巨大な規模のものであり、レンのデリートでも一部しか消すことが出来ないような感じであった。


「レイだったら、出来たかもしれないけど……まあ今あるものでなんとかするしかないな」


 ここでしくじれば会場に落ちかねない。


 だが、レンにはとっておきのアイテムがある。



 レンは、アイテムボックスから盾を取り出して構える。


「イージスが強化してくれたからな……まさか、これを見越したのか?まあ……良いか!障壁展開!」


 会場を覆うように巨大な障壁が張られる。これは絶対の防御、1日1回の発動が可能なものだ。



「ヒャ?なんですか、それは!壊してしまいなさい!」


 とサジャードが言うが障壁は一向に破壊されず、防がれていく。



「まずいな……守れるは良いんだけど、俺が盾を支えきれない」


 守れてはいる。だが、攻撃にレンが押され始めている。少しでも盾を違う方向に向ければ攻撃が地上に届いてしまうのだ。


「ヒャハ、押されて来ましたか!まだまだ終わりませんよ!」



「厳しいか?……ん?」


 レンの後ろには、レミとエリアスが来て2人が支えてくれる。


「踏ん張って、レン!」


「お母さんも手伝うから!」


 と言いながら背中を押してくる。


「ああ、これならいける!」


 と言い一気にサジャードの攻撃を跳ね返して、サジャードに迫っていく。



「フフッ……本当に目障りな奴らしかいませんね。まぁ良いでしょう。今度来た時は、最初から潰すつもりで行きますので」


 と言いながらサジャードは、攻撃をやめて移動する。効果が切れた盾をアイテムボックスにしまったレンは剣を取り出してサジャードに迫る。


「待て、サジャード!」


 剣を振るうが、サジャードが闇となって消え空振りに終わる。逃げてしまったようだ。



 下の方でも魔族が倒され、戦いは終結したのだった。

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