第183話 チャンピオンの試合と準々決勝

『さあ、7試合目は前回チャンピオンのアルファードの登場だぁ!そしてチャンピオンと戦うのは、リディエル神聖国からやってきた聖騎士、カルナール選手です』


 紹介が終わった瞬間に、観客席からアルファードコールが巻き起こる。相手にとっては、かなりアウェイ感を感じることになるだろうなとレンは思う。


「リディエル神聖国?そんな国があるんだな……」


 何気に王国から出たことがないレンとしては他国のことに興味はあった。


「かつて、リディエルという名の神が降臨してたっていう神聖な国よ。国には聖騎士と呼ばれる者たちが魔物なんかを討伐してて唯一冒険者ギルドを置いてない場所よ」


 とルティアがスラスラと説明してくれる。ギルドがない国なんてのもあるのか……と思った。


 リディエル神聖国のカルナール選手は、全身を甲冑で覆っており強そうに見えた。対するアルファードは、特に鎧などを着ているわけでもなく普通の服に見える。


『マスターの装備と同じものであるかもしれませんね』


 とナビゲーターさんが言う。見かけに寄らないと言うわけだ。



『それでは始めてください!』


 とコールがなされた瞬間、最初に仕掛けたのはカルナールの方だった。


 剣を使ってアルファードに斬りかかる。しかしアルファードは、短剣を持ち出して余裕そうに攻撃をいなしていた。


「聖騎士って人もかなりの実力だね」


 とエリアスが隣で言っている。確かに正確な一撃一撃を繰り出しておりまさに騎士という戦い方で格好いいものだと思った。


「かっこいいね、私も聖騎士になろうかな」


 ミラは、賢者ではなく聖騎士になろうと言い出す。なかなか流されやすい性格が出ている。カラミィに聞かれたら怒られるんじゃないか?とも思う。


 カルナールが連続攻撃を仕掛けているが、アルファードには一撃も届いていないようだった。確かにカルナールの実力もかなり高いがそれをアルファードは遥かに超えていることだろう。




「良い実力だな」


 と言いながらアルファードが短剣を降るとカルナールが吹き飛ばされる。


 吹き飛ばされたカルナールは、地面に剣を刺して勢いを殺してギリギリの所で止まっていた。


「短剣であんなこと出来るのかよ……」


 レンは目を見開いて試合に食い入った。アルファードの実力はレンの予想以上と考えなければならないなと思う。



『ワァァァァァァ!』


 突然のことに観客も一瞬シーンとなってその直後に歓声が上がる。



 まだ全然力を出していないのだろう。アルファードの表情は、物足りなさを感じさせるものだった。


「うぉぉぉぉぉぉ!」


 カルナールが全力でアルファードに向かっていくが、


「じゃあな」


 とアルファードが言った瞬間に場外に投げ出されていた。



『これは、観客のみなさんは見えたでしょうか?私には何が起きたのかさっぱりですが、勝ったのはアルファード選手です。今年も圧倒的なスタートを切って行きましたぁぁ!』


 と実況がいう。


 レン達の周囲からも何が起きたんだろうな……などの声が上がっていた。


『あれは、衝撃波ですね。あそこまでの威力を出すというのは恐ろしいものです』


 とハルカが解説する。



「これでまだそこまで力を出してないよな……」


「うん、王国最強はかなり高い壁だね」


 とレンとエリアスは話す。



「あんなのが人間にはいるのか、化け物だな」


 とフィーズが言っている。反応に困るなとレンは思った。



 その後、第8試合も終わり午後から再開することになる。


「お腹空いたわね〜」


 とのんびりとルティアが言う。


「はぁ、緊張するなぁ」


 とエリアスが呟く。昼の初戦はエリアスから始まる。そして相手は、フィーズなのだ。緊張してしまう気持ちはわかる。



「私、昼食を作ってきたわよ!さあ、どうぞ」


 と言いながらレミがお弁当を広げる。


「いつの間に!」


 とレンは驚く。もうここにいるお母さんの料理を食べたのは記憶にすら残っていないような過去のことだ。


「レミさんのご飯美味しいんだよね!」


 とエリアスが嬉しそうだ。一時期一緒に暮らしていた時に食べたことがあるのだろう。


「たくさんあって嬉しいわ」


「おいしそう〜」


 ルティアとミラもとても嬉しそうにしている。



 確かにレミのご飯はとても美味しいものだった。なんだか運動会にでも来ているかのような気分になるレンだった。




 昼からはレンも試合があるため、レンとエリアスは揃って下に降りることにしていた。


 ちなみに、クシフォンとフィーズも一緒に昼食を食べていた。フィーズが素直においしいと言って食べていたのはとても衝撃を受けるものだった。



「レンもクシフォンさんと当たるんだよね!お互い頑張らないとだね」


 と移動しながらエリアスが言う。


「ああ、勝ってくるさ。エリアスも勝ってくれよ?俺と戦うんだろう?」


 今回やけにレンと戦うことを考えているエリアスだ。是非とも勝ってきて欲しいし、レンもここで負けるつもりはない。




『さあ、そろそろ準々決勝の始まる時間だぁ!早速だが選手を紹介していくぞぉ!』


 とアナウンスが始まる。


「フィーズ頑張るのじゃぞ!」


「お任せください、クシフォン様!」


 フィーズは、クシフォンの応援でかなりやる気が出たようだ。クシフォンが相手では、チョロいものだ。



「エリアス、応援してる!」


「ええ、先に勝ちに行くからね」


 レンもエリアスの応援を行うのだった。





 舞台でエリアスとフィーズが向かい合う。


『まずは、エリアス選手だ。迷宮都市で活躍しているクラン紫紺の絆のBランク冒険者だ。だが、すでに実力はAランクに達していることでしょう!』




『そして、次にミーズ選手。これまで目立った活躍を聞いたことがない人だが、かなりの実力だ!どうな試合になるか楽しみです!』


 と両者が紹介される。



「私はそう簡単にはやられんぞ。全力で来るんだなエリアス」


 とフィーズが言う。


「ええ、わかってる」


 と言いながらエリアスは、強者に相対するのだった。

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