第184話 エリアス対フィーズと覚醒?

『さあ、それでは準々決勝エリアス選手対ミーズ選手!始めてください』




「ライトニング……」


 一言エリアスが呟き、雷を纏う。そして、地面を蹴りフィーズに向かって距離を詰める。


「ふっ、私も油断出来ないな」


 とフィーズが呟きつつ、剣でエリアスの攻撃を受け止める。


 否、受け止めたと思っていた。だが、エリアスの持っていた剣が受け止めた瞬間に消えて短剣に持ち変わっていたのだ。


「はぁぁぁぁ!」


 エリアスが短剣でフィーズの首元を狙う。


「厄介な……」


 フィーズは、回避するが短剣が頬に掠っていく。頬からは血が少しずつ流れ出した。



 さらにエリアスの攻撃は止まらない。数歩後ろに下がった時には武器が大剣に持ち変わっていた。


「とりゃあ!」


 と大剣を振り剣で防御したフィーズを後ろに飛ばす。


「なんて力だ!くっ……!」


 吹き飛びながらフィーズがエリアスを見た時、エリアスはすでに武器を弓に持ち替えておりそれで射ってくる。


 急所以外は無視しながら矢を落としながら、エリアスの動きの良さに驚く。


『エリアス選手の凄まじい猛攻ダァ!これはミーズ選手こたえたかぁ?』




「気を抜かない、気を抜かない」


 とエリアスは呟きつつ、注意をこらす。



「やはり、侮っていたのは私だったな」


 矢を抜きながらフィーズが言う。まだ全然戦うことが出来るというような様子だ。


「タフだなぁ」


 とエリアスが呟く。


「それは、そちらもだろう?今度は、私も仕掛ける。闇魔法発動」


 フィーズの手に黒いモヤが集まる。


『さあ、ミーズ選手が魔法を発動したようだ。どんな戦いを見せてくれるか!』


「闇魔法……あんまり見ないからどんな使い方をしてくるか……」


 エリアスが呟く。レンが魔法に混ぜて黒炎などをやっていたが、それ以外ではそこまで見ない。


「我が身に纏え!黒鎧」


 とフィーズが言った瞬間に黒いモヤがフィーズに付き、全身を覆う。


『魔法を纏ったぁぁ!この黒い姿には恐ろしさすら感じます』



「大きくなってる!これは一体……」


 フィーズが先程の3倍程の体格になり、エリアスの前にそびえ立つ。


 あまりの変化に会場もシーンとなってしまう。




「闇魔法の錯覚か?巨大化とはな」


 とレンは、控室からフィーズを見る。闇魔法には、相手の妨害などが含まれる。


「フィーズは、凄いじゃろ?妾ほどでは無いにしろ強いのじゃよ!」


 とクシフォンがドヤ顔で言ってくる。確かに自慢できるだけの技量があるよなとレンは思う。


「光魔法が使えないエリアスには厄介かもな」


 とレンは、のんびりと見てるのだった。





「さあ、どうする?エリアス・ミリー。私の方が有利に見えるがな」


「やってみないと分からないよ!ライトニング」


 再びエリアスが雷を纏ってフィーズに向かう。


「食らうが良い!」


 フィーズの声がした直後にエリアスに向かって黒い槍のようなものが10本程飛んでくる。


「数が多い!」


 雷を纏わせた剣で槍にぶつけようとしたが当たった感触が感じられず、槍がモヤとなって消える。


「ふっ、ハズレだな」


 とフィーズが言った時に、エリアスの肩に槍が刺さる。


「ぐっう……」


 エリアスがすぐさま後退する。目に見えていた槍は偽物のようで本物が当たるように隠していたようだ。見破れなかったことに相手の力量の高さを感じた。


『おっと、これはミーズ選手が有利になったようです。エリアス選手ピンチ!この場面をどう突破するのかぁ!』


「デバフってやつね……」


 エリアスは、若干身体の動きに不調を感じた。デバフという単語はレンが時々言っているものだ。


「ふふっ、便利だろう?これが闇魔法の力だ」


 フィーズからは、黒い巨大な手が生えてくる。



「これは抜いたらまずいかな……」


 黒い槍が刺さった部分を見つめながらエリアスがいう。出血が続くということは死ぬ確率、この試合で言えば負ける確率が上がるのだ。


 だが、槍から身体の動きを悪くする効果が出ているかもしれないので引き抜くことにした。




「さあ、行くぞ」


 巨大な黒い手がエリアスを捕らえようと迫ってくる。


「ライトニング!」


 迫る手を辛うじて避けるが、闇魔法の影響が抜けていないのか動きが悪い。


 少しバランスを崩した瞬間に、巨大な手で叩かれる。



「カハッ……」



 剣を地面に刺しながら立ち上がるが、あまり長くは動けないかもしれないと感じた。


「諦めるか?なら降参すると良い。私は、クシフォン様の前で敗北するわけにはいかないからな」


 巨大な手が握り拳を作って構えているのが見えた。トドメはいつでも刺せるということだ。



「これは、レンと戦うまで取って置きたかったけど仕方ない……」


 と言いながら前を向く。切り札を切ることにする。


「まだ諦めないか。ならば潰れろ!」


 フィーズの攻撃が炸裂する。


『これは、ミーズ選手の勝利か?エリアス選手はどうなったぁぁ!』


 多くの観客が周囲を見回していた。エリアスが舞台の外に現れるのを探すためだ。


「いない……?」


『エリアス選手が現れない……ということはやられていないのか?あれは!』


 周囲の視線は、フィーズの後ろに注がれていた。




「フェンリル……」


 赤い目、さらに伸びた白い髪……雰囲気が変わったエリアスが立っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る