第174話 大会初日終了と捜索開始

 母には、クシフォンが襲われたことについても説明した。


「今、戦っている子よね。魔王の娘か……確かに、人間の国で魔王の娘が死にでもしたら魔族が侵攻する口実に出来るかもしれないわね」


 とレミが呟く。魔王が優しくとも、他の者が何かやるかもしれない。


「やっぱりそうなるか」


 酷い自作自演が見えているものだと思う。人目の多い武道大会だからむしろ逆に手が出しにくくて安全なのか?とも思う。


「後で、魔族を捜索したいんだけど手伝ってくれるかしら?」


「ああ、そうだな。エリアス達にも声をかけて手伝うよ」


 と答える。


 そして2人で控室に戻る。




『決まったぁぁぁぁ!勝ったのはルシファン選手だぁ』


 と歓声が上がる。試合は、話をしている間に終わってしまったようだ。



『さあ、観客のみんなが良い盛り上がりを見せてくれてる所悪いが、今日の試合はここまでだ!明日は第5試合から始まるぞ』


 とアナウンスが流れると観客の残念そうな声が聞こえて来る。主に、アルファードの戦いが早く見たいなどの内容でそれだけ観客が楽しみにしているんだなと感じた。



 まだ出店などはやっているそうなので、ルティア達と合流したら見に行くのも面白そうだと思う。


「2人とも勝ったわね!おめでとう」


 とルティアが言う。


「2人の勝利は予想通りね。これからも頑張ってね!」


 とミラがガッツポーズしてくる。なぜか世界観が違うように感じてしまう。


 レンとエリアスは、2人にお礼を言い出店に寄って行こうと話をする。


「そういえば、後ろにいるのレンと戦った人よね?」


 とルティアが聞く。そういえば、魔法をかけているのでわからないのを忘れていた。


「良い髪色だね。私も染めようかな?」


 とミラが言っている。目の付け所が違うが彼女らしくてもう良いやと思う。


「久しぶりね、ルティアちゃんにミラちゃん。レンがお世話になってるわね」


 と言い2人はすぐに気づいた。


「この声は、お母さん!」


「レンのお母さん!」


 と驚いている。迷宮都市で会って以来なのでそこまで日にちは空いていない。


 ここでルティアは、レンの母のことをお母さんと呼んでいることに驚きを感じた。そこまで親しいのかと思わずにいられない。



「さあて、出店でも見て帰るか。食べたいものがあるなら奢るぞ?」


 お金には余裕があるためレンが言った瞬間に女性陣の目の色が変わる。なんだ?とレンが思うのをよそにすぐさま出店に目を向けていた。



 結果、そんなに使う?と言うくらいのお金が飛んでいった。お金はあるから大丈夫だが、彼女達の胃袋をなめていたのかもしれない。




 宿に戻ってからは、今後の試合について考えていた。本戦は、16人のトーナメントなのでレンが次に当たるのはクシフォンということになる。


「クシフォンの試合見逃したし、どんな戦いになるか……」


 Aランク冒険者にも勝ったと言うことは、相当な実力に違いないことが伺える。1回戦のお母さんとの試合も荒れたがさらに荒れるかもしれないなと思う。


 アルファードと当たるとしたら決勝ということになることもわかった。勝ち上がりたいと思う。



「レン、入るわよ」


 と言いながら、レミを先頭にエリアス達も部屋に入ってくる。


「お母さん、ノックしてよとは言わないんだね」


 とミラが言ってくる。


「またそれか。別にやましいことなんてないからな」


 と答える。


「ミラの負けよ、後でご飯奢りね」


 ルティアが言う。何やら賭けていたようだ。


「ちくしょう、3人とも言わないに賭けたから大穴狙ったのに……」


 4人で賭けをしていたようだ。本当に仲がいい。


「まあ、ミラならそうなるよな……」


 正直、ミラの賭けなんかの運はとてつもなく低い。ありえない確率でも負けを発揮するレベルだ。


「次よ、次は勝つ!」


 次もダメそうだとしか思えないレンだった。




 レンの所に集まったのは、スティグマを探すための話をするためであった。



「探す場所に見当はついてる?」


「それが全くだ」


 エリアスの疑問にレンが答える。まだ何も考えてなかった。


「私もさっぱりね!」


「私は王都は今回が初めてだからわからないな」


 ルティアとミラも検討がつかないようだ。もう適当に探していくしかないかと思われた時にレミが口を開く。


「前にあった、王都襲撃の際の始まりの場所……もしかするとそこに」


「地下か!確かにそこなら潜伏してもおかしくはないか……」


 スティグマがキメラを作っていた場所、地下。広大な場所を再び潜伏場所にしているというのは考えられるものだ。


「地下かぁ……」


 エリアス的には地下がそこまで好きではないため表情が良くない。




 スティグマは待ってくれないため、すぐに捜索を開始することにした。


 ちなみに、ルティアとミラはそれぞれ修行があり各々の師匠に連れて行かれたため捜索には不参加となった。


「助っ人を呼んだよ」


 とレンがエリアスとレミに言う。さすがに3人だと大変かなと思い手助けを頼んだ。


「待たせたわね!」


 と言いやってきたのはフェレンスギルド長、フィレンであった。


「おお!強力な助っ人だ」


 とエリアスが嬉しそうに言う。


 レンの能力などについても把握しており、力量も頼りになる存在なのでフィレンに頼んだのだ。ハルカを呼んでも良かったが、レンやレミに勝負を仕掛けそうな気がした……



「スティグマとここまで縁があるなんて。凄いわね、レン」


「俺も好きで戦ってるわけじゃないですからね?」


 なぜかいく先々でスティグマと会うのだ。正直懲り懲りである。


「早速地下に行きましょう」


 とレミが言い。4人は歩き始めるのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る