第166話 買い物と英雄との出会い

 レンとエリアスは、買い物をとても楽しんだ。あまりに仲の良い雰囲気で買い物をしているもので、多くの人が夫婦だと感じるほどだった。


「可愛い嫁さんだね。大切にするんだよ」


 と店の人にレンが言われた時は、エリアスはとても恥ずかしくだけど嬉しくなる。


「嫁ってわけじゃないんですけどね……照れるな……」


 とレンは呟く。




 ふとエリアスの方を見てみるとエリアスは、とある店に目を向けていた。


「エリアス?」


「あ、ごめん!ボーッとしてた。他の店を見に行こう」


 と言い何事も無かったかのようにエリアスが歩き出した。


 エリアスが見ていた店を見てレンは、後で1人で戻ってこようと思いながらエリアスを追いかけるのだった。






 夕方になり、レンとエリアス達はルティアやミラ、フィレン達と合流して王都の入り口近くに集まる。


「もうそろそろのはずよ」


 遠くの方を見ながらフィレンが言う。


「来ましたね」


 とハルカが言った時、正面の方向に馬車が見えた。


 全員の前で馬車が止まると、中からは2人の人物が出てくる。


「わざわざ迎えに来てくれてありがとよ!久しぶりだな」


 緑色のツンツンした髪の、チャラそうな男が出てくる。この人が王国最強の人ということだ。


「久しぶりだね。元気そうでなりよりだよ、フィレン、ハルカ」


 続いて、優しそうな表情の30代くらいだろうかと思われる女性が出てくる。


「聖女様!」


 とルティアが喜びの声を上げたため彼女が聖女であるということがわかった。


「あら、ルティアちゃん!久しぶりだね」


 と近所のおばさんの様にルティアに声をかけている。



「ほー、君がレン・オリガミかぁ。活躍は聞いてるぜ?なかなか強いらしいな。俺は、アルファード・シルフォンだ」


 レンの前には、緑髪の男が来ており興味深そうにレンを見ている。


 なかなか距離が近いな……と思わずにいられない近さだ。


「初めまして……レン・オリガミです」


 と言っていると聖女様が割り込んでくる。


「あんたなんかの怖い顔を見せてたら怖がるだろう!ほら、どいたどいた。私は、ネーヴァン・スルード。聖女だよ」


 と安心感のある笑顔で言ってくる。


「よろしくお願いします!」


 なんだか、近所のおばさんを思い出すなと思いつつ挨拶をする。



「おばさんとでも思ったかい?」


 ネーヴァンの言葉にレンは、身体が凍るのを感じた。地雷だったようだ。


「いえ……決して……」


 カタカタとレンは震えながら答える。


「そうかい!なら良いんだよ」


 と言ってフィレン達の方に行く。



「おっかねーだろ?あのババア。気を付けろよ」


 とアルファードがレンに耳打ちしてくる。


「あはは……」


 とレンは苦笑いするのだった。




 このままみんなで食事をすることになったが、レンとアルファードそっちのけで女性陣は、楽しそうにしていた。


 男は、レンとアルファードしかいないため、2人は話しているうちにすぐに打ち解けることができた。


「ほぉ〜、黒龍との戦いは大変だったな。俺もガキの頃は、黒龍と戦って死にかけたぜ」


 レンがフェレンスで黒龍と戦った話をすると、懐かしそうに言っている。


 アルファードは、かなり昔から魔物と戦っているようで興味深い話が多い。なんでも現在の年齢は25歳で、10歳くらいからは普通に戦っていたらしい。


「10歳から……」


 そんな時から戦うというのはなかなか想像がつかない。


「まあな。戦う理由があったんだ」


 彼の言葉にはどこか深みを感じた。





 食事会もお開きになり、宿に戻ることになった。


「武道大会を楽しみにしてるぞ、レン。お前とはぜひとも戦ってみたい」


 と帰り際にアルファードが声をかける。


「はい、全力で立ち向かいますよ!」


 とレンが答える。易々と勝てる相手ではない。全力で挑まなければ勝負にすらならないと思った。



 熱い戦いが見られそうだね。と女性陣はそれを眺めつつ思うのだった。



「無事に弟子にしてもらえたわ」


 とルティアが帰りながら嬉しそうにしていた。聖女であるネーヴァンに教えてもらえるようだ。


「私も明日から修行なんだよね〜」


 ルティアとミラは、それぞれ武道大会で王都にいる間に教えてもらうつもりだ。どれだけ成長するか楽しみになる。


「私達は、武道大会頑張ろう!」


 とエリアスが言ってくる。レンとエリアスは、出場するのだ。


「そうだな。アルファードさんと戦えるかもしれないから楽しみだ」


「もし、私がレンと当たっても全力でぶつかるからね!」


 とエリアスが言う。強敵だなとレンは思う。


「当たったら、初めてお互いに全力で戦うことになるかもな!」


 とレンは楽しみだと言うように笑うのだった。

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