第163話 寝たふりとまたもや賢者
「逃げ切ったか?なんかやばそうな気配がしたし関わりたくない」
賢者を名乗る少女カラミィ・テーリスから逃げたレンは宿の近くまでやってきていた。
周囲を見渡す感じ、先程の少女はいないようだ。
自分の部屋に戻ってベッドに倒れ込む。ハルカとの戦闘はかなり疲れたものだった。
「ハルカさんも使えたんだな……ステータス外スキル」
『そうですね。純粋に攻撃力がとてつもないことになっていました』
あれは一撃でももらえば大怪我間違いなしだ。
「自分だけが使えるスキルだと思ったけど、案外そうでもないみたいだな」
自分に出来るということは他の誰かに出来てもおかしくないということだろう。今後は、ステータス外スキルのことも視野に入れて戦う必要がありそうだ。
『切り札をまだ晒さなかったのは良かったかもしれませんね』
とナビゲーターさんが言う。
「そうだな。まだ誰にも見せてないし」
とレンは答える。
いずれは使うことになるだろうが、出来るだけ取っておきたい。
ここで、トントンと扉を叩く音が鳴った。
「レン、部屋にいる?」
とエリアスの声が聞こえてきたが、疲れて眠かったので返事をせず目を閉じていたら扉が開く音が聞こえた。
(カギかけてなかったか……我ながらなかなか無用心だな)
と思う。
「あれ、レン寝てるのかな……」
とエリアスが接近する感覚が感じられる。
「あれ?この匂い……クンクン」
レンは自分が匂いを嗅がれているのを感じた。若干ドキドキしつつ寝たフリをする。
「それにしても、ちょっとだけなら……いやいや……うーん」
エリアスが悩んでいるような声が聞こえてくる。一体何をされるんだろうか……と気になってしまう。
あまりにも気になってしまったので気持ちを引き締めて目を開けてみる。
「あ!」
目を開けるとレンの上には四つん這いのエリアスがこちらを見下ろしているのが映った。
「え!」
レンが見ていることに気づいたエリアスは、驚いて顔を真っ赤にしてしまう。焦ったように尻尾がヘリコプターの様にビュンビュン動いている。
「えっとぉ……どうしたんだ?エリアス」
レンは恐る恐る聞いてみる。
「あわわわわ……ごめんなさぁぁぁい!」
慌ててエリアスが逃げようとしたが、シーツに足を滑らせて寝ているレンに向かって倒れてしまう。
「おふっ……」
とレンが声を上げる
「あわわわわわわわわ」
エリアスが更に顔を真っ赤にしながらパニックに陥る。慌てているエリアスを見ていると、レンは逆に冷静になっていた。
茹でたタコみたいだなとレンは思うが次の瞬間、レンも焦ることになる。
「レン!エリアス来てない?」
バンッと扉を開けてルティアとミラが部屋にやって来る。王妃様はノックを知らないようだ。
そして、ルティアとミラはレンとエリアスの姿を見つけてしまう。
「私達はお邪魔みたいだわ!」
「失礼しましたー!」
ルティアとミラが大慌てで部屋から全力で走っていった。
「ちょっと待て!誤解だぁぁぁ!」
とレンが叫ぶが2人には聞こえなかったようだ。なんてタイミングの悪さだ!とレンは思うのだった。
その後時間はかかったが無事にルティアとミラの誤解を解くことが出来た。
なんでもレンがぐったりしていたため不安に思って顔を覗こうとしていたそうだ。
2人は、レンとエリアスのためにお祝いの花を買いにまで行っていたとのことでかなり焦った。
食堂で、レンの隣では未だにエリアスは、プシューッと湯気を出しながらブツブツと呟いている。
「全く、鍵くらい閉めなさいよ!」
とルティアに言われた。
「王女様は、ノックくらい覚えなさいよ!」
とルティアの真似をして言い返してみるとプリプリとルティアが怒っていた。
「我が人生で1番焦ったかもしれない」
とミラは、言っているがもっと焦る場面あっただろうとレンは思うのだった。しかも変わった言い方をする。
時間も時間なので夕食を食べようと言うことになり、宿のご飯を食べる。
「そういえば、部屋に行った時レンから汗の匂いがしたんだけどもしかして誰かと戦った?」
とエリアスが聞いてくる。
「え?よくわかるなぁ。ハルカさんと戦う羽目になってな……大変だったよ」
と答えると周りはお気の毒にという表情をする。それにしてもエリアスの嗅覚は凄いものだ。
「鼻はかなり自信があるよ!」
とエリアスがドヤ顔をする。エリアスだからかとても可愛く感じる。
魔族のこともあったが、別に話さなくても問題ないかなと放置することにした。
みんなでワイワイと普通に食事を楽しんだ。
レンはあることを思い出す。
「そういえば、宿に帰る途中に賢者を名乗る女の子に会ったんだよな。突然弟子にするとかなんとか」
と話す。
「え!それ本人?私も会いたいんだけど」
とミラが言う。ミラとしては賢者見習いの称号もあるため是非とも会いたいだろう。
「なんかめんどい流れになりそうで、逃げたからな〜」
と途中まで追いかけられたのを思い出す。
「その子が賢者かはともかく、本物なら今レンの後ろにいるわよ」
とルティアが言う。
「え!」
レンが驚き振り返ると後ろには、レンが一度会ったカラミィ・テーリスが立っていた。
そして、
「やっと見つけたぞ。君の名前はレンと言うのか。早速だが、私の弟子にならないかな?」
と言ってくるのだった。
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