第136話 ドライアドとボス戦
51階層で発見したボス部屋の扉を押し開け、レン達は中に入っていく。
ボス部屋の中も多くの花が咲き誇っており、甘い香りがしていた。
「ようこそ、51階層のボス部屋に。私が、この階層の最後の魔物です」
しっかりとした言葉遣いで声を発したのは花畑に座る、植物と同化したような美しい女性だった。
「ドライアドなのか?」
とレンは呟く。アニメなんかでも見たことがある魔物の一種だ。ここで自我のある魔物が相手というのもレベルが上がったように感じる。
「ええ、私はドライアドです。みなさんの相手をします。どう戦うか話し合ってから挑んでも構いませんよ」
作戦会議の時間をくれるらしい。なかなか優しいものだなとレンは思いながら後ろにいる仲間の方を振り返るとレンの左右を魔法が通過してドライアドに向かっていく。
「ライトニング!」
「ファイヤボール!」
「ファイヤウォール!」
ドォォォォォン!
と爆発音を立てて、ドライアドがいた場所が吹き飛ぶ。
「えーーー!ちょっ、タイムタイム!作戦会議する流れじゃないのか?みんな一斉に魔法放ってたけど」
とレンは3人の行動に驚く。
「明らかに隙を狙ってるような顔をしてたわよ、あの女!」
とルティアが言う。
「作戦会議させて油断させる作戦だったんだよ、きっと」
とミラが続く。
「そうだね。ドライアドは、人を特に男を騙すことが多いんだよ?」
エリアスの説明で、この世界のドライアドはそんな性格なのか!と驚く。
「あれは騙そうとしてたのか……」
「鈍感レン!そんなんじゃエリアスに嫌われるわよ」
とルティアが言ってくる。何か心に刺さるものがあった。
「あ、私はレンのこと嫌いになんてならないから」
「はいはい、そういうのは良いですからぁぁぁぁ」
エリアスが言うのをミラが妨害する。
「ちくしょう、やってくれましたね。雌ガキども!せっかく極上の男が食えると思ったのに……」
身体をあちこち吹き飛ばされながらも魔物は死んでいなかった。
「あらあら、早速本性を現したわね。あなたが良からぬことを考えてるのはお見通しなのよ!」
人差し指をビシッと突きつけルティアが言う。
「ええ、何かよく分からないけど魔法を撃った方が良い気がしたら大当たりね」
とミラがルティアと同じポーズをしながら続く。彼女は、特に根拠もなく魔法を撃ったらしい……そのことに関してレンは、え……と思ってしまうが気にしたらいけないのだろう。
「まさか、こんなポンコツな奴らに見破られるなんて……全員八つ裂きにしてやる!」
とドライアドが怒りながら地面に入っていく。
「「誰がポンコツよ!」」
とルティアとミラの声が揃う。やっぱり面白いなこの2人と、レンはこんな状況ではあるが思わずにはいられない。
「これは、部屋の植物が全て動いてる……」
エリアスの呟きに全員が周囲を見渡す。あちこちから植物がこちらに狙いを定めているのは明らかだった。
『さあ、死んでしまいなさい。美味しく食べてあげるから』
木のツルがレン達に狙いを定めて飛んでくる。避けなければ串刺しになるだろう。
だがそのツルがレン達に届くことはなかった。
『これは!凍ってる……動かないじゃない!』
「みんな、今だ!前進するぞ。ナビゲーターさん、どこを狙えば良い?」
氷魔法を発動させたレンが、ツルの動きを止めて声を上げる。
『予測すると、1番奥の大樹ではないかと思います』
とナビゲーターさんの返事が返ってくる。確かに奥に大きな木があり、怪しく感じる。
「全員、1番奥の木に向かってくれ!そこを叩けば倒せるかもしれない」
さらに向かってくるツルを切り伏せながらレンが言う。
『くっ、させない!』
大量の種が、4人に向かって放たれる。まるで弾丸のように感じる。慌て出したためやはり、ナビゲーターさんの予想は当たりだろう。
「ここは、良い所を見せれる場面ね!いっけぇ、アクアウォール!」
ミラが水の壁を作り出して、射出された種を絡めとっていく。
「ナイスよミラ!」
そのまま、木に向かって走り出す。
『ムウウウ……どうにか食い止めなさい。人形達!』
人型の植物が大量に向かってくる。
「ヒェッ、怖!」
その姿を見てミラが悲鳴を上げる。確かに、元の世界とかでこんなのが走ってきたら恐怖でしかないなとは思う。
「なら、今度は私がいくわ!ファイヤジャイアント!」
ルティアが炎の巨人を生み出す。
大勢の植物人形をルティアの巨人が迎え撃つ。炎が圧倒的に有利であるためルティアの巨人が押している。
「良いぞ、ルティア!そのままやってくれ」
「ええ、任せなさい!……まぁ、私自身を狙ってくるわよね」
炎の巨人を避けてルティアに向かってくる、草人形が何体かいた。
『これで1人終わりねェェェェ!』
すでに最初の上品な様子はなく、狂ってきているような様子だ。
草人形達がルティアを捕らえて締めつける。ドライアドは、まず1人倒したと確信した。
『1人目の命いただきまぁぁす!』
「うわァァァァァァ!ルティアが死んだぁぁぁ」
ミラは、ルティアが死んだと思い絶叫を上げる。
だが、次の瞬間に締め付けられたルティアは、水となって弾け飛んだ。
「アクアドール、自分で言うのもなんだけど、これ結構便利よね」
ミラの近くに無傷のルティアが立っている。
『なんだとォォォォ!』
「なにそれ!」
ドライアドとミラが同じリアクションをする。ミラは、ルティアのオトリ技を見たことがなかったのだ。
「焼き払いなさい、ファイヤジャイアント!」
ルティアの号令に合わせて巨人が草人形達を燃やし尽くす。
「さて、木を伐採しようか」
「ええ、これ以上抵抗されても面倒だからね」
レンとエリアスが剣を抜く。
『殺してやる!死ね!しね!シネェェェェェェェェ!」
持てるだけの大量の植物を操り、レン達に向かって最後の抵抗を行う。
「これは、ルティア達には荷が重いな。エリアス、短期決戦で決めるぞ!錬金」
「うん!すぐに決めるよ」
「「頑張って〜!」」
レンが錬金魔法で作り出した壁に隠れながら、ルティアとミラが応援する。
「身体強化」
「ライトニング」
2人は、スキルを発動させてルティア達の前から、消える……否、とてつもないスピードで移動する。
直後、レンとエリアスがルティア達の前に現れ剣を鞘に入れていた。
『そん……なぁ…』
「なっ!」
ミラが驚きの声を発する正面で大樹やドライアドが操っていたあらゆるものが粉々になりながら落ちていくのが見えるのだった。
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