第87話 不思議と楽しみ
「おお!広いな」
迷宮に踏み込んだレンの第一声は、驚きだった。
目の前には草原が広がっていて、迷宮の中だというのにそこは外にいるかのようだった。
「これは、すごいわね。楽しみだわ!」
ルティアが呟く。ピクニックにでもきてるかのようだ。
「うん、空気も美味しいし。さすが三大迷宮だね」
エリアスも気分が良さそうだ。これまで彼女は大変だったから少しでも良いことがあってくれると嬉しいとレンは思った。
「まさか、空まであって太陽も出てるなんて……」
迷宮といえば、洞窟的なイメージがあったがこの迷宮には当てはまらないようだ。正直どんな仕組みになっているか気になる。
『迷宮は、神が作ったとも言われています。特に世界三大迷宮のレベルともなると、常識が通じないことも起こるので注意してください、マスター』
とナビゲーターさんが説明してくれる。
「なるほど、わかったよ。そういえば、前に三大迷宮のことナビゲーターさんが話してくれたね。こんなに早く来れるとは思わなかったよ」
と過去の彼女との会話を思い出す。
『そうですね。私もこんなに早く行くとは思いませんでした』
と返ってくる。
「マップは、使えるかな……」
レンは、多分使えないと思うがものは試しとスキルを発動する。
出てきたのは、入り口から現在地までの物だけだった。
レンは、それをエリアスとルティアにも見えるように出す。
「楽はさせてくれないよね!のんびりと行こう」
とエリアスが言う。
「マッピングすれば全て出るのかしら?地図を書く必要がないから楽ね」
とルティアはレンのスキルに関心を示している。
一応ギルドでもらった情報なんかもあるのだが、レンはそれを使わずに行こうと考えている。なんたって冒険なんだから楽しみたいし、自分の力をつけたいと思ったからだ。ギルドで買ったものは緊急時用だ。
1階層では冒険者はほとんどいないようで、やはり1階層にはそこまで価値はないのかなと思った。
『そうですね。1階層となると難易度的に子供でも生きて通り抜けることが出来るレベルです。場所は綺麗ですが、冒険者にとっては用がない場所です』
とナビゲーターさんが説明してくれる。
「綺麗な景色を楽しめないのは惜しいけど、先に進もう!」
と良い探索を始める。
魔物なども、いてもスライムなどの弱いものばかりで苦戦することなく進むことが出来た。
「あ、薬草があったわよ!これじゃないかしら?」
ギルドでついでに受けてきた依頼の薬草を発見したルティアが声をあげる。
「鑑定、うん!これで合ってる」
「よく見つけたねルティア!」
とレンとエリアスが褒める。
「私にかかればこんなもんよ!」
ドヤ顔だ……とレンは思いながらも気にしないことにする。
ここまで平和だと気が抜けてしまいそうになる。
そのままあっさりと2階層に向かう階段を発見した。
「この階段を登れば上に行くわけか。しかし、階段の先が見えないな……」
レン達の目には、階段が無限に続いているように見えている。
「考えても仕方ないわ先に行くわよー!」
と言いルティアが走り出す。
「急がなくても良いでしょ?」
とエリアスがルティアを追いかけていくのに続きレンも登っていく。
「「「えっ!」」」
3人は揃って驚いた。気がつくと3人は、すでに2階層に立っていたからだ。
「やっぱり、迷宮ってわからないことだらけだな!」
どういう仕組みなのかわからないが、レンは楽しいと感じていた。
後ろの方には、階段があり下に続いている。降ることで1階層に降りることが出来るのだろう。
「さて、転移結晶に触れておこうか!」
とエリアスが言ったので前の方を見ると、宙に綺麗な人の頭くらいのサイズの石が浮いていた。
「よし、転移結晶に登録もしたし先に進むぞ」
と言い、レン達は奥に向かうのだった。
「良し、5階層まで着いたな。一旦ここまでにしておくか?」
とレンは声をかける。あの後もあっさりと迷宮を進むことが出来ていた。
「そうだね、慌てて登ることもないし。ここまでで良いかも」
「私はもっと登っても良いんだけど、レンとエリアスがそう言うなら」
とルティアは少し残念そうにしている。
こうして、迷宮を5階層まで登ったレン達は転移結晶で地上に帰るのだった。
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