第4章迷宮都市イージス編

第84話 迷宮都市と捜索

「見えてきたか……あれが迷宮都市」


 馬車に乗りながらレンは呟く。


 巨大な塔を囲むように街が広がっているのが見える。


「あの大きい塔が世界三大迷宮の1つ、イージスだよ」


 エリアスが迷宮の説明をしてくれる。


「イージスって、なかなか強そうな名前だな……」


 元の世界ではイージスって名前はゲームなどで見ることが多かった。迷宮の最終ボスなんかはとても強そうに感じる。もしかして自分のいた世界と関係があるのか?とも考えられるが。


「どんな場所かとても楽しみね」


 とルティアもワクワクしているようだ。






 王都のギルドでのランクアップ試験が終わりレン達は武道大会が始まるまでの間、迷宮都市で修行でもしようと考えたのだった。


 国王様も普通にルティアの同行を認めてくれたのは驚いた。ルティアが何かしたのではないかと疑いたくなったが……


 王都のギルド長やハルカ、お世話になった人に挨拶を済ませて王都を出てきたのだった。


「レン殿、迷宮都市でさらに強くなられたらまた戦いましょう。楽しみにしていますね」


 とハルカは笑っていた。レンはその笑顔を見て怖いなと思ったのは秘密だ。



『マスター、あなたの力を使いこなせるように頑張りましょう』


 とナビゲーターさんが声をかけてくれる。


 王都で自分自身が暴走したことは、ナビゲーターさんに完全に教えてもらった。デリートを含めあの力を使いこなすことが出来なければエリアスやルティアを守ることも出来ない。


「使いこなせるようにならないとな……」


 レンは2人に聞こえないように呟く。



 都市の入り口で手続きを行う。ギルドカードを提示するだけの簡単なものだった。


「ようこそ!迷宮都市イージスへ」


 レン達は、迷宮都市に足を踏み入れた。



「さーて、迷宮都市に着いたし最初は泊まる場所の確保をしないとだな……」


「そうだね。どこかいい場所はあるかな〜」


「ご飯が美味しい所よ」


 エリアスの反応は普通だが、ルティアは食べることしか考えてないような気がする。


「まぁご飯は大事だよな……」


「そうだね……」


 レンとエリアスは苦笑いを浮かべてルティアに反応するのだった。






 場所は地球、高校3年生の高宮美羅たかみやみらは学校の帰り道にある場所に向かっていた。普段なら気にする汗で眼鏡がずれることも気にせず歩く。


 受験生である彼女はいつもなら真っ直ぐに家に帰るはずだが、この日は違った。朝、クラスの担任が驚くべきことを言ったのが原因だった。


「みんなは、折神がどこにいるか心当たりはないか?彼が昨日から行方不明になっているんだ。どんなことでも良いから教えてくれ」


 クラスメイトである折神蓮、彼が行方不明になったということだ。



 美羅は特別、蓮と仲が良かったと言うわけではないが本を借りたり、アニメの話を少ししたこともあったので気になったのだ。



 折神と書かれた表札を見つけた。


「ここね」


 と言いながらインターホンを押す。


「はい」


 と声が帰ってきて扉が開く。


 とても優しそうな女性が出てきた。


「あの……どちら様ですか?高校の制服ってことは蓮の?」


「あ!始めまして、蓮くんのクラスメイトで高宮美羅と言います。蓮くんのことで話を聞きたくて……」


 と言う。


「そうだったのね。それなら上がってちょうだい。お茶を入れるわ」


 と言いながら蓮の母は美羅を家に入れるのだった。




「蓮くんは、昨日いなくなったんですよね……彼に何があったんでしょうか?」


「私にもわからないの……でも私は昨日、家にずっといたから蓮が外に出ようとしたら絶対にわかるのよ」


「神隠しみたいですね……すみません。お母さんは今辛いでしょうに」


 非現実的なことを言ったことを申し訳なく感じたため謝罪した。


「いいえ、気にしないで美羅ちゃん。私もなんでかわからないけど蓮は、きっと大丈夫な気がするのよ。だから蓮が返ってくる場所をしっかり用意しておかないとね。二度と悲しませたくないの」


 美羅は両親を失っていることだろうなと感じた。そしてこの人は本当の親以上に親のようだとも思った。


「私、蓮くんを探します。絶対に連れ戻します!」


 と宣言する。


「ふふっ……ありがとう美羅ちゃん、もし蓮を見つけたら伝えてくれないかしら?いつでも戻っておいで、どんなに時間が経ってもお母さんは待ってるからって」


「はい、わかりました」



 お茶を飲んでいると、蓮の母が蓮の部屋を見ないかと提案する。何かヒントになるものがあるかもしれないとのことだ。


「見終わったら声をかけてちょうだい」


 美羅は1人、蓮の部屋に足を踏み入れた。机の上には勉強道具が並べられており勉強していた様子が伺える。


 本棚にはラノベが多く置かれており、借りたことがあるものもあった。


「スマホまで置いていくなんて本当になにがあったのかしら」


 推理するかのように美羅は悩む。


「もしかしたら、スマホになにか情報が入ってないかしら……さすがにロックされてるよね」



 蓮の家からの帰り道、蓮の母に頼んで借りた蓮のスマホを眺める。


「パスワードは4桁、誕生日とかが定番だけど折神君のお母さんも開けれなかったみたいだし……」


 適当な数字とかだと厳しいと思ったがここでふと思いつくことがあった。


「もしかして折神くんの一番好きなアニメキャラの誕生日とか……」


 と考えながら押してみる。


 結果として蓮のスマホのロックは解除された。


「あらら本当にアニメキャラの誕生日だった。なんか気まずいな。最後に使ったアプリは……ん?」


 美羅は最後に蓮が使ったアプリを見て興味を惹かれるのだった。

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