第72話 白昼堂々と戦いの始まり

「ワイバーンまで出てきましたか……討伐感謝しますレン君、君に頼んで良かった」


 ティーラーは苦い表情をしてお礼を言う。


「冒険者を無視して真っ直ぐに王都に向かったので討伐しました」


 レンは、起きたことを説明する。



「やはりスティグマが関わっているのでしょうか……それにしては手緩いですね」


 ハルカからしたらスティグマらしくないと思っているようだ。


「自分が調べた所によるとフェレンスの時のように操られていないことはわかりました」


 ナビゲーターさんが言ったことに間違いはない。




「地下の方に進展はありましたか?」


 レンは何か見つかっているかもしれないと思い、質問してみる。


「地下の方では、人がいたであろう痕跡が見つかりましたが、スティグマを見つけることはできていません。私達が見ていない、スティグマしか知らない道がある可能性もありますね」


 まだスティグマが潜んでいる確率は大きいと考えられるようだ。





 話し合っていても何も進まないため、ギルドを出ることにした。


 エリアスとルティアには、討伐した魔物の買取をお願いしている。



「ワイバーンの金額凄かったよ〜」


「ワイバーン高値で売れたわ。かなりサイズも大きかったし、長く生きてるわね」


 と言いながら2人が戻ってくる。



「受付嬢が驚いてた」


 とエリアスが教えてくれる。ワイバーンは珍しいほうではある。しかも今回のはかなり大きかったし、フェレンスで出たのとは比べものにならない。



 ギルドから出て、街中を目的などなく散策する。


「地下にいるスティグマを見つけ出す方法とかないかな……」


 どうしたものかとレンは呟く。便利なスキルとかないかなと考えるも自分の知識では思いつかない。


「広すぎてお手上げよ……」


 ルティアはすでに諦めている。


「地下は、臭いも酷いし私は役に立たないよ」


 エリアスは、もう地下には行きたくないようだ。確かに自分でもきつかった。


「冒険者も多く入ってるし、見つかるのも時間の問題かもしれないな」


 結局は、数ということになりそうだとレンは思った。




 目的の場所も考えず話をしていたら、いつのまにか門の所まで来ていた。


「おお、レン君じゃないか。さっきは本当に助かったよ」


 声をかけてきたのは、兵士のノックスだった。


「ノックスさん、気にしないでください。冒険者として当然ですよ」


「そう言ってくれるとありがたいな」


 と話していたところ他の兵士が慌てて声を発する。


「ノックスさん!大変です。魔物の数が急に増えました」


「なに?そんなに多いのか!」





 門の上の方に上がると確かにさっきより魔物が増えてこちらに向かって来ているようだった。


「まさかモンスターパレードなのか?」


 とノックスが慌てている。


「いえ、俺はモンスターパレードの経験がありますがこれはモンスターパレードには届かない」


 だがレンは、違うとノックスに説明する。


「しかしこの数は厄介じゃないか?冒険者の多くは地下に行っていると聞くし……」


 スティグマの調査で魔物に対応する数が減っているという現状になっている。


「何人かの冒険者が見えるから、威力の強い魔法を使うわけにはいかないか……」


 魔力を込めた矢で殲滅しようと考えたが冒険者に被害が及ぶため却下する。


「普通に射抜くか……」


 レンは、弓を取り出し魔力はあまり込めずに作る。そして千里眼を発動し、魔物を射抜く。


「私も練習しよう…」


 エリアスは弓矢の練習込みで魔物を狙っていく。距離が遠いためレンのように、ほぼ全て当てることはできないが当たっている方だとは思う。


「2人とも器用ね。私は、魔法を使うわ!ファイヤドール」


 ルティアは、火の人形を作り魔物に突撃させていた。ルティアの魔法もかなり魔物に効いている。



 そしてすぐに魔物を倒し切ることが出来た。


「これだけ減らせば良いだろう……」


 門の外には冒険者も何人かはいるため、倒し過ぎてもいけないと思った。横取りとか言われて揉めるのは面倒だ。


 兵士たちはレン達の活躍に目を丸くしていた。


「助かったよレン君。また助けられたな……」


「いえいえ、さすがに王都も危なくなるかもしれないですし」


 気にしないでくれとレンは伝える。





 ノックスと別れ、門から降りて再び街中を歩き始める。


 ふとレン達に向かって男が歩いて来ているのがうっすらと見えた。普通なら特に気にすることはない……だが、

 その時レンは、正面から来る男に違和感を抱いた。気配が無いような変な感覚だ。いるようないないような……


「まさか……お前は」


 レンの言葉と同時に男はナイフを取り出す。


 レンの両側でエリアスとルティアが驚くがレンはすぐに対応した。


 すぐさま剣を抜きナイフを弾く。


「お前か!シャン」


「やっぱりお前レベルには見えてるのか〜?」


 何かのスキルでレンを殺そうとしたようだ。ここまで堂々と襲ってくるとは考えなかったが、場所は確実にレンに有利なためここで捕らえたいと思った。


「スティグマ……ここは危険だ!逃げろ!」


 レンは通行人に向かって叫ぶ。


「嘘だろ……」


「武器持ってるぞ、逃げろ」


 通行人はすぐに散っていった。みな恐怖に駆られているようにも見えたが……


 エリアスとルティアも武器を構える。


「おいおい、おっかないな。おしゃべりでもしようぜ」


「お前を捕まえてからおしゃべりするよ」


 レンは、間合いを詰めるために少しずつ前に出る。


「どうしてこんなに堂々と出てきたと思う?王都でやることが終わったからだよ。さーてと、たっぷり混乱してくれよ〜」



 シャンとレンが遭遇したのと同時刻、王都の地下につながるいくつかの場所から、魔物が出現した。


 王国の歴史に残るであろう混乱が始まったのである。

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