第63話 潜伏場所とルティアの選択

「ルティアも来たことだし、俺が街に出ていて起きたことについて話をしたいと思う」


 エリアスがルティアを呼んできてすぐにレンは話を始めた。


「さっきエリアスは、俺から血の匂いがすると言ったが、それはスティグマと戦闘になってお互いに怪我をしたからだ」


「レンの方に来たのね!最初に敵を気絶させた時みたいにやって捕まえられなかったの?」


 ルティアは、レンの実力を知っていたため怪我をしたことを疑問に思った。


「それがな、最初に捕まえたスティグマの様に上手く行かなかったんだ。相手の実力は俺と同じかそれ以上って考えた方が良いかもしれない……」


「レンよりも強い……それは大変だね」


「ああ、ハルカさんが乱入して来たから敵は逃げたけどな」


「それなら大丈夫じゃない!きっと勝てるわよ!」


 ルティアは明るく言う。緊張感が抜けていくようだ。彼女の言葉を聞くと何となく大丈夫と感じるのだ。



「敵はスティグマ暗殺部隊筆頭シャンって名乗ってたんだ」


「暗殺部隊!また厄介なのに目をつけられたわね」


 意外にもルティアは知っているようだ。


「ルティアは知っているのか?暗殺部隊について」


「ええ!だいぶ前だけど帝国の貴族が暗殺された事件があったのよ。その時は、多くの王族、貴族が恐怖したものよ」


 規模こそ小さいもののかなり物騒なことがあったんだな……


「暗殺部隊は注意が必要だな……寝る時は気をつけないと」


「ここみたいな良い宿は、魔法道具で人が侵入したらわかるようになってるから大丈夫よ!」


 とルティアは安心だと言う。


 最悪スキルがあるから大丈夫だろうとレンは思うのだった。



 レンが街に出て起こったことについて全て説明したため今日はここで解散となった。


 1人で敵を誘き出そうとしたことに関してはエリアスからお小言を言われてしまった。心配をかけてしまって申し訳ない。


 その後はレンも疲れたため、エリアス達が部屋に戻った後すぐに眠るのだった。





「暗殺部隊筆頭のシャンか……かなり苦戦したみたいだね?レン。でも大丈夫。レンには、僕がついてるし、それにエリアスもルティアもいる。次は必ず勝てるよ。君が自分を見失うことさえ無ければね」


 夢の中で白い髪の少年が声をかけてくるのだった。




「うーん?何の夢を見てたんだか忘れたな……」


 何かしらの夢を見てた気がするが記憶に残っていない。モヤモヤするやつだ。


 頑張って思い出せるものじゃないなと諦める。



 3人で食堂で朝食をとっているとハルカさんがやって来た。


「おはようございます……昨日の事で話を聞かせてもらいに来ました。食事の後でも良いのですが……時間は大丈夫ですか?」


 挨拶からハルカさんの元気がないのが感じられる。


「おはようございます。もしかしてあの後も調査をされていたんですか?」


「ええ……徹夜で王都を走り回っていました」


 顔をよく見るとクマが出来ている。


「何か発見はありましたか?」


「いいえ、昨日の私達の行動で敵が警戒を強めたのかもしれません……」


 暗殺を仕事としている者は、そう簡単には見つけられないか……とレンは思うのだった。



「この広い王都を回って少しずつだけど敵がいる場所は絞れてはいます。地上にはいないとなるとどこかわかりますね?」


 ハルカさんは、どこに敵がいるかわかるだろう?と俺に視線を向けてきた。


「地下ですか?そんなベタな場所に……」


 今まで地下という存在があること自体考えてなかったため、思いつかなかったが1番潜むには適しているだろう。



「その通り、潜んでいる場所と言ったらもう地下くらいしかないはずです。なので私とともに地下での調査に協力してもらいたいのですが……」


「ええ!協力させてください。でも地下に行く前にやっておくこともあるので時間をもらえますか?」


 昨日の戦いを反省して、対策を考えなければならない。


「では調査は夕方からにしましょう。私は、休憩しておきます」




 レンとエリアス、ルティアは、王都の門から少し出て平原にやってきた。


「夕方には地下に入ることになるが、確認しないといけないことがあるんだ。ルティアは、地下についてくるのか?」


「もちろんよ!」


 やはりそう言うだろうと思っていた。だが、はっきりと言わなければならないこともある。


「正直に言ってルティアは、足を引っ張る可能性がかなり高い。もしもの時、俺たちが守れないかもしれないが、それでも行くか?」


「それでも、ついていきたい……私は、スティグマと戦う!」


 王女としての強い意志を感じた。

 そしてとても強い心だと思った。俺は、ここまで強い人を見たことがあっただろうか……


「そう言うと思ったよ……ならやるべきことは1つだ。これからルティアを強くする」


 2日ほどだが、ルティアの性格はわかった。俺のスキルを悪用するような奴じゃない。


「まずは、俺のユニークスキルについて話すよ」


 と言いルティアに説明を始めるのだった。




 ひと通り説明が終わり、ステータスにハッキングして良いかを聞く。


「もちろん良いわよ。ついに私も、生命魔法以外が使えるように……」


 ルティアは、スキルとして生命魔法以外の属性魔法を希望した。


「良し、始めるぞ!ハッキング」


 ルティアの手を取りユニークスキルを発動するのだった。

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