第3章王都混乱編
第52話 王都到着と問題
レンの前には狼のような魔物が8体ほどいた。
狼の魔物はレンに向かって唸っている。
「さて、まとめてかかってこい!」
とレンは魔物に向かって言って剣を構える。
普通の冒険者の場合には、1人で8体も相手には出来ない。何体かに突破されてしまうのが当たり前だ。
だが魔物は、レンを突破してエリアスとゴリスの方に行こうとは思わなかった。レンを無事に突破できる自信がないのだ。
なので魔物は一斉にレンに襲いかかる選択をする。
「付与!黒炎の剣」
レンの剣に黒い炎が纏う。そして襲いかかる魔物を楽々と斬り伏せていく。
「ん?逃げたか……」
2体の魔物が逃げ出した。勝てないと悟ったのだろう。
「エリアス」
とレンが言った瞬間にエリアスは矢をつがえていた。
エリアスが放った矢は魔物を貫く。
「突然のアドリブにもちゃんと対応したな……」
とレンは感心した。
レン達は魔物を回収して再び出発した。
「デスウルフをあんなにあっさり倒すとは、2人に頼んで正解でしたな」
とゴリスは言う。これまでに雇った冒険者の時は、ヒヤヒヤすることもあったのだろう。
「黒炎もうまくいったな」
とレンはエリアスに言った。強かったし、なんかかっこよかった。
「うん!あっさり倒してたね」
とエリアスも言ってくれた。
「普通は苦戦するのか?」
とレンはエリアスに聞いてみる。
「ええ!被害が多少なりとも出るはずよ……」
とエリアスは言う。怪我をする冒険者も多いらしい。その分、報酬も多いため仕方がないものだ。
「エリアスも武器をかなり使いこなせるようになったな」
数日前までは、動かない的に当てるのもやっとだったのにやはり、ユニークスキルの効果は凄いなと思った。
そして、その後は特に魔物に襲われることもなく3日ほどかけて王都に到着することができた。
頭の良い魔物はレンやエリアスの力を恐れて近づいてこなかったというのも襲われなかった要因だろう。
王都の門を超えて、街中に入るとあまりの人の多さにレンとエリアスは、とても驚いた。
「おお!何もかも大きいな……」
レンは、感嘆しながら述べる。遥か向こう側には城が見えていた。あれが、王城だろうと予想する。
「レンさん、ギルドの方に行きましょう」
とゴリスが言う。
「わかりました。ゴリスさん」
と言ってついていく。
「そういえば、お2人は王都は初めてでしたっけ?」
とゴリスが聞いてくる。
「ええ、初めてです」
とエリアスが返事をする。
「なるほど、あまりに人が多いのでスリなどには気をつけてくださいね」
とゴリスが言った。
「はい」
とレンは返事しながら、元の世界ではスリにあったことなどなかったのでどんなものなのか気になった。
テレビで見たことがある情報では、上手い人は本当に気づかれることなく盗んでいくと言ってたな……スリの技術は、もうスキルと言っても良いかもしれない。
『盗み関係のスキルは存在します、マスター。例えばマスターの強奪もその1つです』
とナビゲーターさんが返事をする。
そういえば、ゴブリンキングと戦う時にインストールしたことを思い出す。もう相手に触れずに盗めるのだから反則だ。
これはもう元の世界よりタチが悪いなとレンは思うのだった。一般人には防ぎようもないだろう。
冒険者ギルドに着き、ゴリスと共に依頼の達成を報告する。
「お2人とも今回はありがとうございました!また何かありましたら私に相談してください」
と住所を教えてくれた。
ゴリスと別れ、レン達は受付嬢の所に向かった。ランクアップ試験を受けるためだ。
「すみません!ランクアップ試験を受けたいんですけど、これ推薦状です」
と受付嬢に渡す。
フィレンの推薦状と気づくと受付嬢は、驚きながら言った。
「ギルドマスターに推薦状を渡してきますので少し時間を頂けないでしょうか?」
「ええ!大丈夫ですよ」
とレンは答える。
「英雄の名はどこでも通用するんだね……」
とエリアスが呟いた。
「ああ!凄いな……」
とレンも答える。
少しすると受付嬢が戻ってきた。
「申し訳ありませんが、ギルド長がお会いしたそうなので来ていただけないでしょうか?」
と言われた。まさかいきなり王都のギルド長と会うことになるとは思わなかった。
受付嬢に案内されてレンとエリアスはギルド長の部屋に入る。部屋の造りはフェレンスとあまり変わらないように感じた。
「フィレン殿から話は聞いているよ。良く来たね2人とも」
とギルド長が言った。
なかなかに優男といった感じの男が声をかけてきた。
「僕は、ティーラー・ガフィン。王都の冒険者ギルドの長をさせてもらっている者だ」
ニコニコと自己紹介してくる。しかし王都のギルド長。この笑顔も見せかけじゃないか?とレンは予想する。相当のやり手と見た。
「レンです。よろしくお願いします」
「エリアスです。よろしくお願いします」
と挨拶をし、握手する。
「まず2人に言わなければならないのだが、当分ランクアップ試験は行うことが出来そうにない」
とティーラーは言うのだった。
「理由を聞かせてもらっても良いですか?」
とレンは聞く。
「ああ!2人に原因があるわけじゃないよ。今、王都では、問題が起こっていて試験を行なっている余裕がないんだ」
と言った。
「この頃、やけに魔物が活性化していてね……ランクの高い冒険者は駆り出されている。申し訳ないが、騒動が収まるまで待ってくれないか?」
と続けて言った。
それは仕方がないとレンは諦めるのだった。
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