[完結してます]スマホのようなユニークスキルで異世界を生きる〜便利なスマホ能力で最強に〜
@Ritoha5680
第1章チュートリアル編
第1話 ゲームアプリと異世界
腹部に矢が刺さり、とてつもない痛みと熱が放たれたのを感じた。これまでの十数年の人生でここまでの痛みを感じたことは一度として無かったため素直に驚いていた。
「なんて、痛みだ……こんな、耐え切れな……」
これから訪れるであろう人生においても、余程のことがない限りこんな痛みを受けることなどないのだが、今いる世界を考えればこの痛みは当然のものとも言えるかもしれない。
「くっ……あぁ……」
刺さった矢を抜きながら苦痛の滲む声を出す。スキルのおかげで幾分かはマシだと思いたいが未だに現実を受け入れられない自分が頭のどこかにいる。それを何とかねじ伏せ、これまでのどうにかなるという甘い考えを捨てる。
ここは異世界……平和な世界で生きてきた自分が楽に生きていくことなど許してくれるはずもない場所なのだろう。
―――――――――――――――――――――――――――
「はぁ……やる気出ないなぁ」
高校3年生である
ボサボサの寝癖が完全に直っていない髪を掻きながら
「まあ、明日頑張ればいいか……」
毎日と言っていいほど使ってきた、多くの人が好むセリフをつぶやく。そして勉強机の近くに置いてあるスマホを手に取った。スマホの画面に映っているのは、最近人気のあるweb小説というやつだ。
「異世界に行ってみたいもんだな……まぁ無理かぁ」
スマホをスクロールしながら現実逃避をしてみるがそれが叶うほど現実は甘くない。
気づいたら目の前に神様!そして異世界へ旅立ち!スキルで大活躍!人気者に!
なんてことが起こるはずもなく小説を読み進める。
トットットッ……
親の足音が聞こえたためすぐにスマホを隠し勉強をしているフリをする。スマホを隠し勉強する体勢に入る動きだけは1流と言っても良いだろう。
「よし、バレてないな」
母親と少しの会話を終え、彼女が去ったことを確認し呟く。
前にスマホを見ているのが見つかった時は1週間程没収されたのだ。そんなこともあってかスマホを上手く隠す流れなど、無駄な技術を得てしまった。
「この俺の動きに隙はない。唯一の至福を取られてたまるか」
完璧な動きだったなと腕組みしながら自画自賛し、またスマホを操作し始めた。
「見たい小説もあらかた読んだし……何か面白いゲームでも探すか?」
ストアのオススメのゲームなどを見てみるがそんなに面白そうなものが見つからない。
蓮の場合、大抵のゲームはインストールしてから一時の間は熱中するがいずれ熱が冷めたかのようにアンインストールしてしまう。長続きしないのだ。
「ん?」
ふとストアの下の方に見たことのないアプリを見つけた。
『異世界へ』
シンプルな名前のゲームアプリで、アプリの説明などは詳しく載っていない。評価も付いていないことから出たばかりなのかなと思う。
「面白そうな気がする!入れてみるか……そこまで期待しているわけじゃないけど」
すぐに飽きてしまうアプリを入れる時と同じセリフを呟き、ただの気まぐれでそのアプリをインストールしようとする。やって後悔した方が良いだろう。
「あら?なかなか進まない……」
どういうわけかスマホの動きが悪いと感じ、少し考えた後に設定を開くと通信制限がきていることに気づく。
「まじか!これは母さんに怒られる」
通信量は共有のため切れた時点で親が気づくのは時間の問題となる。これはまずいなぁと思い、親が気づかないことを祈りながらインストールの完了を待つ。我が家にWi-Fiという便利なものは存在しないのだ。
「やっと終わったか」
30分ほど経っただろう。ようやくインストールが完了した。その間に少しだけ勉強が進んだ。本当に少しだ。
早速、インストールしたアプリを起動する。会社のロゴは見たことのないものでそこまで有名な企業じゃないか蓮が知らないだけだと思う。
まずは利用規約が出てきて、同意する・同意しないの選択肢が表示される。
「利用規約か……読むだけ時間の無駄だよな……無料だし、とばしても良いか!」
利用規約は読まずに同意するを押した。彼には、この選択が自分の人生を大きく変えることになるとは予想できなかった。
次に名前を記入するようにと出たため『レン・オリガミ』と入力する。蓮がゲームをする際に良く使っている名前だ。そしてその下にある決定のボタンを押す。
『本当に大丈夫ですか?間違いがある場合も訂正は出来ません』
と表示される。
間違えているはずもないと思ったのですぐに決定を押す。
と、ここで再び蓮の部屋に向かってくる足音を聞きつける。紛れもなく母親であることは間違いない。
「これは通信制限がバレたか、普通に用事があるかだな。覚悟を決めよう」
怒られるかもしれないと思い、神に拝むように手を組みながらスマホを見つめる。
その時、スマホの画面が光って文字が表示された。
『異世界へようこそ』
画面から光があふれんばかりに輝いており、本当に異世界にでも行ってしまいそうだと思った。
「このゲームなかなか始まり出しから気合入ってるな。これは、神ゲーの予感!」
母が迫っていることを一瞬にして忘れスマホを見ていると、さらに光が強まり蓮を包み込む。
「何だ!何が起きたん……」
と叫んだ時にはすでにレンは自分の部屋から消えていた。
蓮の母が部屋に入った時には、勉強道具とスマホが机に置かれているだけであった。
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