第31話 二人に一人がちょっとアレ
「だってヴィルカシス君だけじゃないかも知れないでしょ?」
「え」
ルネの言葉にユニがカシス何某を見てから俺を見る。
「……まあ、それもそうだが! まず口に出す前に俺に相談しろ」
「はーい」
いつもこいつは返事だけは……。
「でも、とりあえずはそういうことでぇ」
ニコッとルネがカシス何某に会心の一撃たる笑顔を向ける。ああ、仕事が増えた。
「今度のライブ、一緒に出ようね」
「っ! ぁあい!」
ユニ、お前も死んだ怪魚の目になってるぞ。アイドルとして顔作っとけ。
嗚呼これフェルグスに話通さなきゃいけない案件だよな? うわぁ……めんどくさ…………。
このストレスで俺がハゲたら絶対治療費請求してやる。絶対だ。
「……一曲はオリジナル曲にするとして、他はどうする気だ?」
「んー……。ねぇ、ヴィルカシス君?」
「はいっっっっ!」
「ボク達の曲、どれくらいダンス含めて完コピ出来る?」
「発表済は全部でっすっっっ!」
こっわ。いや、怖い怖い! 鳥肌立った!
「わぁ! すごーい! そうだよね。だって全通してくれてるし」
「しっ……!? し、しし、知っ、て!?」
「うん。だっていつもライブ先行抽選に申し込んでくれてるし、すっごくライト振ってくれるし、グッズも全種類買ってくれてる履歴あったし、何よりいつもお手紙とお花くれてるでしょ?」
え。ナニソレ。そしてルネ、お前も何でそこまで知ってる? 俺、今どっちにも怖いって気持ちなんたけど。
あ。カシス何某が尊死って顔で倒れた。めっちゃキモくて笑顔で怖いわ。
ルネのファンて二人に一人がちょっとアレだなって思ってたけど本当に半分か? 実は表に出すか否かの違いだけで全員コレだったらどうしよう。怖過ぎるんだが。
双子のファンは最前列に来る奴らが異常過ぎる性癖なだけで恐らく半……三分の一は適度な普通のファンのはず。俺のファンになってくれてる子? 九割健全だよ。残り一割は実害無いから問題ない。
ユニ……真っ白になって震えてるけど、振る舞い一つで自分にこんなファンが出来て寄ってくる可能性考えたほうが良いぞ。後で教えておこう。ユニのファンになってくれるのはどんな子達だろうな?
いくら怖くてもファンからは逃げられないから結構重要だぞ。
「ヴィルカシス君は全部完コピしてるなら、ユニのパートが加わる曲を同じく練習してもらえば良いよね」
「まあそうだけど……身長、わりと差があるぞ?」
ユニはルネと体格や身長が同じくらいだが、カシス何某は細身ではありつつ身長がある。
見た目的なバランスから違ってくるだろう。
「そこは色々調整だねー」
「おい、それ俺に丸投げってコトだろ」
「レフ、ファイト!」
「あー……もう、本当に過労死させる気か」
酷くないか? 俺、わりと馬車馬のように働いてるんだが。
「そういえば」
「ん?」
「レフっていつ寝てるの?」
こいつ、一度殺して良いかな……?
「あ」
「どうしたの?」
忘れてた。
カシス何某である意味思い出した。
「ユニ、ファンの名称と意味覚えて。あとそれを踏まえてファンサ考えておくの宿題な」
「は? ファンサ?」
「そういえば、そこ言ってないね」
俺達のファンは
ファンからの応援やファンサのリクエストは伴侶からのそれ。であるならば、その返しは?
ちな、ルネはウィンクして片手の人差し指で投げキッスしたりしてる。
双子はそれぞれ視線を投げて軽く手を振ってたり。俺はまあ、笑顔でなるべく一人一人に手を振りつつかな。
「そんなの、聞いてない!」
「今言ったからねー」
頑張れユニ。最初は物凄く恥ずかしいだろうけど。
「まあ、そもそもユニはデビューだからまだ固定ファンもついてないだろうから、挨拶だけ考えておけば何とかなるだろ」
参入の挨拶プラスで、自分に投票してって言う羽目になってるのはご愁傷さまとしか言いようがない。
さて、投票システムも構築が必要だし……あ、本当に過労死するかも?
ユニの阿鼻叫喚とかをBGMにそんな事を考えて方々に掛け合って数日。
「――そんな訳で頼むよフェルグス」
「しゃあないのぅ……これは貸しじゃけん、よう覚えときや」
「ありがとう。助かる」
「じゃけぇ、大学部の先輩方の方が話早いんじゃなかと?」
「それが……諸先輩方、ちょっとコミュニケーションはそこまで得意ではないみたいなんだよな」
つまり、コミュ障。
まあコミュニケーション力あればあの研究室が予算ジリ貧にはならないのでさもありなん。
フェルグスもなんとなく察したのか軽く肩を竦めてこの話は終わった。
「ま。ロバートは丁度手ぇ空いとるらしいけん、報酬はずみゃあ受けるじゃろ」
「勿論、フェルグスへも別途紹介料とカシス何某分のアレンジ費用も色つけておく」
「その言葉忘れずに実行せいよ?」
「わかってる」
ひとまず死なずに済んだ。
自分の手に余るものはさっさと適材適所に割り振るに限るよなホント。
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