第9話


 最初の火花はワイワイ共和国の首都で散った。


 ジュリをはじめとするアムリン団の中の過激派が、武装して市内の各政治施設を占拠したのだ。


 これを止められなかったアムリンは肚を括った。自らも銃を持って立ち上がる。


「やるなら最後までやり遂げる。この戦いで、必ず評議会による政治を実現させてみせよう」


 こうしてあっという間にワイワイ共和国の首都はアムリン団の支配下に置かれた。


 この報を聞いたカレーは慌ててケーキら自由軍団に指令を出した。

「今こそ、君たちの出番だよ。アムリン団をやっつけて!」


 アムリンは、市内に張られたバリケードに隠れながらも、先へ先へと走っていた。

 やがてアムリンは、市庁舎の前で銃を持って立っているジュリを見つけた。


「ジュリ!」

「アムリンさん! 状況は?」

「市内の占拠は済んだ。あとは政府がどう応じるかだ。……分かっていると思うが」


 アムリンはジュリの肩に手を置いた。


「自ら銃を構えたからには、自らの犠牲も覚悟せねばならない」

「分かっています!」

「ならいい。政府側の到着を待とう」


 そこへ、ザッザッと軍靴の音が近づいてきた。アムリンは険しい顔をした。


「やはり武力で制圧に来たか。あれは──自由軍団か」


 ケーキ率いる自由軍団が市庁舎までやってきた。

 アムリンとジュリはバリケードの後ろに隠れた。


 やがて何の警告もなしに、激しい銃弾の雨が叩きつけられた。


 アムリンたちは頭を抱えて、それに耐えた。何人かの呻き声が聞こえた。やられたらしいことは分かったが、確認しに行く余裕も無い。

 銃撃のやんだ隙を見て、ジュリが飛び出し、発砲する。自由軍団にも犠牲者が出た。


 これにいきりたったケーキは更なる弾幕を張ることを命令する。

 市庁舎前は壮絶な戦いの場と化した。


 ムネミツはというと、別の隊に参加して、市内を巡回しながら、索敵をしていた。

 戦況は明らかに自由軍団の有利だった。当たり前だ、その構成員はほとんどがドンドコ帝国軍の残党なのだから。


 形勢は逆転し、自由軍団が市内を占拠しつつあった。


 ムネミツの隊がちょうど市庁舎に差し掛かった頃、決着はついた。


 アムリンが武器を捨てて投降したのだ。


「降参する。これ以上、労働者たちに危害を加えないでくれ」

「最初に危害を加えたのはお前らだろうが!」

「それは」


 アムリンは口籠もった。


「ふん。口ほどにもないやつめ」


 ケーキは銃を構えた。

 ジュリはハッとしてアムリンの方を見た。


「そんな。アムリンさんは武器を捨てたのに!」

「問答無用。銃殺刑に処す!」


 バーンと爆発音がして、アムリンの頭から血飛沫が上がった。アムリンは倒れた。


「アムリンさーん!!!」


 ジュリの叫びは、自由軍団の足音に飲み込まれて消えていった。

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