第7話


 パクリダとゴトーが亡命先の屋敷に到着すると、そこにはかつての参謀長、カロがいた。


「こんにちは、パクリダ皇帝陛下。いや、今はただのパクリダさんかな? ふふっ」

「か、か、カロ! お前、国が大変な時にのんびり亡命しおって!」

「大丈夫ですって。もう少ししたら私は帰国しますから」

「何っ!?」


 驚くパクリダに、カロは悠々と屋敷を案内する。


「私もワイワイ共和国とやらには反対しておりましてね。のうのうと敗戦を受け入れるばかりか、労働者による革命まで起こしてしまうなんて! とんでもない、受け入れ難い事態ですよ、これは。私は帰国して、ワイワイ共和国をひっくり返すつもりです」

「何と。すると、帝政を復活させてくれるのだな? 我をまた皇帝に戻してくれるのだな?」

「いえ、そういうつもりは一切ありません」

「何でだーっ!!」


 パクリダは叫んだ。

 もうさんざんだ。

 ほとぼりが覚めたらまた皇帝の座に戻れるという淡い期待が打ち砕かれた思いだ。


「大丈夫ですよ。ここにいれば少なくともパクリダさんの命は守られます。ゴトーさんも。ここで生涯ゆったり暮らすことをおすすめしますね。では、私はこれで」


 カロはパクリダとゴトーをそれぞれの客室に案内してしまうと、自分の部屋にさっさと戻ってしまった。


 さて、ワイワイ共和国である。


 国防相カレーは思い悩んでいた。


「私は大人しくワイワイ共和国軍に入りますよ、ええ」


 ミナシはタバコをふかしながら言っている。軍部の一部の人間は、彼のようにそのまま軍に留まることを望んだ。

 一方、ワイワイ共和国なんていうものに協力するのは一切ごめんだという派閥も存在する。


「私はワイワイ共和国軍には入りませんっ! 断固拒否します!」


 ケーキは言っている。だがカレーは、ケーキのような人材をそのままにしておくのは忍びなかった。


「……共和国軍に入りたい者はそのまま入ってくれ」


 カレーは言った。

 ミナシは「へーい」と雑な返事をした。


「一方で、今後は、ちょっとした義勇軍が必要となってくる。軍を大々的に動かせない時のための部隊がね。──よって、ワイワイ共和国軍に入りたくない者は、民兵として義勇軍に入ってくれないかな」

「その、義勇軍というのは、具体的には何をするのです?」


 ケーキが尋ねる。カレーは眉間に皺を寄せた。


「……今後は、アムリン団をはじめとする、革命をもっと進めたい人たちが暴れ始めるだろう。それを阻止するんだ。つまり、反革命という立場になるね」

「……それなら、まあ……」


 ケーキは曖昧に頷いた。カレーは嘆息した。


「決まりだ。準軍事組織、名付けて自由軍団を組織するよ」

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