第482話 要するに!

 そしてネヴィラお姉様がルスキューレ公爵家のために用意されている席。

 つまりは私の親族席に着き、タイミングを見計らったかのように……


「そろそろ時間なので、貴方達も早くの席に着きなさい」


 王国魔法師団が第四席! 魔法士の称号を持つ実力者でありながら、魔法の授業を受け持っていたカリア先生が。


「さぁ、君達も早く自身の席に移動するんだ」


 そして王国騎士団が第三席でカリア先生と同じく、剣術の授業を受け持っていたグリバル先生が。

 この2人が教師としての立場から、セドリック達に指示を出してくれた。


 ネヴィラお姉様のおかげで、メンタルHPがレッドラインに突入してるセドリックは俯いたままこれに従い。

 セドリックが何も言わないから、オズワルド達側近もこれに従うしかなく。


 それを皮切りに先生達が、他の生徒達にも着席を促して卒業式顔スタート。

 主席にセドリック、次席に私、そしてサイラス、オズワルド、ガイル、エマ、ラルフィー少年と。


 セドリックが万が一、私の席の強奪に失敗した時のために保険を掛けていたようで。

 この席順に多少の不安はあったけど……


 ネヴィラお姉様が来てくれたおかげで、セドリックも大人しくなったし。

 エマはめっちゃ不服そうな顔をしてたけど、セドリックが諦めたからか何も言わずに引き下がった。


「ふぅ」


 そして今! 何とか無事に卒業式も全行程が終了した!!

 セドリック達の計画は把握してるし、ここでは仕掛けてこない事は知ってたけど……この席順だし、一応ずっと気を張ってたから疲れたわ。


『ふふっ、お疲れ様』


 あぁ! 今すぐ私の膝の上でちょこんと座ってる、激カワなルミエ様を愛でて癒されたい!!

 でも……本番はこれからなんだよね〜。


 ネヴィラお姉様のおかげで、この卒業式では大人しくしてたけど、ここまで来てセドリックが引き下がるとは思えない。

 かなり力を入れて準備をしてるみたいだし、と言うかここで計画を中止にでもされたら私が困る。


 今日セドリックの方から、私との仮婚約を破棄してくれないと!

 まぁもし仮に、万が一セドリックが計画を中止した場合は、私から仮婚約を破棄してやるつもりではいるけど。


 それは最後の手段!

 学園でのセドリックの言動は大勢が知ってるし、向こうの有責に持っていけるだろうけど。

 ルスキューレ家に迷惑が掛かる可能性はゼロじゃないし。


 そんなわけで私としては当初の予定通り、ここはセドリックから私との婚約破棄を宣言して欲しいところ!

 そんなわけだから頼むわよ! お願いだから、ここで諦めるなんて真似はしないよねっ!?


「卒業生の皆は一度退出し、本日午後6時よりこの場で卒業記念パーティーを開催──」


「学園長、少しいいだろうか?」


 きたっ!!


「で、殿下? いったい何を……」


 学園長の話を遮り、いきなり壇上に上がったセドリックが、困惑している学園長を手で制して私達を見渡し……


「まず初めに、皆と共に今日という日を迎える事ができ嬉しく思う。

 皆も知っての通り、本来であれば先程学園長が述べた通り、卒業式典後にこの場で記念パーティーが開催されるのが通例だ」


 うんうん! そうだよね、そうだよね!!


「しかし、私は思うのだ。

 いつまでも古き慣習に囚われていては、我々に進歩は望めない……と」


 うわぁ、またこの国の方針をというか、常識を真っ向から否定するような事を言っちゃったよ。

 いやまぁ、間違ってはないんだよ? ないんだけど……


 それをこうして国内外の貴族が多く集まっている場で、しかも王太子という立場の者が堂々と言っちゃったらまずいでしょうに。

 しかも国王であるエルヴァンおじさんの許可も得ずに。


「皆も知る所だとは思うが、私はこの学園の在学中に超大国と謳われる四大国が一角、レフィア神聖王国を始め、多くの国々を直接この目で見た。

 だからこそ断言できる、我々も先に進むべきだと」


 あ〜、そういえばレフィア神聖王国に来た後も、イベント遂行のために色々な国に行ってたんだっけ?


「今年は私や側近であるオズワルド達を始め、次代の王国を担う者達が多く集う世代と言えるだろう。

 そんな私達だからこそ進歩を恐れず、率先して動く必要があると私は考えている」


 まぁ、なんか長々と語ってるけど……要するに!


「そこで、今年の卒業記念パーティーは学園ではなく、王宮で行う事を提案したい!!」


 って事が言いたかったってわけね!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る