第455話 観戦準備

「っ〜……えっ?」


 ちょっ! ええっ!?

 何これ? いま何が起こったの!?


「あはは……さすがですね」


「これは……」


 フィルにエレンお兄様。


「いったい何が……」


「うそっ!?」


「マジかよ……」


「凄まじいですね……」


「おいおい、マジか!」


「びっくり、した」


「本当に!」


「これはこれは」


「ふむ……」


「あの国の方々は……」


 イヴさん、ロイさん、ミルバレッドさん、イェーガーさん、ラピストさん、オラシオさん、シャドウさん、アルマさん、オネットさん!

 みんなもここにっ!!


「ここは……」


 王都の外壁の上みたいだけど……これってレフィーちゃんに、それも別々の場所にいた私達Sランク冒険者全員を、同じ場所に転移されたってことっ!?


「はぁ……まったく、お母様は」


「自由気ままというか、なんというかだな」


 ルミエ様とガルスさんはなんでそんなに落ち着いて……って!


「何やってるんですかっ!?」


 座り心地が良さそうなソファーにテーブル、飲み物と食べ物までっ!!

 というか! そんなのどこから用意したんですかっ!?


「何って、観戦する準備に決まってるじゃねぇか」


「観戦する準備って……」


「ふふっ、ソフィーも早くこっちにいらっしゃい」


「……」


 なんなの? ルミエ様とガルスさんの、この落ち着きようは!

 今まさに上空で! 私たちの目の前で……神話に語られる400年前の大戦が再現されようとしているのにっ!!


「心配しなくても大丈夫よ。

 ソフィーもだけど、フィルとエレン、あの場にいた貴方達は見たでしょう?

 お母様のあの貌を」


「それは……見ましたけど」


 さっきの女神アナスタシアに向かって、アイツは私の獲物って言った時のレフィーちゃんの顔。

 基本的にいつも無表情で、ちょっとだけ口角が上がったりする程度だけど……


 とっても、心底嬉しそうな表情。

 それなのになぜかゾッとするような、生物としての本能が、魂の根底から恐怖を感じるような……レフィーちゃんの笑顔。


「はっきり言って、お母様の強さは異常よ。

 お母様と同等に渡り合えるのはお父様くらいだし、ましてや勝てるのなんて……」


「この私、くらいだね!」


「っ!? ネ、ネフェリアス様っ!!」


 いつの間に私の背後にっ!?


「久しぶりだね、ソフィーくん。

 さてと! また前みたいにイタズラをしたいところだけど、悪魔ちゃんが怖いからそれはやめておくとして……このくらいでいいかな?」


 瞬間──


「これはっ……!!」


 ほんの一瞬。

 常人はもちろん、超一流とされるAランク冒険者でも、それどころか一年前の私達Sランク冒険者ですら気づけない程の刹那……


 ネフェリアス様から計り知れない魔素エネルギーが放たれて、王都を……それ以上に広大な、私では感知しきれない範囲を包み込んだ。


「まさか……今のは神域、ですか?」


「おっ! さすがは悪魔ちゃんの愛子だね。

 その通り! 悪魔ちゃんはもちろんだけど、アナスタシアもかつて主神の地位にいた存在だからね。

 あの2人が本気でやり合うとなると……」


 なると……?


「大陸……というか、この世界そのものが、ちょっとマズイ事になる可能性が高い。

 だからとりあえず、この大陸を私の神域で覆って保護したんだよ」


 世界そのもの、とりあえず大陸……さすがに話の規模が大きすぎて……


「っと、そろそろ始まるみたいだね。

 ほら、キミ達も早く座って! 楽しむ悪魔ちゃんの……悪魔ちゃんとアナスタシアの戦いを観戦しようじゃないか!!」

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