第431話 最後の一柱

 予想通り、2対の翼を持っている人物。

 ミカエルが第一使徒であり、教団のトップだったのはいいんだけど……今なんて言った?


熾天使セラフィム……?」


「いかにも」


 う〜ん、変わらず柔らかな笑みを浮かべながら頷いてるけど、これは駆け引きを仕掛けられてる?

 私達がどこまで情報を掴んでいるのか、探りを入れられてるのかな……


「ふむ、ハッタリですか?」


 魑魅魍魎が蔓延る社交界で、その名を轟かせるこの私に!

 月の女神と称される悪役令嬢ソフィア・ルスキューレに、駆け引きを仕掛けてくるなんて。


 ふふんっ、面白い!

 いいだろうっ……その勝負、この私が受けてたってやるわっ!! 果たしていつまで余裕が持っていられるかな?


天使族エンジェルの階位は全部で9つ。

 上から順に高位の熾天使セラフィム智天使ケルビム座天使スローンズ

 中位の主天使ドミニオン力天使ヴァーチュス能天使エクスシア

 下位の権天使アルケー大天使アーク天使ノーマルに分けられます」


 そして……


「その中の最高位天使である、熾天使セラフィムはこの世界に五柱しか存在しなはずですが」


 ミカエルが何を聞き出そうとしてるのかは知らないけど、これは隠すまでもない!

 私達が400年前の聖魔大戦について……この世界の真実について、一部を除いて知っているのだよ!!


「……」


 若干の間。

 この間があるって事は、やっぱりミカエルは私からなんらかの情報を聞き出そうとしてる事は確実。


 そして私の言葉に間が空いた事からみて、私達が400年前の聖魔大戦およびこの世界の真実について、どこまで知ってるのかを聞き出そうとしていた可能性は高い。


 とはいえ、この間自体ががブラフの可能性も十分にあるし。

 ミカエルが得ようとしている情報が、私達がこの世界の真実についてどこまで知っているのかって事だと断定するのは早計かな?


「どうやら、貴女達は我ら天使族エンジェルについて、かなり詳しく知っているようですね」


「えぇ、熾天使には3対の翼がある程度の事なら知っていますよ」


 なにせ! かつての聖魔大戦で何があったのか、なぜ聖魔大戦が勃発したのかも知ってるのだ!!

 当然、あの戦いに関与していた熾天使の事についても、それなりに知っている。


 それだけじゃなくて、かつて熾天使だった方々が今どうなっているのかも知っている。

 だからこそ五柱しか存在したかったって言ったわけだけど……さて、どう出るかな?


「なるほど、そこまで知っているのなら、もはや隠す意味もありませんね」


 まっ! 私達は天使族についてもある程度は詳しく知ってるわけだからね。


「しかし、貴女達は一つ勘違いをしていますよ」


「勘違い?」


 いったい何を……


「熾天使の持つ魔素エネルギーは本来、この下界においては多大な影響を齎すほどに強大。

 故に有事の際以外に下界に降りる際に、我ら座天使スローンズ以上の高位天使は中位である主天使ドミニオンクラスまで魔素エネルギーを抑え込むのです」


「まさか……」


「ふふっ、制限解放」


 瞬間──ミカエルから膨大な魔素エネルギーが立ち昇り……


「私は本当に我らが真なる神によって創造されし、熾天使が最後の一柱ヒトリなのですよ」


 真っ白な3対の翼が広がった。

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