第418話 ようこそお越しくださいました

 瞬間──



「「「「「「──っ!!!」」」」」」



 誰もが黙り込み。

 固唾を飲んで空を見上げ。

 騒然と大騒ぎになっていた王都レ・フィーアが、一瞬にして静まり返る!


「ふふっ」


 ふっふっふ〜ん! どうだ!!

 私がちょっとその気になればこの通り! いやぁ〜、我ながら流石だわっ!!


「ソフィー、いきなりは心臓に悪いからやめてほしいんだけど……」


「ソフィーさん、まさかこれほどに……」


「ははは、流石と言うべきか、なんと言うべきか」


「これはもう、笑うしかありませんね」


「はぁ……規格外もいいところだな」


「まぁ、あんな修行を率先してやってたらな……」


 むぅ〜、フィルがお小言を言ってくるのは、いつもの事がだからいいとして。

 目を丸くするイヴさん、苦笑いするミルバレッドさんとオネットさん、呆れたようなシャドウさんにロイさん。


 おかしい。

 ここはもっと、すごいっ! 流石はソフィーっ! 流石は私達のリーダーっ! って感じで、みんなからも尊敬されるはずだったのに。


「マジかっ! ソフィーちゃんスゴイよっ!!」


「たった1年でここまで!!」


「本当にソフィーちゃんは……凄いな」


「ははっ、流石は私達のリーダーだ」


「うん、ソフィアは凄い」


 そうそうっ!

 目を輝かせるフラン先輩にオラシオさん、感心たような感じのイェーガーさんに、私を褒めるアルマさんとラピストさん!!


 これだよ、これっ!

 この反応を期待していたのだっ!!

 何故か私はみんなから、ちょっと残念なお転婆お嬢様って思われている節がある。


 私は周辺諸国のみならず、四大国にも! 才媛として大陸全土にその名を轟かす天才なのに。

 若干マスコット的な扱いをされてる気もするし……しかぁしっ! これで私に対する評価も、少しは改善されたはず!!


「ウフフ! いつになっても、ソフィーは本当に可愛いわ〜!!」


「まったくもってその通りですよ!

 見ましたか!? 今のドヤ顔っ!!」


 ルミエ様とエレンお兄様は……まぁ、平常運転だからいいとして。


「嬢ちゃんがヤバいのは認めるが、お前らは本当にブレねぇな。

 と言うか、嬢ちゃんは仮面をつけてるのに、なんでドヤ顔とかわかるんだよ」


「ははは、何を言ってるんですか師匠。

 そんなの透過魔法を昇華させた特殊スキル、観察者メデルモノの権能に決まっているでしょう?」


「……」


 まぁ、うん。

 ガルスさんが黙り込んじゃうのもわかる。

 だって……エレンお兄様は当然って感じで言ってるけど、まったくもって当然じゃないし。


 エレンお兄様だけじゃなく、ルミエ様やアルトお兄様。

 そしてお父様やお母様、ミネルバにファナ、七魔公の皆様などなど。

 そのスキルを有する人はそれなりにいるわけだけど……


 その権能は、強力な認識阻害効果があるはずの、私の仮面を透過するのみならず。

 推しの表情を見逃さず、推しのちょっとした体調の変化なども見通せるとかいう、ちょっと意味不明なものだもん。


「お、おう、そうか……」


 ガルスさんが若干、引いちゃってるけど……まっ! 細かい事は気にせずに!!


「あ、あれはっ!」


「Sランク冒険者達だ!!」


「ソフィー様〜!!」


 王都の人々の歓声を受けながら、ゆっくりと高度を落として……


「っと」


 王都の外に整列して展開する獣王戦士団と対峙するように、Sランク冒険者のみんなを引き連れて、ふわっと軽やかに外壁の上に降り立つ!!

 本当なら戦士団の……というより、レオン陛下の前に降りて、ご挨拶するべきなんだけど今は……


「私はSランク冒険者〝白銀〟のソフィーです。

 王都にお住まいのみなさん、どうかご安心を」


 王都の混乱を治めるのが最優先!!

 当然レオン陛下は何もする気はないんだけど、この騒ぎを放置してたら二次被害が出かねない。


「今現在この王都レ・フィーアには、私達Sランク冒険者15人全員が集結しています。

 みなさんが不安になったり、心配する必要はありません」


 ふっ、決まったわ!


「「「「「レフィー様ぁっ〜!!」」」」」


「「「「「ワァァァァ!!!」」」」」


 ふふん! 流石は私、大人気ねっ!!

 さてと、王都の事はこれでいいとして……何故かニヤニヤしてる、レオン陛下の前に転移。


「こほん! お待たせいたしました」


「クックック、いや! なかなか様になってたぜ?」


 本当にさっきからずっとニヤニヤしてるけど……まぁいいや。

 ふふふ、月の女神と称される私の美しく洗練された、完璧な所作を刮目せよっ!!


「獣王国ビスバロニス国王にして、八魔王が一柱ヒトリであらせられる獣魔王レオン陛下。

 レフィア神聖王国が王都レ・フィーアへ、そして世界会議へようこそお越しくださいました」


 ふっ! 我ながら完璧なカーテシー。

 私の気品に溢れる所作を目の当たりにして、目を丸くしているSランク冒険者のみんなや、レオン陛下の顔が目に浮かぶわ!!

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