第381話 引導を渡してやる

「うふふっ」


 ルイーナから立ち昇る膨大な魔力! 他とは一線を画する凄まじい魔素エネルギー

 この貫禄!! う〜ん、さすがは魔王の一角に数えられるだけはある。


 とはいえ……今のルイーナから感じる圧は、獣魔王レオン陛下から!

 5年前にピアを一蹴した、鮮血姫ルーナ様から感じたほどじゃない!!



 バチィッ!!



 雷鳴が轟く!

 身に纏った雷が弾ける!!


「まずは……」


 地面を蹴り上げ……


「小手調べです」


 空中に浮かんで余裕の笑みを浮かべてる、ルイーナの懐に肉迫して一閃!!


「むっ!」


 白い刀身の軌跡を描いた私の一閃が……結構普通にルイーナの結界に阻まれちゃった。


「そのスピードは素晴らしいと認めてあげるわ。

 でも……それだけ、その程度じゃあ私の結界には、傷一つもつけられないわよ?」


 言ってくれるわね!


「ふふっ」



 バチィィィ!!!



 耳をつんざく雷鳴が鳴り響いて、青白い雷が迸る!!


「それはどうでしょう?」



 ピシッ──



「これは……」


 雷を纏わせた私の刀によって、ルイーナが展開してる結界にヒビが走る!


「はぁ!!」


 そのまま刀を押し込むと……



 パリィッン!!



 刀を押し込んだ事で崩れた体制を整えるために、一瞬刀から手を離し……


「っ!」


 身体を反転させて、息を呑んでるルイーナに向かって空中に投げ出した刀を掴んで横薙ぎに一閃!!


「っと、やりますね。

 さすがに避けられちゃうか」


 まっ! こんな簡単に勝負がつくなんて、思ってなかったから想定通りだけど。

 なにせルイーナは仮にも魔王を名乗る者、それにピアよりも格上の第六使徒だし!!


「それはこっちのセリフよ。

 まさか……」



 ツゥ……



「この私が傷をつけられるだなんて」


 頬から一筋の血を流す、ルイーナの貌には……さっきまでの余裕の笑みとは違って、戦意と殺意に満ちた獰猛な笑みを浮かぶ。


「ふふん!」


 ルイーナさんご自慢の結界を、粉々にしてやったわっ!!

 私がちょっとその気になれば、ルイーナの結界程度は簡単に破壊できるのだよ!!


「本当に、よくもやってくれ──」



 ッ──!!



「あっ」


 ルイーナの怨嗟の籠った声を遮って、天を衝く白い光の柱がルイーナを飲み込んじゃった。


「ソフィー、油断しすぎ」


「フィル……」


 いやまぁ、確かにルイーナの結界を破って、ちょっとドヤってたのは認めるけどさ。


「別に油断はしてないもん。

 それに、もし危なくてもフィルがフォローしてくれるでしょ?」


「いや、まぁ……うん、それはそうだけど。

 信頼してくれてるのは嬉しいんだけど……はぁ、まったく……」


 なんかぶつぶつ言ってるけど……まぁいいや、細かい事は気にしない!

 しっかし、あんなにビシッ! っと話してる途中で、容赦なく魔法をぶち込むとは。


 フィルったら、もうちょっと空気を読まないと。

 あれじゃあ、ただでさえ怒り心頭って感じだったのに、余計にルイーナの怒りを煽る事になると思うんだけどなぁ。


「本当に……」


「「っ!!」」


 この凄まじい重圧プレッシャー

 ルイーナの魔王覇気!!


「本当にやってくれるわね」


 ほら! やっぱりさっきよりも怒ってるじゃんかっ!!

 フィルがルイーナの言葉を遮って、魔法を放ったりするから!


「ふっ、ふふふ……図にのるなよ、人間共が!

 特異点たる愛子である、貴女は殺すわけにはいかないけれど……その身に! その魂に!

 この私に逆らう事の! この私の顔に傷を付け、私の言葉を遮った事の愚かさを刻み込んでやるわ!!」


「っ〜!!」


 来るっ──


「おいおい、ガキンチョ共相手に大人がねぇぞ? ルイーナ」


「へっ……?」


 うそ!

 で、でも、この声は……


「教団のヤツらのスパイだったとはいえ、同じ魔王に名を連ねてたよしみだ。

 俺様の手で引導を渡してやる」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る