第358話 第2ステージ
「まぁいいでしょう。
Bランク程度の実力で、どうやってあの2人に勝てたのか……少し興味がありますね。
殺すのは少し惜しい、ですか」
「なんだと?」
「そうですね、貴方達には実験体になってもらうとしましょう。
残念ですが、貴方達では私に勝つ事は不可能です。
ですので、素直に投降してくれませんか?」
影の騎士のリーダーが、柔らかな笑みを浮かべてセドリック達に投降をすすめ……
「「「「「断るっ!!」」」」」
5人が同時に拒否の言葉を即座に返す!
まっ、そりゃあ実験体にするから投降しろなんて言われて、素直にはいそうですかとはならないよね。
「そうですか……あまり貴重な実験体に傷はつけたくなかったのですが、こうなっては仕方ありませんね」
右手に剣を持ったまま、まるで街中を行くかのように軽やかな足取りでセドリックに向かって歩き出す。
「貴方達の手足を切断し、大人しくさせた上で拘束するとしましょう」
瞬間──ゆっくりと歩いていた影の騎士のリーダーの姿が掻き消え……
ギィッンッ!!!
「っ!?」
耳障りな金属音が鳴り響いて、笑みを浮かべていた影の騎士のリーダーが目の前の光景に僅かに息を呑んで目を見開く。
振り下ろした自身の剣が、セドリックの剣によって受け止められている光景に。
「ハァっ!!」
受け止めた剣を剣の腹を滑らせるようにして受け流し、そのまま流れるような綺麗な動作で斬り返す!
ポタッ……
「驚きました」
一瞬で最初に立っていた場所まで飛び退いた影の騎士のリーダーが、頬から一筋の血を流して心底驚いた様子で自身を鋭く見据えるセドリックに視線を向ける。
「まさか今の一撃を受け止めただけではなく、反撃までされるとは……お見事です」
この賞賛は本心だろうなぁ〜。
なんたって影の騎士のリーダーにも、自身が圧倒的に格上だっていう慢心と油断はあっただろうけど……
それでも影の騎士のリーダーはAランク最上位。
片足ほどAランク、英雄の領域から遺脱しているA+とでもいうべき強者。
それに比べてセドリックの実力は、ぎりぎりBランクに相当する程度。
純然たる事実として、彼我には大きな実力差が存在する。
「ふふっ」
にも関わらず、自身の攻撃を止められただけではなく、反撃までされて傷を負わされた。
圧倒的な格下に……影の騎士のリーダーの驚愕は相当なものだろうけど……
「これが乙女ゲームクオリティ」
なんたって彼が今対峙しているのは、乙女ゲームの主人公たるヒロインのエマに、セドリックを始めとする攻略対象たるヒーロー達なのだ!!
普通の貴族令嬢と大差ないとはいえ、ゲーム内ではこの私を当て馬の踏み台にする連中だよ?
舐めてかかると痛い目を見るのは必然なのだよ!!
「まぁ、それでも……」
今のセドリック達では……
「エマ! みんなにも支援をっ!!」
「わかった!!」
「みんな! 悔しいが地力は向こうが圧倒的に上だ!
持久戦になればなるほど、こちらが不利になる……だから、速攻で終わらせるぞ!!」
「「「はっ!!」」」
エマの支援魔法が飛び、セドリックの言葉を受けて前衛であるガイルが地面蹴って影の騎士のリーダーへと肉迫する。
後方と右方からサイラスとオズワルドが放った魔法が飛来し……
「ッ!? ぐっ……」
蹴り飛ばされたガイルが呻き声を漏らし。
「なっ!?」
「っ!!」
魔法が霧散した事実に、オズワルドとサイラスが目を見開く。
「ふふふ……クックックック、あはっはっはっ!!
貴方達程度がこの私を相手に速攻で終わらせる? 笑わせてくれますね」
瞬間、影の騎士のリーダーが纏う気配が一変する。
「不愉快だぞ、雑魚共が。
お前達程度が、この私に勝てるとでも思っているのか?」
「「「「「っ!!」」」」」
「勝つのはちょっと厳しいだろうけど」
影の騎士のリーダーが放ってる殺気を向けられて、固唾を飲んじゃってるし。
「いや、ちょっとじゃなくて不可能じゃない?」
「まぁ……うん」
フィルがそう思うのも仕方がない。
それ程までに隔絶した実力差があるわけだしね。
「私もそう思うけど……乙女ゲームではなんだかんだで勝ってるんだよ?
それに! ちょうど第2ステージに入った事だし、ここはセドリック達のお手並み拝見だね!!」
「第2ステージ?」
「そう! 第2ステージ!!
ボス戦で追い詰めてボスがパワーアップするのはテンプレでしょ!?」
「えっ? あぁ……うん、そうだね」
影の騎士のリーダーが本気になった……つまり! ボス戦の第2ステージに入ったという事なのだよ!!
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