第356話 ボス出現
本来ならば静寂が支配し、時おり獰猛な魔物達の唸り声が聞こえて来るダンジョンの一角に……
「何が起こっているっ!?」
「隊列を組めっ! 敵はたった数名だぞっ!?」
「何としてでもここで食い止めろ!!」
いつもの静寂とは似つかわしくない、人間の怒声が鳴り響く。
「うんうん!」
四大国が一角にして、ネフェリル帝国と並んで超大国と称されるレフィア神聖王国。
その王都レ・フィーアの近郊にある未踏破Sランク
一見行き止まりに見える壁の奥に存在する隠し通路を抜けた先……広い空間に存在する城塞。
この場所こそが各国にも根を伸ばしていて、それなりの規模を誇る魔王傘下の犯罪組織・
「なかなかに順調みたいね」
予定調和というべきか、なんというか。
とにかく! 乙女ゲーム通り影の騎士の幹部である2人との死闘に勝利を収め、助けた少年の案内でこの隠された影の騎士の本拠地までやってきたわけだけど……
「どけ! 邪魔をするなら容赦はしないぞ!!」
「エマ! 貴女はガイルと一緒に、囚われている子供達の保護を!!」
「わかった! 任せてっ!!」
「サイラス! ここは任せたぞ!!」
「あぁ、わかっている!」
城塞に乗り込んだセドリック達は、まさに破竹の快進撃!
敵をバッタバッタと薙ぎ倒し、敵陣の中を押し進む……!!
「まぁ、当然といえば当然の結果なんだけど」
だってセドリック達はこの組織でもトップクラスの実力者だった、第九席と第八席の幹部を撃破してるわけだし。
数が多いとはいえ、有象無象のモブ共にやられるわけがない。
「しっかし、本当にすごい成長速度だわ〜」
このセドリック達の奮戦を見て、果たして誰がほんの半日ほど前までは、たった数匹のFランクの魔物に手こずっていたと思うだろうか?
「確かに今の彼らはBランク冒険者相当。
あの聖女さんの支援魔法込みなら、既にAランクに匹敵するほど。
いつもこれ以上に非常識な存在を見てて感覚が麻痺してたけど、そう考えると確かに異常だね」
いつも見てる非常識な存在っていうのが、誰の事なのかは知らないけど……
「だよね!
こんな混戦なのに敵を殺さず、気絶させるに留めてる程の余裕もあるみたいだし」
いやぁ〜、これが乙女ゲームの攻略対象達とヒロインの実力!!
「本当、末恐ろしいよね〜」
「いや、ソフィーの方が……」
「あっ! エマとガイルが戻ってきた!!
ん? フィル、今何か言った?」
「いや、なんでもないよ。
それよりも、無事に囚われていた子供達は救出できたみたいだね」
「そう? しっかし……」
この光景を見ているとつくづく思うわ。
本当〜に! この程度なら片手で軽くあしらえる程度には、一角を相手取れる程度には強くなっててよかった!!
まぁ、これからまだまだ強くなるだろうけど。
だってこの程度なら5年前の、冒険者になたった直後の私でも余裕でセドリック達5人を相手に圧勝できるだろうしね。
最終的には魔王の一角を倒すほどにまで強くなる……はずだから、数年後のセドリック達の実力はこんなもんじゃないと思う。
「油断できないわね」
やっぱり悪役令嬢たる者、優雅で美しくスマートかつカッコよく! 何事にも余裕の笑みさえ浮かべて、その場にいる者達を魅了しないとだもん!!
よって……もっともっと、強くならなきゃ!
たとえセドリック達がどれほど強くなったとしても、余裕の笑みを浮かべて軽くあしらってやれるほどにっ!!
「えっ? なにその何かを決意したような表情。
なんか非常に嫌な予感がするんだけど……」
「もうフィル、何わけのわからない事を言ってるの?」
というか、嫌な予感がするとかフラグっぽい事を言わないでほしい。
これでもし本当に何か、想定外の事態が起こったらどうするのか。
「本当にフィルは……」
「ちょっと待って。
どうして僕がやれやれって感じで、呆れられてたような顔を向けられてるの……?」
「まったく、バカな事を言ってないで……ほら、来たよ」
まっ、フィルなら私が言うまでもなく気づいてただろうけど。
「まったく……これはいったい、なんの騒ぎですか?」
私達の視線の先。
奮戦するセドリック達の奥の通路から……ピシッと漆黒の騎士服に身を包んだ男が。
この犯罪組織・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます