第355話 時間の問題
キンッ! キンッ!!
薄暗いダンジョンの通路に、剣の刃がぶつかり合う音が鳴り響く。
対峙するは2人の男と、5人の男女。
この戦闘を客観的に評価すると、男2人は人数的には不利なのにも関わらず無傷で剣を振るっている。
対する男女5人組はボロボロになりながらも男2人となんとか渡り合っている……ってところかな?
そして、この戦闘を成り立たせているのは……1人の少女!
まだまだ荒削りだし、タイミングもちょっと遅い。
とはいえ、エマの回復魔法や支援魔法が良い役割を果たしている、けど……
「危ういね」
「あっ、やっぱりフィルもそう思う?」
「まぁ、あの状況なら誰でもね」
う〜ん、まぁそうだよね。
だって今の状況だと、エマがダウンするとそれだけで戦線が一瞬で崩壊しちゃうだろうし。
はっきり言ってエマありきの状況だしね。
「とはいえだよ? 聖女の支援があってこそとはいえ、よく善戦してる方だと思わない?」
「それは……そうだね。
あの5人が半日前時点では、たかだか第5階層で手こずっていたとは思えない戦いだね」
「そうでしょ!?」
流石というべきか、なんというべきか。
いやまぁ乙女ゲーム通りの展開と言ってしまえば、そうなんだけども。
まさか! まさかこの短期間で、あそこまで腕を上げるとは……!!
恐るべし! 乙女ゲームの
いやまぁ、最初からそれくらいの素質は持っていたんだろうけど。
温室育ちで足りていなかった経験が、今回のダンジョン攻略を通してやっと才能に追いついてきたってかんじかな?
「しかも……」
「はっ!!」
「っ!」
セドリックが振るった剣が男の頬を掠める。
「っと……クックック、危ない危ない」
セドリックから距離をとって垂れてきた血を手の甲で拭いつつ、戯けたように余裕の笑みを浮かべながらも……その目は鋭く細められる。
きっとあの男の内心は今、驚愕に包まれているはず。
だって……戦い始めた時は、まだまだ余裕を持って遊んでいられるだけの実力差があったのだから。
にも関わらず、ダメージともいえない敬称とはいえセドリックによって傷を負わされた。
その事実による衝撃は大きいと思う。
「なかなかやるじゃねぇか。
まさか……この俺が傷を負わされるとはねっ!!」
瞬間──地面を蹴り上げて、さっきまでとは比べ物にならない速度で踏み込んで剣が振り下ろされ……
ギンッ!!
耳障りな金属音と共に弾かれる。
「この戦闘の中でも凄まじい速度で成長してるんだから、たまったもんじゃないよね。
本当に非常識な人達だわ〜」
「えっ?」
えっ? ってなに?
私は至ってまともな感想を述べたと思うんだけど……まぁいいや。
変な顔で何故か私を凝視してるフィルは置いておくとして。
「う〜ん」
それに加えて、後方からエマの支援が飛ぶ。
「手助けは必要なさそうかな? これはもう時間の問題ね」
まっ! それでもセドリック達の実力も、才能もこの私には遠く及ばないんだけども!!
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