第352話 時は来たっ!!

「すぅ〜、はぁ……」


 大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出し……心身共に最も充実した瞬間──


「むっ!!」


 練り上げた魔力を、一気に解き放つ!!


「むむむぅ〜」


 空間を私の魔力……魔素エネルギーで満たし、ユニークスキル・魔素の支配者の権能で支配下に置く!!


「ぷはぁ〜」


 集中してたせいで止まっていた息を吐き出すと共に、一瞬で魔素が霧散しちゃった。

 あぁ、めっちゃ疲れる! でもっ!!


「どうですか!? 今一瞬だけど、できてませんでしたか!!」


「ふふふ、流石ね」


「ソフィーちゃん、おめでとうございます」


「ソフィーちゃん、すご〜い!!」


 ノワールさん、レヴィアさん、ベルさんのこの反応!

 という事はつまり……


「成功よ」


「っ! やったぁ〜!!」


 ついに! ついにできたっ!!

 長かった、オルガマギア魔法学園に入学した10歳の時点で私の魔力量は1280万だったし。

 15歳になった今となっては、5000万を優に超える。


 だからここ数年は魔力が枯渇するなんて事は一度もなかったけど……魔素エネルギーを全開で解放して、魔力が枯渇すればノワールさん達に回復してもらい。

 何度も何度も、挑戦してやっと! 一瞬だけど、やっと成功したっ!!


「ふぃ〜」


 本当に、本当〜に! 疲れたっ!!

 なんたって何回も繰り返し魔力枯渇してたわけだし……でも、達成した時のこの達成感っ!!


 公爵令嬢として、本当なら褒められた行為じゃないし。

 ファナとかが見ていれば怒られるだろうけど、ここにはファナはいないし細かい事は気にしない!

 この程よい疲労感と達成感のままに、地面に倒れ込んでやるわ!!


「っと」


「ふぇっ?」


 おかしい、目を瞑って地面に身を投げ出したはずなのに……後頭部に柔らかい感触が。


「ふふふ、喜ぶのはいいけれど、地面に倒れ込むのは危ないわよ?」


「ひゃ、ひゃい……」


 め、目の前に! 目の前に妖艶な美女が!!

 ノワールさんの吸い込まれそうな黒い瞳がぁっ!!


「ウフフ、本当に可愛い反応ね」


「うぅ〜」


 近い近い近いっ!

 なにこれ!? なんか知らないけど、めっちゃ恥ずかしいんですけどっ!!



 パチン!



「ほわっ!?」


 今度はなにっ!? いきなりノワールさんの腕の中から、ふかふかで座り心地抜群のソファーの上に転移させられたんですけど!


「まったく……何をやっているのよ」


「ル、ルミエ様……!」


 流石はルミエ様!

 あの状況から助け出してくれたんですね!!


「ふふっ、ごめんなさいね。

 ソフィーちゃんの反応が可愛すぎて、つい揶揄ってしまったわ」


「はぁ……それにしても、まさか半日足らずで神域を展開できるようになるなんて」


「ふふ〜ん!」


 セドリック達の後を追って見守る必要がなくなったから、セドリック達が12階層に辿り着くまでの間に……私はノワールさん達から神域というものを教わっていたわけだけど。


 四苦八苦する事、約半日!

 ついに私はノワールさん達に教えてもらった、神域を展開する事に成功したのであるっ!!


「本当ですよ」


 フィルが苦笑いしてるけど……


「ふふっ、フィルはまだ無理そうだね」


 まっ! 私も展開できたといっても、ほんの一瞬だけだったけど。


「まぁね。

 そもそも到達者なのに、神域を展開できたソフィーが例外なんだと思うよ?」


「ふふん!」


 つまり……流石は私っ! って事ね!!

 まぁユニークスキルである探究者と魔素の支配者があったのにも関わらず、ギリギリだったんだけども。

 間に合ったんだからよしとしよう!



『次が12階層、だね』


『最初は少し手こずりましたが、慣れてくればこんなものですね』


『確かにこの程度の魔物なら私達の敵ではない。

しかしダンジョンでは何があるのかわからない、全員油断だけはしないようにね』


『流石セド! その通りだね!!』


『『……』』



とまぁ、魔物が蔓延るダンジョン内で和やかに。

ガイルとサイラスの2人は無言で周囲を警戒してるけど、セドリック達も半日かけて12階層に辿り着いたわけですし!!


「こほん! それでは、今度こそ私達も行ってきますね!!」

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