第310話 海底へっ!!

「私達が海竜さんの領域に……?」


『えぇ、あの時はご迷惑をおかけしてしまいましたので……お礼をさせていただきたいのです。

 私の領域は海底にありますが、ちゃんと空気は存在するのでご安心ください』


「えっと……」


 海竜さんの要件が、私達をもてなすために自らの領域に招待することなんて!

 ど、どう返事すれば……さすがに想定外すぎるっ!!


「ちょ、ちょっとお待ちください!

 それは私1人で判断できることではないので、みんなの意見も聞かないと」


 海竜さんに招待されるのなら、この船自体の進路が変わっちゃうわけだし。

 これはみんなの意見もちゃんと聞かないと答えられない。


 というか! 海竜さんに招待されたときの模範解答ってなにっ!!

 誰か! 私よりも人生経験が豊富な先輩方、私に助言を!! この場合なんて返事するのが正解なのっ!?


『もちろんです。

 貴女達を困らせるつもりはありませんので、残念ですが断っていただいても構いません』


 おぉ〜、さすがは海の覇者と呼ばれる存在!

 寛大というか、心が広いというか。


「わかりました!」


 海竜さんもこういってくれてることだし、招待されるかどうかの判断はみんなにしてもらうとしよう。

 本来なら船長が最終的には判断を下す必要があるんだろうけど……


「ふふっ」


 私には! なにか問題が起こったら、その全責任はガルスさんが取るっていう免罪符があるっ!!


「こほん! そういうことなのですが……どうしますか?」


「いや、どうするかって聞かれてもな……」


 まぁ、イェーガーさんが苦笑いしちゃうのもわかる。

 だっていかにSランク冒険者といえども、竜種ドラゴンに招待された経験なんてないだろうし。


 ルミエ様の加護を持っている私だってびっくりしてるんだから、竜狩りの2つ名を持ってるイェーガーさんからしたら、なおさら信じられないような出来事だもん。


「ふむ……ガルスさんはどう思いますか?」


「なんで俺に……?」


 なんでって。


「だって責任を取るのはガルスさんじゃないですか」


「お前な……」


 呆れたような顔をされたけど……


「確かに」


「そういえば、そんな話をしてましたね」


「……どうするの?」


「お前らまで……」


 いまいちなんの話なのか理解できてなさそうなフラン先輩や、未だにちょっと恍惚とした表情のオラシオさんといつも通りのエレンお兄様。

 言葉数が少ないシャドウさん、苦笑いしてるフィルとかアルマさんはともかくとして!


 うんうん! って感じでイヴさん、ミルバレッドさん、ラピストさんも頷いてるし。

 私が船長になった経緯は、この場にいる全員が知るところ!

 私の主張は至って当然のものなのだっ!!


「ふふふ!」


 海竜さんの招待を受ければ、その間は依頼が中断してしまうことになる。

 けど、海竜は海の覇者と呼ばれる存在。

 そんな海竜さんの招待を受けたら、なにか有益な情報を得られるかもしれない。


 どっちを選んでもメリットとデメリットがあるわけだけど。

 さぁ! 最年少である私に船長なんて面倒……げふん! げふん! 重要な役割を押しつけた報いを!

 この重要な決断を下してもらおうじゃないですかっ!!


「はぁ……まっ、いいんじゃねぇか?」


「ガルスさんは海竜さんの招待を受けるべきだと?」


「あぁ、どうせこの依頼は一日二日で終わるような話じゃねぇからな。

 ちょっとくらい寄り道しても影響はそんなにないだろう」


 まぁ、確かに。


「それに……冒険者なら未知の場所に行ってみたくなるもんだろ?」


「っ!!」


 ガルスさん。

 ニヤって笑みを浮かべてなにをいいだすのかと思えば……


「決まり、ですね」


 わかってるじゃないですか!!

 さすがは冒険王っ! 冒険者の王様と呼ばれているガルスさん!!


「他のみんなも、それでいいですか?」


 反対意見は……なし!

 うんうん! それでこそ、ロマンを追い求めてこそ冒険者だもんねっ!


『話は決まったようですね』


「はい! 海竜さんのご招待、ありがたくお受けさせていただきたいと思います」


 いざ! 海竜さんの領域……海底へっ!!

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