悪役令嬢は最強を志す！ 〜前世の記憶を思い出したので、とりあえず最強目指して冒険者になろうと思います！〜

第292話 再会

　さぁ！ 何人のＳランク冒険者が来てるかな〜……

「ソフィーっ！！」

「うへっ！？」

　こ、この声は……

「ぷはっ〜、もう！ エレンお兄様、いきなり抱きしめないでくださいっ！！」

　いつものこととはいえ、当然だとちょっとドキッとしてびっくりするんですからねっ！！

「ちょっと、ソフィーさん？

　流石にそれはまずいんじゃないかな？」

「へっ？」

　まずいってなに、が……

「っ！！」

　そうじゃん！ ここはいつもの公爵邸（おうち）じゃないっ！！

　ここは冒険者ギルド本部にある、最重要時以外は利用されないらしい会議室！

　そして……この部屋には今！ 冒険者ギルドという超巨大組織の頂点に立つ統括（グランドマスター）であるガルドさんによって、世界各地から招集されたＳランク冒険者達がいる！！

　よってこの場所にＳランク冒険者〝剣帝〟であるエレンお兄様がいるのはわかる。

　けど！ そんな場所でいつものように私を抱きしめるのはまずい！！

　だって世間的には最年少Ｓランク冒険者ソフィーは、ルスキューレ公爵令嬢じゃないわけだし。

　その上！ びっくりしたせいで、ついついエレンお兄様っていっちゃったし……フィルのいう通り、これは非常にまずいっ！！

「お兄様！ とりあえず、離してください！！」

「っ〜！！ ソ、ソフィーに嫌われ、た……」

　エレンお兄様が雷に打たれたみたいになって、めっちゃショックを受けてるけど……今はそれどころじゃない！！

　今の一幕をＳランク冒険者達に見られてしまった、この事実はもう変えられない。

「くっ……！」

　ならば！ どうするべきか。

　はっきりいって、今の私はルミエ様とかレヴィア様とかベル様とか一部の規格外の存在を省いて、世界でもトップクラスの実力を持っている……と思う。

　事実としてＳランク冒険者の１人だし、少し前には到達者に至って、昨日には強者の代名詞たる覇気も習得した。

　ぶっちゃけ、今の私を軽んじることは一国ですら不可能だろう。

　つまり！ 私の目的の１つである、個人で一国を相手どれる力を手に入れるという目的は達したといっていい。

　だからソフィア・ルスキューレがＳランク冒険者ソフィーの正体だって、事実が世間に露見するのは問題ない。

　だって国王ですら気を遣わないとダメな存在になった私に、変な言いがかりをつけて私の不興を好んで買いたいって人は……まぁ、まともな人ならまずいないだろうし。

　この際、それは別にいい。

　けど！ 街の危機を救ってババ〜ン！！ って自ら正体を明かすとか、もっとカッコいい状況なら！

　私の狙ったタイミングならともかく！ こんな形で隠し続けてきた正体が世間にバレるのは恥ずかしすぎるっ！！

「ソフィー」

　落ち着け私。

　今こそ冷静に、そして唸れ！ 我が頭脳よっ！

　今こそ我が叡智を持ってして、この窮地を脱して見せるっ！！

「ねぇ、ソフィー」

　問題なのは、どうやってこの場にいるＳランク冒険者達に口止めをするか。

　この場にある全てのＳランク冒険者を黙らせるとなると、至難の技だけど……

「はい！」

「ほわっ！？」

　び、びっくりしたぁ〜。

「フィル！ いくら同じパーティーメンバーで、私の相棒とはいえ、いきなり女の子の脇腹をつつくのはよくないと思うんだけど？」

「それは謝るけど、ソフィーはもう少しは人の話を聞こうか」

「え？」

　それはどういう……

「よく周りを見てみて」

「周りって……」

「よう、嬢ちゃん。

　久しぶりだな」

「あはは、昨日ぶりですね」

「えっ！ えっ！？ エレンくんが、ソフィーちゃんのお兄様っ！？」

「ふふふ、こんにちは」

「ガルスさん、ミルバレッドさん、フラン先輩にオネットさん……」

「そっ、まだ知り合いのＳランク冒険者以外は来てないんだから問題ないでしょ？」

「な、なるほど」

　確かにいわれてみれば、ガルスさんはもちろん、ミルバレッドさんもエレンお兄様から私のことを聞いて知ってるわけだし。

「でもフラン先輩とオネットさんは……」

　まぁ、まったく驚いてないところを見るとオネットさんには学園で会ったときにバレてた可能性が高いけど。

「ご安心ください。

　ソフィーさん達にはご迷惑をおかけしましたし、この事は内密にさせてもらいますよ。

　ねぇ、フラン？」

「えっ！ う、うん！

　大丈夫、誰にもいわないから！！」

　フラン先輩……失礼だけど、めっちゃ不安だ。

「まぁ、そういうこった。

　とりあえずお嬢ちゃん達も好きな席に座ったらいいが……その前にそこのバカをなんとかしてくれ」

「えっと……はい、わかりました。

　あの、エレンお兄様？ 別に私はエレンお兄様が嫌いになったわけじゃないですよ？」

　ただ、さすがに恥ずかしいし、身バレしちゃうから人前で。

　特に！ 他のＳランク冒険者達の前で、いつものように抱きしめたりするのはダメだって、ビシッと注意しなければ！！

「っ！ ソ、ソフィーっ！！」

「うっ……」

　そ、そんな目で見ても……

「もう、仕方ないですね。

　他の人達が来るまでですよ？」