第262話 残念でしたねぇ!
「クフフ……行け! エンジェル・スライムっ!!
奴らを蹂躙するのですぅ!」
「っ!」
速いっ! スライムのくせになにこのスピード!?
すぐに結界を……いや、アイツは結界を無効化する能力があるし、あのスライムも結界で防げるかわからない。
ここは物理的に防ぐべきっ!
「アース・ウォール!!」
「クフフッ! そんな下級魔法で防げるとでも思っているのですかぁ!?」
「下級魔法、ね」
確かにアース・ウォールは五大基本属性である土属性の魔法で、その中でも初歩的な魔法の1つ。
「けど……」
ドンッ!!
お腹に響くような衝撃音が鳴り響き……
「なんだとっ!?」
ペルセ・ベランが驚愕の声をあげる!
「ふふ〜ん!」
私のアース・ウォールをなめてもらっては困る。
イストワール王国でもぶっちぎりで一番の魔力量を誇る私が、本気で作ったアース・ウォールの強度は伊達じゃないのだよ!!
なにせ! 特Aランク、災禍級に数えられる存在にして、獣の王と称される魔獣ベヒーモス。
怒り狂ったベヒーモスの攻撃すら受け止めた実績がある!! まぁ、二撃目で粉砕されちゃったけど……
「フィルっ!!」
「わかってる!
閉ざせ……光のベール」
ドゴォッ!!
フィルが展開した光の結界が生徒達を包み込むと同時に、アース・ウォールが轟音と共に砕け散る。
「ふむ」
この短時間で私のアース・ウォールを破壊できるってことは……あのスライムはスピード、攻撃力ともにベヒーモスに匹敵すということ。
まぁ拉致した生徒達の血液で作った媒体まで使って、召喚されたスライムだし。
見た目からして、ただのスライムなわけがないのは明白だけど……
まさかスライムが、獣の王と称されるベヒーモスと。
赤黒い身体に側頭部から生える捻れた牛のような真っ黒な二本の角を持ち、長く鋭い犬歯を覗かせる顎には一本の角が伸びていて超カッコいいベヒーモスと同格だなんて!!
「おやおやぁ〜?
クフフ! 結界なんて無駄だと理解できないようですねぇ?」
「ふんっ、なんとでもいうがいい!」
確かにアイツには結界を無効化できる能力がある。
とはいえ、あのスライムにも同じ能力があるのかはわからないし。
結界を展開しておくに越したことはない。
「それに……この結界はお前やそのスライムから生徒を守るためのものではありませんよ?
この結界は……」
バチッ! バチッ!
洞窟の中にポッカリと間広大な空洞みたいになってる、セーフティーゾーンとはいえ……ここは七大迷宮・大罪の内部。
そんな場所で生徒達を危険に晒すわけにはいかない!!
「私が思う存分、闘えるようにするためのもの!
魔闘法……
速攻で終わらせるっ!!
バチィッ!!
私自身を雷と化し、青白い軌跡を! 焦げ跡を残して雷速で巨体のエンジェル・スライムへと疾駆し……
「なっ!?」
私の
「白雷刀……」
チンッ!
刀が鞘に戻る小気味いい音が鳴り響き……
「無閃」
バリバリバリッ!!!
「──ッ!!!」
青白い閃光が。
耳をつんざく雷鳴がエンジェル・スライムの声にならない悲鳴を掻き消し、細切れとなったその身を焼き焦がす!
「そんな、バカな……」
「さて」
残るは雷によって焼き焦がされ、チリとなったエンジェル・スライムを見て愕然としてる今回の生徒失踪事件の黒幕。
教団……光の使徒と名乗る集団の10人の最高幹部、十使徒が1人らしいペルセ・ベランのみ!
「お前の切り札は倒した!
無駄な抵抗はやめて、素直に降伏しなさい」
この男は拘束して拉致した生徒達の居場所を聞き出さないとだけど……それよりも、まずはこの場にいる生徒達を学園に連れて帰ることが最優先かな?
「クッ……クフフッ」
「へっ?」
な、なに? いきなり笑い出してどうしたの?
「アヒャッヒャッヒャッ!!」
怖いんですけどっ!?
「素直に降伏? なにを既に勝った気でいるのですかぁ?」
「ソフィーっ!!」
「っ〜!!」
ドゴォッ!!
振り下ろされた
「ほほ〜う、さすがは特異点たる愛子。
いやSランク冒険者、白銀の天使ソフィーと言ったところですねぇ。
まさか完全に不意をついた今の一撃を、体を捻ってかわすとは」
私としたことが油断した!
フィルの声がなかったらモロにくらってたわ……
「なんで……」
確かにたった今、倒したはずなのに……
「エンジェル・スライムがまだ!」
「残念でしたねぇ!
私の最高傑作たるエンジェル・スライムはその肉体の一片さえ残っていれば、無限に再生できるのですよっ!!」
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