第255話 保護

「むふっ!」


 十分な距離をとり!

 不可視化インビジブルの魔法で姿を隠し! 気配遮断の結界を展開して、バレないように尾行する!!


「さっきまであんなに怖がっていたのに、今はノリノリだね」


「ふっ!」


 今の私はさっきまでの私とは一味違うのだよ!

 なにせ……さっきは1人だったけど、今はフィルと2人なのだから!!


「深夜の学園は確かに不気味で怖い、それは認める。

 でも1人だと怖いけど、2人なら怖くない!」


 それに一緒にいるのはフィルだしね。

 オルガマギア魔法学園に入学して2年間、フィルとミラさんとはほとんど毎日一緒にいたし。

 さらにフィルとは同じ第一魔塔に所属してて、同じ冒険者パーティーのメンバーでもある。


 フィルになら安心して背中を任せられる。

 だから深夜の学園だろうと、どこだろうと信頼できる仲間であるフィルがいたら怖くない。

 まぁ、恥ずかしいから絶対にいわないけど!


「うんうん!」


「はいはい、それは何よりだけど……油断はしたらダメだよ?」


「むっ、いわれなくてもわかってるよ」


 今は学園の警備網を掻い潜り、誰にも気づかれることなく姿を消した生徒を。

 何者かに……今回の事件の犯人に、操られてると思われる生徒を尾行してる真っ最中だし。


 たとえ今の私達みたいに不可視化の魔法を使って姿を隠し、気配を遮断していようとも関係ない。

 学園の結界に触れれば感知される。


 にも関わらず! 実際に数名の生徒が行方不明になってるってことは、なにかがあるはず。

 事実、あの2人は魔法で姿を隠してるわけでもないのに、誰にも気づかれることなくここまで来てるわけだし。


「やっぱり、ダンジョンに向かってるのかな?」


「恐らくね。

 この道の先にあるのは七大迷宮・大罪だけ、僕達の秘密基地みたいに道中に何かがあるのなら話は別だけど」


「困ったことになっちゃったね」


 この坂道の先にある七大迷宮の一角である大罪の、2つある入り口のうちの1つ。

 学園の結界もダンジョンの前までしかないし、ダンジョンの中に入られれば外部との連絡も遮断されるから面倒なことになる。


「う〜ん、やっぱりダンジョンに入る直前で2人を保護して、マリア先生達のところに戻った方がいいかな?」


「本当なら犯人の居場所まで突き止めたいところだけど……それが妥当だろうね」


 まぁ、そうだよね〜。

 既にマリア先生達には連絡済みとはいえ……さすがにこの状況で、なにが起こるのかわからない上に外部との連絡を遮断されちゃうダンジョンに入るのは危険が大きい。


「っと、見えて来たね」


「うん」


 広い空間に佇む、漆黒の神殿とその中央に鎮座する巨大な扉。

 もう何回も来たことがあるけど……何回見ても圧倒される光景だわ。


 学園の関係者じゃなくても誰でもダンジョンに入ることができる、第一魔塔のすぐそばにあるもう1つの入り口。

 あっちは真っ白な神殿で、それはそれですごいけど……こっちの方が迫力がある。


「っと」


 こんなことを考えてる場合じゃなかった!

 あの2人がダンジョンに入っちゃう前に早く保護して、マリア先生達のところに帰らないと。


「じゃああの2人を保護して……っ!!」


「これは……」


 なに、今の!?


「フィル、今のって……」


 学園の結界に……あの2人が通る瞬間。

 あの2人が通る馬車だけ、結界に穴が空いた?


「いや、考えるのは後にしよう。

 今はそれよりも」


「うん」


 やっぱりフィルも気づいてるよね。

 この感じ、どこかからかはわからないけど……誰かに見られるのは間違いない。


「即座に2人を保護するわ!!

 フィルは周囲の警戒をお願い!」


「了解!」



 バチィッ!!



 魔闘法・纏いで雷を纏って……一足で生徒2人に近づき!


「フィル!」


 次の瞬間には視界がマリア先生達が待つ、学園長室へと切り替わった。

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