第253話 完璧な作戦

 現在オルガマギア魔法学園で起こっている、生徒がいきなり行方不明になる事件。

 この学園の生徒として! そして特別名誉教授として、見過ごすわけにはいかないっ!!


「お嬢様……本当に大丈夫なのですか?」


「大丈夫、大丈夫!」


「しかし……」


「まったくもう、ファナは心配性なんだから〜」


 そんなに心配しなくてもいいのに。


「お姉様、本当に行かないとダメなんですか……?」


「ミネルバまで。

 もう! 大丈夫だから、2人ともそんな顔しないで」


 既に数名の生徒達が行方不明になっている以上、その生徒達の安全を確保するためにも。

 そしてこれ以上事件の被害者を出さないためにも、この事件は早急に解決する必要がある。


「心配しなくても大丈夫ですよ。

 我らがお嬢様は人類最強の一角である、Sランク冒険者の1人なのですから」


「うんうん! ウェルバーのいう通り!!」


 慢心する気はないけど、はっきりいって並大抵の者じゃ私の相手にもならないのだ!

 だからファナもミネルバも……


「「でも!」」


 そんなに心配しないで欲しいんだけどな〜。


「仕方ないなぁ……じっとしてても不安が募るだけだろうし。

 とりあえず、我々はお嬢様が好きな温かいココアを用意して、お嬢様のお帰りを待っているとしましょう」


「そ、そうですね!

 お仕事でお疲れのお嬢様のために、軽食も用意しておかないと!!」


「本当なら私もお姉様に同行させてもらいたいんですけど……寝ずに待ってます!」


 これって……本当にできるだけ早く戻ってこないと、ファナ達も私を待って徹夜しそうな勢い。


「そういう事ですので……お嬢様、我々のためにも可能な限り早く戻ってきてくださいね?」


「ウェルバー……」


 うまくファナとミネルバを宥めてくれたように見えて、なんだかんだで早く帰ってこないとダメにされた。

 さすがは齢8歳にして、各派閥間のパワーバランスや将来起こりえた王位継承争いを考慮して愚者を演じていた腹黒王子!


「わかったわ……できるだけ早く帰ってくる」


「お待ちしております」


「どうか、お気をつけて!」


「お勤め、頑張ってください」


「じゃあ、ちょっと行ってくるわ!!」


「「「行ってらっしゃいませ」」」


 ファナ達3人の声を聞きつつ、転移魔法を発動し……


「よし! 行こう!!」


 目の前に広がるは……静寂に包まれ、窓から差し込むほのかな月光で照らされた廊下。


「だ、大丈夫よ!」


 ウェルバーもいってたけど、私は人類最強の一角たるSランク冒険者! 白銀のソフィーこと、ソフィア・ルスキューレよ!!

 こんなの……この程度なんて!!


 確かにいつもと違って誰もいない校舎は静まり返って静寂に包まれてるし。

 月光で照らされた廊下は薄暗くて不気味だけど……


「こ、こんなの、全然怖くないんだから!!」


 怖くはないけど……やる気を、そう! やる気を出すために鼻歌でも歌って行こう。


「ふ〜ん、ふふ〜ん」


 優雅に! 美しく! 気高く!

 誰もが見惚れちゃうような所作で、誰もいない校舎の廊下をいざ行か──



 ガタッ



「ひゃっ!?」


 なにっ!!


「な、なななななに! 今の音はっ!?」


 現在時刻は深夜0時。

 今回の事件、なにが起こってるのかはわからないけど……生徒達自身の意思で姿を消したとは考えずらい。


 第一学園の警備の一切を掻い潜って、誰にも気づかれないように。

 マリア先生にも気づかれずに姿を消すなんて、生徒には不可能に近い。


 にも関わらず、実際に複数名の生徒が忽然と姿を消しているということは、何者かが手引きしている可能性が高い。

 そこで今回私が提案した完璧な作戦は、学園の生徒兼教師でもある私が囮となって、生徒達を拉致していると思われる犯人を誘き出すこと!!


 とはいえ……いつ、どうやって生徒達が姿を消したのかはわからない。

 だからとりあえず、深夜の校舎に来たわけだけど……当然、ここに生徒は誰もいない。


 この校舎内にいるのは私か、もしくは犯人だけ。

 けど犯人が姿を現したら、その瞬間にマリア先生を始めとする先生達が取り押さえる手筈になってるから……まだなんの騒ぎも起こってないってことは、犯人はまだ姿を現していないということ。


「この教室から聞こえたような……」


 つまり! 今現在、この場にいる私だけということ!!


「だ、大丈夫、大丈夫だ!」


 きっとただの聞き間違い! 気のせいに違いない!!


「すぅ〜はぁ……」


 誰もいないのは間違いないけど……もし誰かが、なにかがこの扉の向こうにいたら……


「よ、よし!!」


 いけ! 行くんだ!!

 もしかしたら、犯人が隠れてるのかもしれないし、確認しないと!!


「えいっ!」


 一気に教室の扉を開き……


「ふぅ〜」


 誰もいない。


「やっぱりただの聞き間違──」



 トン



 なにこれ? わ、私の肩になにかが!

 私しかいないはずなのに、何かの手がっ……!!


「遅いよ、ソフィ……」


「ひゃっ」


「えっ?」


「ひゃぁぁぁあっ!!」

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