第234話 行ってきます!!

「ソフィー……やっぱり、やめないかい?」


「もう、お父様……そういうわけにはいきません」


 まったく、お父様ったら……私の制服姿を見てからずっとこの調子じゃないですか。


「しかし……こんなに可愛いソフィーを、大勢の男達の視線に晒すなんて……!!」


「あはは……」


 そんな大袈裟な。

 不本意かつ仮とはいえ、私は第一王子であるセドリックの婚約者。

 私に無体なことをする人なんて、そうそういないはず。


 それに……仮にそんな人がいたとしても、そんな無礼なやつに私が屈することはない!

 そんなやつは私が、悪役令嬢として真正面から叩き潰してみせるっ!!


「こほん! 大丈夫です。

 今日は孤高の悪役令嬢として恥じない立ち振る舞いと、圧倒的な存在感で全員を圧倒してやるつもりなのです!

 お父様が心配してるような人は、下手に私を攻撃してくる人はいないと思いますよ?」


 悪役令嬢は他の令嬢をいじめる側であって、いじめられるような柔な存在じゃないのである!!


「いや、そういう話じゃなくて……」


「?」


 それはどういう……


「あなた、いい加減にしなさい。

 ソフィーちゃんが困っているでしょう?」


「リア……だ、だが! ソフィーが心配でっ!!」


「もう……ヴェル、あなたが心配なのはわかるけれど、ソフィーちゃんなら大丈夫よ」


「お母様っ!」


 さすがはお母様だわ!


「それに、もし仮にソフィーちゃんにちょっかいを出すようなおバカさんがいたら……ふふふ」


 おぉう……微笑んでるはずなのに、お母様が怖い!

 これが王妃たるフローラ様と双璧をなして、イストワール王国の社交界を牽引するお母様の威厳っ!!


 さすがはルスキューレ公爵家の真の支配者!

 公爵家当主としての威厳なんて微塵も感じられない、残念な今のお父様とは大違いだわ!

 私も見習わないとっ!


「ソフィー、父上じゃないけど気をつけるんだよ?」


「体調が悪くなったらすぐにファナに言うんだぞ?」


「ふふっ、アルとエレンも心配しすぎよ。

 私達のソフィーちゃんなのよ? みんなメロメロになるに決まっているわ」


「ソフィーちゃんなら問題ないと思うけど……気に入らないヤツがいたら、ビシッとやってやりなさい!」


 アルトお兄様とエレンお兄様は……まぁいつも通りだけど。

 フィアナお姉様、メロメロって! それにディアお姉様、ビシッとやってやりなさいってなにをですか!?


 というか、そろそろ出発しないとまずいんだけどな〜。

 オルガマギア魔法学園みたいに転移魔法で移動できれば話は別だけど、そういうわけにはいかないし。


「あの……申し訳ありませんが、そろそろ出発しないとお嬢様が初日の入学式から遅刻してしまう事になります」


 ファナ〜! ナイスタイミングだわ!!


「では、そろそろ行きますね」


「ソフィー……なにがあっても、私達はソフィーの味方だからね。

 学園でなにか辛い事があったら、すぐに言うんだよ?」


 お父様達は私の前世の記憶のことを……学園で私がどうなるのかを知ってるから、余計に心配をかけちゃってたみたい。


「ふふっ、わかりました」


もっとも! 乙女ゲームみたいに断罪されるつもりなんて、一切ないけど!!


「じゃあ、行ってきます!!」

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