第13章 動き出す運命編

第233話 粉砕してやるわっ!!

「よし!」


 これで準備完了っと!


「どう? 似合ってる?」


「っ〜!」


「ファ、ファナっ!?」


 いきなり蹲ってどうしたの!

 ど、どうすれば……と、とりあえず誰が人をっ! いやその前に回復魔法をかけた方が……!!


「だ、大丈夫です。

 ご心配をおかけして申し訳ありません」


「大丈夫って、呼吸も荒いじゃない!」


 全然大丈夫に見えないんだけど!

 もしかして……いつも私に見せてないだけで、倒れちゃうほどに疲労が溜まって……


「いえ、本当に大丈夫です。

 お嬢様が可愛らしすぎただけですので」


「へ……?」


「こほん! とにかく、とてもよくお似合いですっ!!」


「えっ、そ、そう?」


「えぇ! それはもうっ!

 きっと誰もが、神々ですらお嬢様の可愛さに見惚れてしまいますよ!!」


「ふふ〜ん!」


 まっ! なんたって私は、数年後には月の女神と称される天下の悪役令嬢にして!

 既に才媛としてその名を轟かせるルスキューレ公爵令嬢、ソフィア・ルスキューレ!!


 ファナのいう通り、私が誰もが見惚れちゃうほどになのは当然だのだよ!

 だって……私は孤高の悪役令嬢なのだから!!


「ふふっ!」


 今日は孤高の悪役令嬢として、圧倒的な存在感だけでみんなを圧倒してみせる!!



 コンコン



「ん?」


 誰だろ?


「ご主人様、ミネルバ様がお越しです」


「ミネルバ?」


 確かにミネルバはファナを筆頭に私の専属メイドの1人でもあるけど……それと同時にルスキューレの養子で私の義妹。

 そして王位継承権を放棄したといえ王族であることは変わらないのに、なぜかミネルバと一緒に私の専属執事をしてる第二王子たるウェルバーの婚約者でもある。


 そんなわけで、今日の予定のために昨日から王城に泊まってるはずなのに、どうしてミネルバがここに?

 しかも……ミネルバの護衛も兼ねて、一緒に王城にいるはずのルーまで!


「ソフィアお姉様、ミネルバです。

 お邪魔してもよろしいでしょうか?」


 それはもちろん構わないけど……


「どうぞ」


 ミネルバも忙しいはずなのに、本当にいったいどうしたんだろ?

 まさか王城でなにかあったんじゃ……


「失礼します」


「ミネルバ、いきなりどうしたの?」


 ミネルバは私の義妹で、第二王子であるウェルバーの婚約者だけど……エルヤード公爵の件がある。

 もしも王城で誰かにいじめられたりしたのなら……お姉様である私が、相手としっかりとお話ししなければ!!


「あの、その……」


 この反応……やっぱり王城でいじめにっ!!


「ソフィアお姉様が制服を着ていらっしゃるお姿をどうしても近くで見たくて来ちゃいました!」


「へ?」


 恥ずかしそうに頬を赤くしながら早口になってたし。

 今のミネルバが嘘をいったり、誤魔化そうとしてるとは思えない。


「ルー」


「ミネルバ様がおっしゃっている事は事実です。

 そもそも、何のために私がいると思っているのですか? 私がいる限り、ご主人様が考えているような事にはなり得ません」


 魔法でちょっと顔立ちを変えて、金色の髪と瞳になってるけど、いつも通りルーちゃんが私に辛辣だ!

 ってそうじゃなくて! じゃあ、本当にミネルバはいじめられたわけじゃなくて、私を見にわざわざ来たってこと?


「……」


「ソフィアお姉様? す、すみません、ご迷惑っ!?」


「ん〜! もうっ!

 本当にミネルバは可愛いんだから!!」


 もうギュッとしちゃうわ〜!


「あ、ありがとうございます。

 でも私なんて、ソフィアお姉様の足元にも及びませんわ!

 オルガマギア魔法学園の制服もお似合いでしたけど、王立学園の制服もとってもお似合いです!!」


「ふふっ、ありがとう」


「早くお義父様達にも見せてあげましょう!!

 きっと今か今かとお姉様を待ってらっしゃいます!」


「あはは……」


 自分でいうのもなんだけど、ミネルバのいう通りだと思う。

 そして、絶対にこっちが恥ずかしくなるほどに褒めちぎられる未来が容易に想像できる。

 とはいえ……時間もないことだし!


「わかったわ。

 じゃあとりあえず、お父様達のところへ行きましょうか」


 そして、そのあとは……


「ふふっ」


 今日いよいよイストワール王立学園の入学式!

 とはいえ……私は強くなったし、今更この程度で臆する私ではないのである!!


 待っていろ! 乙女ゲームの運命なんて、この私が!!

 ソフィア・ルスキューレが、木っ端微塵に粉砕してやるわっ!!

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