第207話 行ってきます!!
「ソフィー……」
「絶対に無理をしたらダメだよ?」
「危ないと思ったら、依頼なんて無視してすぐに逃げるんだぞ?」
お父様もアルトお兄様とエレンお兄様も、もう朝から……というより、昨日からずっとこの感じ!
心配されてるのはわかるけど……こうもずっとくっつかれたら、さすがにちょっと鬱陶しい。
いやまぁ、これでこそ残念なお父様とお兄様達なんだけども。
というか! エレンお兄様、いくら危なくても依頼を無視して逃げちゃダメでしょうに。
「もう! そんなに心配しなくても、フィルとルミエ様も一緒なんだから大丈夫です!!」
「いやまぁ、それはそうだけど……お父様としては、それはそれで心配というか……」
「?」
どういうことだろ?
「それとも、お父様達はそんなに私の実力が信用できませんか……?」
「い、いや! そんな事はないよ?」
「そうそう! ソフィーは強くなったよ!!」
「そうだぞ! それは俺達が断言できる!」
確かに昨日、冒険者ギルド本部で
クラーケンの討伐は危険な依頼だ。
クラーケンは別名・大海の怪物の異名を持つ魔物で、下位の
その危険度は堂々の特Aランク! このまえ私が討伐した獣の王と称されるベヒーモスと同等の災禍級に数えられる存在。
しかも足場は安定しない海。
海中に引きずり込まれでもしたら、その時点で生存は絶望的だし。
仮に船の上で戦うとしても、船体に穴を開けられて沈められる可能性が高い。
まぁ、そのことも相まっての特Aランクなんだけど……浮遊魔法で空を飛ぶことも、転移魔法で一瞬にして移動することもできる私にはなんの問題もないのである!!
もっとも、危険な相手だってことは変わらないし、お父様達が心配するのも無理はないのかもしれないけど……
「ただ……ソフィーがたとえどれ程強くなっても、それでもソフィーが危険な敵と戦うとなると……あぁっ! やっぱり行かないで! ソフィーっ!!」
「……」
「お父様を置いて行かないでくれ〜!!」
「はぁ……よしよし」
まったく、このお父様は……12歳の娘に泣きながら抱きついて頭を撫で撫でされる公爵家当主って……
「もう貴方、いい加減にしなさい」
「リア……しかし心配で……」
「そんな事ではソフィーちゃんに嫌われるわよ?」
「っ〜!?」
で、こうしてお母様に注意されて息を呑むところまでが、我が家のいつものルーティーン。
ベヒーモス討伐依頼のときも同じ光景が繰り広げられてたし。
「ルミエ様、ソフィーちゃんのことを頼みます」
「ふふっ、えぇ任せておいて。
ソフィーの事は私がしっかりと守るわ」
「むっ」
別に守ってもらわなくても大丈夫ですけどね!
私にはベヒーモスの討伐を、しっかりと単独でやり遂げた実績がある!!
それに……水上戦は1年半前の騒動で経験済みっ! ふふん〜、私に死角はないっ!!
「では! 行ってきますね!!
お姉様達にもよろしく伝えておいてください」
本当はお姉様達にもしっかりと挨拶をしてから行きたかったけど……今はそれぞれ、ちょうどご実家に帰省されてるし仕方がない。
というか! そもそもお姉様達と一緒にいるはずのお兄様達がここにいることがおかしいっ!
「それと……アルトお兄様、エレンお兄様。
新婚なんですから
お兄様達は現在、新婚旅行中。
にも関わらず、わざわざ帰ってきてなにをやってるんだか……
「新婚って……ソフィー、僕達が結婚したのは半年前……」
「それでやっと時間を作っての新婚旅行中ですよね?
それなのに途中でほったらかしなんて、お姉様達が可哀想すぎます!!」
「いや、俺達はディア達にもいわれて……」
「とにかく! お兄様達はすぐにお姉様達のところは帰ること!
いいですね?」
「「……はい」」
それでなくても今は大事な時期だというのに……まったく、残念なうちのお兄様達は……
「ファナとルーもお留守番をよろしくね」
「どうか、どうかお気をつけて」
「かしこまりました」
ルーは相変わらず淡々としてるけど、ファナも心配性だな〜。
「それでは! お父様、お母様、アルトお兄様、エレンお兄様。
本当にそろそろ時間なので、行ってきます!!」
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