第177話 いざ行かんっ!!

「ふんふんふ〜ん」


 オルガマギア魔法学園の夏休み初日!

 昨日は王都にある公爵邸に帰ってきて、そしたらギルドマスターであるグレンさんが私を待っていたわけだけど……


 冒険者ギルドは、どこの国家にも属さない独立機関!

 にも関わらず、ギルドマスターであるグレンさんがルスキューレ公爵家を訪ねて、私を待っていた理由。


「むふっ」


 それは私にとある提案をするため。

 グレンさんが私に持ちかけてきた提案……それすなわち、Sランク冒険者への昇格っ!!


「まったく……ソフィーお嬢様、朝からずっと頬が緩みっぱなしですよ?」


「むっ、そんなことない」


 仮にも私は第一王子であるセドリックの婚約者。

 たった一年足らずで淑女教育を完璧に熟してみせた天才にして、将来的には淑女の鏡と称され、社交界を優雅に舞う悪役令嬢なのだ!


 その私がずっと頬が緩みっぱなしなんて、あるはずがない。

 確かに朝ご飯を食べてるときは、残念なお父様とお兄様は当然として、お母様まで生暖かい微笑ましそうな顔をしてたけども!

 私は今もキリっとした表情を……


「あぁ〜! 喜びを抑えきれないお姉様も麗しいです!!」


「確かにご主人様は、朝からずっとだらしない……失礼、嬉しそうなお顔をなさっていますね。

 ご主人様が嬉しそうで、私も嬉しいです」


 うっ……ミネルバにルーまでっ!!

 い、いや! キリッとした凛々しい表情をしているはずっ!!


「こほん、で、では! 私はそろそろギルドに行ってきます。

 ミネルバはお勉強をしっかりと頑張るように」


「はい!」


「ルーはいつも通りの任務を頼みます」


「かしこまりました」


 うんうん! ルーに負担をかけちゃうのは申し訳ないけど……ルーの任務。

 私の不在時に公爵令嬢としての私の代わりを演じることは、めちゃくちゃ重要な任務。


「お気になさらないでください、私はそのために生み出された存在ですので。

 ただ……久しぶりにご褒美をいただきたいです」


「ふふっ、わかったわ。

 じゃあ今日帰ってきたら、たくさん撫でてあげる」


「ありがとうございます」


 任務をこなしてくれるルーに対するご褒美が、頭を撫でることなんかで本当にいいのかな?

 いやでも、ルー本人がこのご褒美を望んでるわけだし……う〜ん、とりあえず今日はお土産を買ってこよう!


「ファナ、ルーとミネルバをお願いね」


「ふふっ、かしこまりました」


「じゃあ、行ってきます」


「「「行ってらっしゃいませ」」」


 綺麗に一礼する3人を尻目に……いつもの仮面を被って、転移魔法を展開っ!!


「っと」


 一瞬で到着! 冒険者ギルド〜!!

 さすがにギルド内に転移するのはまずいかな〜って思って、ギルドの入り口前に転移したんだけど……


『まぁ、こうなるのも当然ね』


「……」


 いきなり転移で現れたせいで、周囲でどよめきが巻き起こって、結構な騒ぎになっちゃてるけど……ま、まぁ! 細かいことは気にしないっ!!


 そんなことよりっ! 猫ちゃんサイズのルミエ様を腕に抱き!

 ギルドで待ってるグレンさんと副ギルドマスターであるミレーネさんの元へいざ行かんっ!!


「お待ちしておりました」


 ……うん、まぁなんとなくこんな気はしてたよ?

 初めてお兄様達とギルドに来たときもこうだったし。

 ただ意気込んでギルドに足を踏み入れた身としては、ちょっと恥ずかしいといいますか……


「ふふっ、お久しぶりです。

 ソフィーさん」


「「「「「「「「ッ!!!」」」」」」」」


 私を出迎えてくれた美女。

 副ギルドマスターであるミレーネさんの言葉に……ギルド内がどよめいた。

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