第166話 気をつけてくださいね

「おぉ〜」


 すごい! まさか、こんなにもベタ感じで絡まれちゃうなんて!!


「はっ!」


 こ、これは! もしかしてアレかなっ!?

 いや、断定するのはまだ早いっ! と、とりあえず確認せねばっ!!


「ねぇねぇ! フィル」


 この場の雰囲気を崩しちゃわないように、フィルの服を軽く引っ張って小声で……ふっ、さすがは私!

 空気の読める女っ!!


「ん?」


「もしかしてアレかな!

 これって、俗いう……不良ってやつじゃ!!」


「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」


 あ、あれ? なにこの空気。

 どうして、みんなして私を見てるの?

 フィルも! ミラさんも! みんなも! なんでそんな残念な子を見るような目で私を見てるのっ!?


「ぷっ……ふふっ」


「っ〜!」


 なんかフィルに笑われたんですけどっ!!

 なにっ! 私なにか変なこといったっ!?


「むぅ……」


「ごめんごめん。

 う〜ん、不良っていうのはちょっと違うかな?」


「えっ……」


 この人、不良じゃないの?


「そうなの?」


「まぁ、断言はできないけどね。

 今日は交流会の初日でまだ一般公開はされてないから、この場にいるって事は彼もどこかの学園の生徒って事」


「うんうん」


 そういえば……さっきの開会式で、そんなことをいってた気が……しないでもない。


「恐らく彼はオルガラミナ武術学園の生徒。

 たまにいるんだよ、武術を至高として魔法を使う者を蔑む人がね」


「へぇ〜」


 世の中にはそんな思想が。

 私としては魔法も武術も優劣なんてなくて、どっちもすごくて、どっちも大事だと思うんだけど……


「彼もその考えの持ち主なんだと思うよ。

 だからオルガマギア魔法学園の生徒である僕達に突っかかってきたってわけ」


「なるほど」


 な〜んだ、じゃあやっぱり不良じゃないのか。

 せっかく前世の記憶にある不良……ヤンキーってやつを生で見ることができたと思ったのに。


「て、テメェらな、何がなるほどだ! バカにしてやがんの……」


「あっ! フィル、あっちでなにかやってるよ!!」


「あれは……オルガラミナ武術学園の生徒による剣舞だね」


「剣舞! みんなで観に行きましょうよ!!」


「う〜ん、そうね。

 ソフィーちゃんがいうのなら、みんなで観に行ってみるとしましょうか」


「さんせ〜い」


「いいね!」


「俺もちょっと気になるかも」


「私も! 剣舞見てみたい!!」


 よし! 決定っ!!


「じゃあ、行きましょう〜!」


 むふふっ、世界最高峰の学園……世界三大学園の一角であるオルガラミナ武術学園の生徒による剣舞!

 楽しみだなぁ〜。


「ふんふんふ〜ん! ん?」


「おい、テメェ……ふざけてんのか?」


「離してください」


 まったく、いきなりレディーの肩を掴むなんて失礼な!

 それに……危うく腕に抱いてるレフィーちゃんを、落としちゃいそうになったじゃないっ!!


「このクソガキっ! さっきも言ったはずだぜ」


「むっ」


 この人、まさか……


「っ! ソフィーちゃんっ!!」


「まぁまぁ、ミラさん。

 みんなもちょっと落ち着いて」


「落ち着いてって! フィル、貴方ね……っ! 危ないっ!!」


 まさかとは思ったけど、やっぱりっ!!


「陰湿な魔法使いの分際で、調子に乗ってんじゃねぇよっ!!」


「なにを……」


「えっ?」


 私の肩を掴んで、拳を振り上げていた男。

 お留守になってた足元を払われて、空中で間抜けな顔を晒してる男のガラ空きになったお腹を……


「がぁっ!?」


 蹴り飛ばす!!


「ふん!」


 吹っ飛んでいっちゃったけど……まぁ、手加減はしてるから問題ない。

 たぶん、きっと! 恐らくっ!!


「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」


「だから言ったでしょう?

 ああ見えてソフィーは、魔王すら倒したSランク冒険者でもあるんですよ?

 肉弾戦でもあの程度の人に遅れは取りませんよ」


 フィルがミラさん達となにか話してるけど……大丈夫だよね?

 さすがに今ので死んじゃったりは……


「がはっ、げほっげほっ……」


 あっ、よかった。

 苦しそうだけど、ちゃんと無事だ!


「ふぅ〜」


 あっ、これだけはしっかりといっておかないと!


「ぅぐ……お、まえ、なに者、なんだよ……」


「こほん、いきなり殴ろうとするなんて危ないじゃないですか!

 もし誤って、腕に抱いてるレフィーちゃんを落としちゃったらどうするんです!!」


「……」


「まったく、これからはちゃんと気をつけてくださいね」


 あぁ〜スッキリした!

 うんうん、やっぱり子ネコを抱っこしてるのに、いきなり殴りかかってくるなんて許せないもんね!!


「じゃあ! 気を取り直して、剣舞を観に行きましょう!!」

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