第134話 お客様って誰だろ?

 アルトお兄様、ルー、ルミエ様、ファナと一緒に転移魔法でオルガマギア魔法学園から王都にある公爵邸に帰ってきて、玄関先でお父様達に出迎えられてから早30分……


「ソフィー!」


「ソフィー!!」


「ソフィーっ!」


「ソフィーちゃん!」


「……」


 今の私は確実に死んだ魚のような、ハイライトを失った目。

 呆れたような、全てを諦観したような顔をしていることだろう。

 なにせ……


 この間ずっと!

 30分間ほどもずっと玄関先で! お屋敷に入ることもせずにお父様達に撫でられたり、頬ずりされたり、抱きしめられたりと、されるがままになってるんだもんっ!!


 ルーは認識阻害を使ってるとはいえ、私がここにいるのに私の代わりを演じてくれてたルーが万が一誰かに見られたらまずいってことですぐにお屋敷に入って行っちゃったし。

 ルミエ様も家族水入らずを邪魔するのは悪いってルーと一緒に行っちゃった。


 ルーちゃんもルミエ様も薄情だわっ!!

 アルトお兄様とは既にオルガマギア魔法学園で再会してるとはいえ、残念でちょっとウザいほどに過保護なお父様達と1ヶ月ぶりに再会したらこうなることは容易に想像できたはずなのにっ!


「はぁ……皆様、そろそろいい加減にしてください。

 いつまで中にも入らずにそうしているおつもりですか? ソフィアお嬢様が困っておられますよ」


「っ!」


 バ、バルト〜っ!!

 さすがは執事長たるバルトっ! もっとお父様達にいってやって!!


「何を言うか! 私達は1ヶ月もの間、ソフィーに会えていなかったんだぞっ!?

 早急にソフィーを補充する必要があっ……!?」


「まったく……ヴェルト、貴方は何をやっているのですか」


 お、おぉ〜、熱弁するお父様の後頭部にお母様の一撃が見事に決まった!!


「ユ、ユリアナ……そう言うキミだって今の今まで私達と一緒に……」


「あら、今何か言ったかしら?」


「い、いえ、何でもないです」


 お父様……いやまぁ、これでこそお父様だけども。


「ふふふ! ソフィーちゃん、ごめんなさいね。

 1ヶ月ぶりの再会だったからつい時間を忘れちゃったわ」


「お母様……」


「さぁ、お家に入りましょうか」


「はい!」


 むふふっ、お母様と手を繋いじゃった!

 けど……


「「父上……」」


 う〜ん、仕方ない!

 お兄様達にもちょっと憐れみの視線を向けられてるし、さすがにちょっと可哀想だからお父様とも手を繋いであげよう!!


「お父様も!」


「ッ!! ソ、ソフィーっ!」


「むへっ! もう! 抱きつくのはダメです!!」


 じゃないと歩けないし。


「エレン、今の見たか?」


「あぁ、しっかりと。

 お父様も! って手を差し出すソフィー……可愛すぎる!!」


「父上め! なんて羨ましい!!

 お兄様も! って言われたいっ!!」


 お兄様達がなにやらこそこそ話してるけど……細かいことは気にしない!!

 左手をお母様と、右手をお父様と繋いで、いざ我が家へっ!!


「ふふっ、じゃあ行きまょうか。

 彼も待っているでしょうしね」


「彼?」


「実はソフィーに客が来ていてね。

 まぁ、そんな些細な事よりも……リア」


「ふふふ、どうしたの? ヴェル」


「いや、何でもない。

 こうしてリアと一緒にソフィーと手を繋げていて幸せだなぁと思っただけだよ」


「ふふっ、私もよ」


「む〜」


 もう! お父様もお母様も、私を挟んでイチャイチャしないでください!!

 しかし私にお客様って誰だろ? まさか……


「あっ、やっと来たね」


「っ!」


 あ、貴方は……てっきりまた、セドリックが来てるのかと思ったのに……


「お帰り、ソフィー。

 ちょっとお邪魔してるよ」


「皇帝陛下っ!?」


 なんで皇帝陛下がここにっ!

 というか! まだ昨日の新人戦で見たときと同じでボロボロのままなんだけど大丈夫なのっ!?

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