第126話 白銀VS黄金 決着

「これは……」


「ふふ〜ん!」


 驚いてる、驚いてる!

 まぁ、いきなり空気中の水分が蒸発して空気が急速に乾燥し、地面が燃え始めたらこんな反応になるのも当然というもの!!


「むふふっ! この魔法の名前は炎域」


 むか〜し、約400年前にあった大陸全土を巻き込んだ魔王との大戦。

 聖魔大戦において、マリア先生のお弟子さんが使ったという大魔法!!


 まぁ、そんなわけで! いかにフィルとはいえ、驚いちゃうのもむりはない!!

 それに……この魔法は魔王ナルダバートとの戦いのあと! お父様達から教えてもらった王都防衛戦の顛末。


 王都に向かって侵攻してきたナルダバートの最高幹部〝五死〟と彼らが率いた総勢10万もの不死者の大軍勢。

 そのうち、〝五死〟筆頭だった静殺のグレイブと約2万5千もの軍勢をマリア先生が瞬殺したって話を聞いて、マリア先生に私にもその魔法を伝授してほしいと突撃……こほん、お話を伺ったところ!


 そのお弟子さんの話と、そのときマリア先生が使った魔法・聖炎領域は炎域という魔法のアレンジだって教えてもらい!

 マリア先生の指導のもと、頑張って修行を重ねて習得した私のとっておきの1つっ!!


「この魔法は……」


「文字通り、指定範囲内を術者の意思によって自由自在に操られる炎が支配する灼熱の空間へと作り替える超魔法」


「ほぇ!?」


 な、なぜフィルがそれをっ!?


「先日イストワール王国であった魔王が一柱ヒトリ、不死の呪王ナルダバートとの戦いでマリア先生が王都防衛時に使用した聖炎領域の雛形。

 かつての聖魔大戦で紅蓮の魔女様が使ったと云われる魔法の事くらい知ってるよ」


「っ!」


 く、くっそぉ〜フィルめっ! なんで知ってるのっ!?

 私がビシッとカッコよく炎域の説明をしようと思ってたのにっ!!

 これじゃあ炎域を発動して得意になってた私が間抜けみたいじゃんかっ!


「まぁ、この魔法は魔力消費が尋常じゃないはず。

 いくらソフィーでも……」


「はぁっ!!」


 こ、こうなったら炎域の威力を見せつけて、間抜けな姿を晒しちゃった私への観客達のイメージを上書きするしかない!


「ちょっ! いきなりこれはっ……!!」


 フィルの周囲……前も背後も左右も、地面や頭上さえも! フィルの周囲の空間を全て燃やし尽くして、一気に終わらせてやるわ!!


「仕方ないね……」



 ────ッ!!



「なっ!?」


 完璧なタイミングで、絶対に回避不可能なタイミングフィルを包み込んだ炎が掻き消され……


「どうせちまちまとやってもソフィーには通用しないだろうし、持久戦になれば僕に勝ち目はないからね」


「……フィル?」


「ここからは僕も手加減なし。

 全力でいかせてもらうよ?」


「なに、その姿……」


 フィルが纏う白い光の衣に、背中に広がってるまさしく天使みたいな翼はなにっ!?


「コレが僕の本気。

 全力戦闘時の姿だよ」


「……」


「ふふっ、さすがに驚いたかな?」


「か……」


「か?」


「カッコいいっ!!」


「……」


 むぅ〜フィルのくせに、なにそのカッコいい姿はっ!!

 まさしく黄金の天使じゃんかっ! しかも……今は仮面を着けてるけど、フィルは容姿端麗だから白い光の衣を纏って、真っ白な光の翼があっても超似合ってるだろうしっ!!

 あとで私にも教えてくれないかな?


「はぁ……まったく。

 ソフィー、キミね……ちょっとは驚いてくれてもいいんじゃない?」


「ん? 十分に驚いてるよ?」


「いや、うん、そうじゃなくてね……もうちょっとこう……」


 なにやらぶつぶつといってるけど……今は試合中だし、細かいことは気にしないっ!


「確かに……確かにフィルのその姿はめちゃくちゃカッコいいけど……」



 バチィッ!!



「負けるつもりは毛頭ないっ!!」


 魔闘法・纏。

 全身に纏った魔力を雷属性に変質させる事で全身に雷を纏う、魔王ナルダバートとも渡り合った私の本気の戦闘スタイル!!


「そして……」



 ピシッ──!!



 燃え盛っていた地面が、炎が一瞬にして凍りつく。



 パキパキッ──!



 私の周りの空気凍りつき、遠目からでも目視できる氷の結晶ができあがり……


「氷冷の太刀」


 翳した私の手の中に美しい氷の太刀が現れる!


「ふふっ」


 フィルが光を纏うというのであれば! 私は雷と氷を纏って迎え撃ってやるわっ!!


「ソフィー、僕まで凍らせるつもり?」


「フィルなら問題ないでしょ?」


 現に白い光の翼で空に浮かび上がって、氷冷の太刀を生み出した影響で漏れ出た……試合会場の地面を一瞬で凍り付かせた冷気から逃れてるし。

 というか! あの翼で飛べるんだ!! 絶対にあとでフィルから詳しい話を聞き出さないとだけど……そのまえに!


「次で決めるっ!!」


「まったく、キミは……まぁ、僕としても望むところだけどね」


 おっ、フィルが纏う魔力が跳ね上がった!


「いくよ」


「ふふん! こいっ!!」


 真正面から打ち破ってやるわ!!


「降り注げ! ルクス・レインっ!!」


 フィルの周囲に形成される無数の光の雫。

 雨のように降り注ぐ光の弾幕……だけど! 叡智の権能で加速した世界を見て、雷を纏って雷鳴と化した私には光の弾幕ですら止まって見えるっ!!



 ザクッ!



 氷冷の太刀を地面に突き刺して……魔力を解放っ!!


「凍りつけ……白銀世界シルバー


 瞬間────全てが。

 降り注いでいた幾多もの光さえも凍りつき、静寂が支配する銀世界へと切り替わる。


「ッ……まさか、コレさえも……」



 バチッ──



 愕然と目を見開いて、すぐに苦笑いを浮かべてなにか呟いてるフィルへと向かって雷を纏わせた氷冷の太刀を一閃!



 バチィィィッ!!



 静寂の世界を切り裂く雷鳴が鳴り響き……凍りついたフィルの保護結果が砕け散った。



『……け、決着ぅ〜っ!!

 あまりの戦いに私もつい見入ってしまいましたが……私達を魅了した異次元の戦いが決したっ!!

 この戦いを! 白銀と黄金を衝突を制したのは……白銀の天使! ソフィア選手〜っ!!』

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