第108話 魔力量

 お、おかしい……ここはもっと、すごいっ!! って感じで盛り上がるはずなのに!!


「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」


 なんでみんな黙り込んでるのっ!?

 なんの反応もないし……気まずい、すさまじく気まずいっ!!


「うぅ……」


 マリア先生、この空気をなんとかしてください!

 というか! もう席に戻ってもいいですかっ!? いいですよねっ!?

 みんなの無言の視線の圧から逃れさせてっ!!


「ふふっ」


 いや、ニコッじゃなくて!

 マリア先生なら私の視線での訴えをわかってるはず! 学園長だろうが、女王陛下だろうが!

 大賢者様だろうと関係ない! 担任の先生なら生徒を助けてくださいっ!!


「はい、では皆さんソフィーちゃんに拍手を」


 マリア先生に促されてまばらに起こる拍手。

 うん、ミスった……完全にミスった! なにこの微妙な空気っ!!

 うぅ、恥ずかしい……穴があったら入りたい!


「ソフィーちゃんは席に戻るように」


「はい……」


 これから私の輝かしい青春! 学園生活が始まろうとしてるのに……まさか最初の自己紹介で! 第一歩目でこけちゃうなんてっ!

 最初が肝心だったのにっ!!


「うぅ〜……」


 あぁ〜さらば! 我が明るい学園生活。

 そしてこんにちは、前世の記憶にある乙女ゲームのような1人孤立した、暗く悲しい学園生活……


 未だにクラスメイト達の視線がグサグサ突き刺さってるけど! 本当なら優雅に歩いて席まで戻るべきなんだろうけど! 最初でしくじってしまった今、みんなの視線を気にしても仕方ない。

 このままトボトボ席まで戻ってルミエ様に癒やしてもらおう。


「ふふっ、じゃあ次は次席のフィル君、お願いね」


「はは……はい、わかりました」


 うぅ〜! 友達であるフィルにすら苦笑いされたっ!!

 もう学園なんて嫌いだっ! 悪役令嬢である私にはやっぱりキラキラした学園生活なんて無理なんだぁ〜っ!!


「ぐすっ」


 ルミエ様ぁ〜!


『はいはい、そんな泣きそうな顔をしないの』


 だって……


『今日はこのオリエンテーションだけだから、帰ったらファナと一緒にいっぱい慰めてあげるわ。

 それよりも、フィルは友達なんでしょ? ちゃんと見届けてあげないと』


 ……はい。


「僕の名前はフィル、10歳です。

 得意な魔法は雷属性と光属性の2属性ですが、一応他の属性も使えます」


 へぇ〜、雷と光か。

 光は……ともかく、雷は私も得意だし! また今度お互いに得意な雷属性魔法を見せ合い……うぅ、自己紹介でこけたりさえしなければっ!!


「フィル君も推薦入学者だけど、現役のAランク冒険者でもあるから実力は本物よ」


「「「「「「「「「おぉ〜!」」」」」」」」」


「っ……!」


 これっ! この反応が私の時にも欲しかったのにっ!


「入学時測定での魔力量は490万で歴代二位ね」


「まだまだ未熟者ですが、これからよろしくお願いします」



 パチパチパチ!!



 フィルが一礼すると同時に拍手が!!


「はい、じゃあ次は三席のミラさん」


「はい!」


 次はミラさんか〜。


「っ!!」


 ルミエ様! 今、今の見ましたか!?

 ミラさんが私の方を見てニコッて!


『はいはい』


「私はミラ、14歳よ。

 私も全ての属性を使えるけど、得意な属性は水と風!

 ソフィーちゃんとフィルに比べれば全然未熟だけど、これからよろしくお願いします!!」


「はい、ありがとう。

 入学試験の結果は筆記、実技を合わせて200点満点中188点、魔力量は28万」


 えっ? ちょ、ちょっと待って……ミラさんの魔力量が28万……?

 じゃ、じゃあ私の……私とフィルの魔力量って!


「皆さんも知っての通り、この世界における魔力量の平均は約10万。

 ミラさんはその平均値をわずか14歳で大きく上回り、今年の入試入学者ではトップの成績を収めた才女よ」

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