第83話 王都防衛戦 その1

「計画?」


「クックック! さて、お喋りはこのくらいにして続けましょうか」


「むっ」


 計画ってのがなんなのか気になるけど……さすがにそう簡単には教えてはくれないか。

 でもまぁいいや! たとえナルダバートがどんな計画を企んでるとしても、ここで倒してしまえば関係ない!!


「本当なら計画を聞き出したほうがいいんだろうけど……さすがに魔王を相手にそんな余裕はないし。

 私がここでお前を倒すっ!!」


「この不死の呪王に……この私にそこまでの啖呵を切るとは。

 確かに貴女の実力は認めましょう、特異点たる愛子に相応しい……いえ、私の想像以上でした」


「ふふん!」


 当然!! なにせ、私はいずれ最強に至る者だもん!

 けど……いきなり褒めて動揺させようとしても無駄なのだよ。

 残念ながら、戦いの真っ只中で突然敵に褒められても全然嬉しくもなんともないからな!!


「しかし、強いと言っても所詮は人間の中ではの話。

 どうやら貴女には身の程を教えて差し上げる必要があるようですね。

 今頃、我が配下の軍勢によって蹂躙されている王都の人間共の絶望を貴女にも味合わせてあげましょう」


 蹂躙されている王都の人達の絶望?

 ふんっ! 笑わせるな!!


「それはこっちのセリフだ!

 今頃、お父様達に倒されてるお前の配下達と同じように、お前のことは私がぶっ飛ばしてあげるわ!!」






 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「うぅっ、ソフィー……」


「「……」」


「あぁ、本当に……本当にソフィーが危険な魔王の領域に行ってしまったっ!!」


「はぁ、いつまでそうやってるのよ……」


「ヴェルト……王都の事はお父様に任せて行ってきなさい、とかソフィーに宣言したんだからちゃんとしないと」


「っ! そう、だな。

 その通りだ! 私が……お父様であるこの私がソフィーの帰ってくる場所を守らなければ!!」


「「……」」


「現人神殿、マリア様、どうかお力添えを」


「いきなり復活したわね……」


「いや、だから現人神って呼び方はやめ……」


「幸いまだ敵軍は動き出していない、この間に迎撃準備を整えますのでマリア様」


「わかってるわ」



 パチンっ!



 大賢者マリアが指を鳴らすと同時に王都上空にいたはずの3人の姿が掻き消え……


「お帰りなさいませ、旦那様」


「あぁ、今戻った」


 イストワール王国が王都ノリアナの一角。

 ルスキューレ公爵邸の庭に突然転移で現れた3人を当然のように出迎えた執事長バルトが恭しく頭を下げる。

 そんな執事長に驚く事もなくルスキューレ公爵家が当主ヴェルトは止まる事なく足速に歩みを進める。


「マリアさんの転移魔法を感知して先回りするとか、この家の人達はどうなってるのやら……」


「まったくね……ルスキューレ公、ついでに王都全域に結界を展開しておいたわ。

 まぁ、すぐに破られるでしょうけど多少の時間稼ぎにはなるはずよ」


「流石は大賢者様、感謝します。

 バルト、準備は?」


「恙無く」


「よろしい」


 満足気に軽く笑みを浮かべたヴェルトが目の前の扉を押し開き……


「皆、よく聞け! この王都を……我らが天使の家を何としてでも死守するぞ!!」


「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」


 一寸の乱れもなく、訓練場に整列していた騎士達の空気を震わせる声が鳴り響いた。

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