第41話 頑張ってください!

「え〜っと……つまり、約1ヶ月前に帝都に現れた白竜の正体はルミエ様であり。

 アルトとエレンから出された、魔の森を横断して帝国の帝都まで辿り着くっていうアホ……こほん! 超高難易度な試験を受けていたソフィーちゃんと魔の森の中心部で偶然出会って、ソフィーちゃんに着いて行った結果だと」


「うん」


「そうよ」


「それで、帝国の皇帝陛下とはソフィーちゃんもルミエ様も知り合いであり。

 ルミエ様はレフィア神聖王国の国王陛下がまだ赤ん坊だった頃から面識があるため、その2人にSランク冒険者への推薦状を書いてもらえばすぐにでもSランク冒険者になれると」


「うん」


「そうよ」


「……」


 黙り込んじゃった。

 まぁ、いくらギルドマスターであるグレンさんでも、いきなり超大国双方の国主と知り合いで推薦状を書かせることもできるなんて聞かされたらこんな反応になっちゃうよね。


 それに今は人化してて、お母様にも劣らないほどの絶世の美女の姿だけど。

 いつもの猫ちゃんサイズの小さくて可愛い姿にもなれるし、神聖な雰囲気たっぷりでカッコよくて威厳がある竜王の姿ですら力を抑えて弱体化してる状態らしいし。


「ふ〜む」


 本当にルミエ様って何者なんだろ?


「ソフィー、どうかしたの?」


「いいえ、なんでもないです」


 まっ! 考えたところで答えなんて出ないし、ルミエ様はルミエ様!!

 細かいことは気にしないっ!!


「まぁ、ソフィーちゃん達の話はわかった。

 ただ、Sランクの推薦の件は少し間をおいた方がいい」


「あら、どうして?」


「ソフィーちゃん達はただでさえ、数百年ぶりに特別推薦試験でいきなりAランクまで上り詰めた。

 今はまだこのギルド内で盛り上がってる程度だが…… たった半日足らずでこのギルドに所属している冒険者のほぼ全員に話が広がってるんだ」


「えっ」


 ギルド内で盛り上がってる?

 今日来た時なんて、みんなシーンって静まり返って話しかけられすらしなかったけど……


「すぐに国中、1ヶ月もあれば2人の事は世界中に知れ渡る。

 そこに今度はSランク冒険者に昇格なんてしたら大騒ぎになる事は確実、下手をすれば国家からの介入やら厄介事を抱え込む事も十分にあり得る」


「国の……」


 確かにアルトお兄様みたいにSランク級の実力を持ってるけどSランク冒険者ではない人はいるかもしれないけど。

 現在、現役で活動してるSランク冒険者はギルドの発表によるとエレンお兄様を含めても全世界で10人ほどしかいない。


 そこに数百年ぶりに特別推薦試験でAランクになった私達が、今度はすぐにSランク冒険者の仲間入りを果たしたら……しかも推薦者は超大国と称される帝国の皇帝陛下とレフィア神聖王国の国王陛下。

 大騒ぎになるのは確実!!


「まぁ、超大国の両方が。

 それも皇帝陛下と国王陛下が推薦者だったらよほどのバカじゃない限り、一国家と言えどそう簡単に手は出せないだろうが。

 絶対にないとは言い切れない」


「なるほど……」


 目立つのは一向に問題ない。

 むしろ世界最強を目指してるわけだし、目立つのは大歓迎だけど……色んな権力者達から干渉されるのは面倒だし。

 別に焦ってランクを上げる必要はない。


 Sランクに上がっても、上がらなくてもいずれ最強に至ることには違いないわけだし!

 よし! となれば、今はしばらくAランク冒険者としての冒険者ライフを楽しもう!!


「わかりまし……じゃなくて、わかった!」


 危ない、危ない。

 今の私はAランク冒険者ソフィー! 冒険者らしい言葉遣いを心がけないと!!


「ふふっ、じゃあSランクになりたくなったらいつでも言ってね?

 2人に推薦状を書かせに行くから」


「「……」」


 お、おぉ、さすがはルミエ様。


「うん、わかった」


 まぁでも、とりあえず1ヶ月はAランクのままでいいかな。


「……まぁ、俺達ギルドとしても、そうしてくれると助かる。

 正直、本部への報告だったりで今でもめちゃくちゃ忙しくて死屍累々な状況なんだ。

 ここにSランク昇格が来れば……考えたくもないからな」


 へぇ〜、冒険者ギルドも色々と大変なんだ。


「頑張ってください!」


「……ありがとう」


 むっ! なぜか苦笑いされてしまった。

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