第3章 冒険者登録編

第38話 発生っ!!

 冒険者ギルドの朝は早い。

 と言うのも、指名依頼とかの一部の物を省いて冒険者ギルドの依頼は全て早い者勝ち。


「ふむ」


 だから早朝に新しい依頼が貼り出される事から、冒険者達は良い依頼を受けようと新たに貼り出された依頼書の前に群がって争奪戦が始まる……!! ってお兄様達から聞いてたんだけど。


「これは?」


 おかしいな。

 確かにギルド内に冒険者は大勢いるけど……今現在、依頼が貼り出されてる依頼ボードの前で依頼を物色しているのは私達のみ。

 お兄様達に聞いてた話と全然違う。


 それにギルド内にいる冒険者の大多数がチラチラと私達の事を見てくるのはなんでだろ?

 私どこか変かな? 服装自体は昨日と変わらないはずなんだけど……


「ふふ、可愛らしく首を傾げてどうかしたの?」


「ルミエ様、どうしてみんな私達をチラチラと見てるのかな?

 それに誰も依頼を取りに来ないし」


「それは私達がいるから緊張しているのよ」


「緊張?」


 なぜに??


「そう、ソフィーが可愛いから緊張してるの」


「おぉ〜!」


 さすがは私! 仮面を着けていても隠し切れない私の魅力が溢れ出てるってことですねっ!!


「それに、私達は昨日の試験で目立ったからね。

 まぁ中には不躾な視線も混じっているみたいだけど」


「ひっ!」


 ん? ルミエ様がチラッと見た冒険者が悲鳴をあげてみるみる青褪めてるんですけど……さ、さすがは竜王たるルミエ様!


「ふふふ、それよりも何か良い依頼はあった?」


 っと、そうだった。

 今日は私の初めての冒険者活動! 他の冒険者達を気にしてる場合じゃなかった。


「う〜ん」


 どれが良いだろ?


「おい」


 ふむふむ、薬草の採取にオークの討伐、ゴブリンの間引き。


「聞いてるのか?」


 他には王都から移動する商人の護衛。

 こっちは王都近郊の森に出没する盗賊の調査か。


「おいっ!」


「ん?」


「お前だよ! お前っ!」


「私? 何か用?」


 ふむ、茶髪かつ茶色い目の16歳くらいの少年とそのパーティーメンバーっぽい金髪の少年に、金髪と赤い髪の少女が2人。

 うん、全然知らない人達だ。

 見たところ、装備の感じからすると新人冒険者みたいだけど……


「変な仮面なんて着けやがって! 依頼ボードの前を陣取ってるんじゃねぇよ! 邪魔なんだよ!!」


「っ!!」


 こ、これはっ! まさかっ!!


「ふんっ、クソガキの分際で調子に乗ってんじゃねぇよ」


「ちょっと、やめなよ……ごめんね? うちのバカが」


「おい、ティア!」


「そうよ、バカフェイ!

 いきなりこんな小さい子に怒鳴るなんてサイテー」


「ティアとカレンの言う通りだぞ」


「そうよレン! もっとこのバカに言ってやりなさい!」


 金髪の少女がティア、赤髪でちょっと気の強そうな少女がカレン、金髪の少年がレン。

 最初に絡んできた茶髪の少年がフェイか。


「ふふっ」


 相手が熟練の三下冒険者じゃなくて新人とはいえ……まさか昨日はなかったからもう諦めてたテンプレイベントが発生するなんてっ!!

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