第32話 実力を見せてくれ

「むふふっ!」


 もう! ギュってしちゃいますっ!!


『ふふ、仕方ないわね』


 昨日1日で猫ちゃんサイズになって弱体化しちゃってるルミエ様を抱き締める力加減は習得済み!

 そして! たった今、ルミエ様からの許可出たっ!!


 もう人目なんてどうでもいいっ!

 こんなに可愛いルミエ様を前にして、果たして誰が我慢なんてできるのだろうか? いいや! 我慢できるはずないっ!!

 というわけで、遠慮なくっ!!


「ルミエ様〜!」


『全く、ソフィーは甘えん坊なんだから』


 いつもなら家族やルスキューレ家の使用人のみんな以外の人前で、人目も憚らずルミエ様を抱き締めるなんてことはしないけど……今の私はルスキューレ公爵令嬢ではなく! これから冒険者になるただのソフィアだから人前でルミエ様を抱き締めても何も問題ないっ!!


「ソフィーさんは……何と言いますか、色々な意味で凄い方ですね」


「竜王様から発せられてたあの威圧を気にもしないって……」


「ふふっ、だから言ったでしょう?

 ソフィーは規格外だと」


「いや! 規格外すぎるわっ!!

 くそっ、お前らの事だから溺愛してる妹の話はどうせ盛ってると思ってのに……なんでこんな可憐な美少女が竜王を連れてくるんだよ!」


「むへへ〜むっ?」


 ギルドマスター……グ、グレンさん、いきなり大声をだしてどうしたんだろ?


「あぁ、胃が……公爵令嬢が冒険者になるってだけで大事なのに、いったいどう上に報告すれば……」


 ふむ、どうやら何でかは知らないけどお疲れらしい。

 まぁギルマスなんて立場にいれば荒くれものが多い冒険者達を仲裁したり、変な客が来たりと色々と疲れることがあるんだろう。


「う〜ん……あっ! グレンさんもルミエ様を抱き締めますか?」


「……」


 これでよしっ!

 前世の記憶によると、こうやって動物と触れ合うことで癒されることをアニマルセラピーというらしい。

 こんなにも可愛いルミエ様なら効果倍増なのは確実! さすがは私、冴えてる〜!!


「ふふん!」


 それに、グレンさんの膝の上にちょこんと座るルミエ様……っ!!

 私の膝の上に座ってるルミエ様も可愛いけど、第三者の視点から見るとまた違った可愛さが……


『ソフィー、私は竜王なのよ?

 私を膝の上に乗せたら余計に緊張しちゃうわよ』


「っ!?」


 ル、ルミエ様が! ルミエ様が! パタパタって飛んできて私の膝の上にちょこんって着地したっ!!


「もう、最高に可愛いっ!!」


 さすがはルミエ様! その可愛さは止まるところを知らないっ!!


「あぁ! ルミエ様を愛でるソフィーが可愛いっ!」


「おいグレン! 絶対に冒険者共からソフィーを守り抜けよっ!?」


「……はぁ、話が全然進まねぇ。

 エレン、アルト!」


「何だよ?」


「何でしょう?」


「お前らソフィーちゃんの冒険者登録で来たんじゃなかったのか?」


「そうですよ?」


「そうですよって……はぁ、もういい。

 とりあえず、お前達の言う通りソフィーちゃんが色々と規格外ってのは理解できた」


「だろ!? ソフィーは世界一可愛いだろっ!?」


「……まぁ、認めるのは癪だが、ソフィーちゃんが可愛いのは認めてやる。

 それで話を戻すが、色々と規格外なのは認めるが流石に公爵令嬢でか弱そうなソフィーちゃんを常に死の危険が寄り添う危険な冒険者するのは不安なんだわ。

 だからソフィーちゃんの冒険者登録を行うにあたってソフィーちゃん自身の実力を見せてほしい」


「冒険者登録は10歳以上で重罪人でなければ誰でも行えるはずですが?」


「いかにも、だからこれは俺からのお願いだな。

 ったく、お前らの妹だからゴリラみたいな子が来ると思ってたのに実際には竜王と戯れる絶世の美少女だ」


「当然です! 何せソフィーは私達の妹ですからね」


「ルスキューレ家の面々を考えればソフィーが可愛くないはずがないだろ?」


「お前らの話で聞いてるイメージと違いすぎるんだよっ!! 俺だって一応現役の冒険者なんだ。

 こんな少女をみすみす危険な目に遭わせたくはないんだよ……」


「僭越ながら、私もソフィーさんが冒険者になると思うと心配ですね」


「って訳だ。

 まぁ無論、こんな事を強制する権限なんて持ってないから断ってもらっても構わないが。

 丁度ここに推薦もある訳だし、特別推薦試験で実力を見せてくれないか?」

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