第31話 ルミエ様が可愛いっ!

「ふふん〜!」


 決まった〜!

 どうですか? ルミエ様!


『ふふっ、完璧だったわよ』


 やった! 昨日の夜、寝る前にこっそり練習した甲斐があったわ!!


「「っ!!」」


「ふふ」


「……」


 ふっふっふ〜ん! アルトお兄様とエレンお兄様は、私のあまりに威厳ある態度に息を呑み込んでるし。

 私達をこの部屋まで案内した女性はなぜか微笑ましげに微笑んでるけど……ギルドマスターさんは声も出ないみたいだな!


 むふふっ! さすがは私!!

 絡んできた三下冒険者を優雅かつ華麗にカッコよく圧倒して見せて、鮮烈な冒険者デビューを果たすっていう当初の目的は潰えたけど……挨拶はビシッと完璧に決まった!

 さてさて! あとはお兄様達も紹介しないとなんだけど……


「どうかなギルマス、うちの妹は?」


「可愛いだろ? なっ!?」


「え、えぇ、そうですね」


 やっぱり、お兄様達はギルドマスターさんと知り合いらしい。

 まぁ、お兄様達はSランクにAランクの高位冒険者で有名人だし、ギルドマスターさんと面識があるのは当然か。

 となると! あとは……


「こほん、ギルドマスターさん!」


「あ、はい。

 どうしましたか? ソフィアさん」


 ソ、ソフィアさんっ!!

 おぉ〜! 今までは嬢とか様をつけて呼ばれたことしかなかったから、さん呼びは新鮮だ!

 ソフィアさんか〜、むふふ! 悪くないっ!!


『ソフィー』


 っと、そうだった!


「ご存知のようですが、こちらは私の兄のアルトお兄様とエレンお兄様です。

 そして……こちらが、私のお友達のルミエ様です!」


『ふふふ、ソフィーの友達のルミエよ』


「「っ!?」」


 ふふっ、驚いてる! 驚いてる!!

 ルミエ様が姿を見せたと同時に、私達をこの部屋まで案内した女性もギルドマスターさんも目を見開いて固まっちゃった。


 どうやらギルドマスターさん達も、猫ちゃんサイズのルミエ様の可愛らしさには敵わないらしい。

 まっ! 初めて会った時のルミエ様も神々しくてカッコよかったけど、今のルミエ様は抗い難い暴力的な可愛さだから仕方ない!!


 だって! 私の膝の上にちょこんって座ってるんだもんっ!!

 あぁ〜! もうルミエ様、可愛いっ! うぅ……ギルドマスターさん達がいなかったら今すぐ抱きしめて頬ずりできるのに〜! 焦ったいっ!!


「ソ、ソフィアさん……そちらは、竜種ドラゴンですか?」


「ん? そうですよ?

 ルミエ様は私に加護をくれた竜王なのです!!」


『ふふっ、ドヤ顔で胸を張ってるソフィーも可愛いわ』


 まったく、ギルドマスターさんったら!

 いくらルミエ様が猫ちゃんサイズの愛らしい姿とはいえ、いったいドラゴン以外の何に見えるのか。


「おい……エレン、アルト」


「言いたい事はわかる。

 あと、口調が素に戻ってるぞ」


「ソフィーは色々と規格外ですから。

 口調が素に戻ってますよ?」


「お前らな……」


 お、おおおお兄様達とギルドマスターさんがタメ口で! 親しそうにタメ口で話してるっ!!

 う、羨ましい! ここは私も混ざらねばっ!


「あ、あの! 私のことも気安くソフィーでいいよ?」


「「っ……!」」


 はっ! しまった、いきなりタメ口はやっぱりマズかった!

 ギルドマスターさんも、隣に座ってる女性も黙り込んじゃった!!


「っ! こいつがソフィーを呼び捨てに、それも愛称で……でもソフィーはそう言うのに憧れてるわけだし……

 おいギルマス! お前、ソフィーに手を出したら許さないからな!」


「誰が手を出すかっ!!」


 むぅ……またエレンお兄様と親しそうに……


「はぁ……ギルドマスター」


「っと、そ、そうだな。

 うん、ふざけてる場合じゃないよな」


 おぉ〜、隣に座ってる女性の一睨みでエレンお兄様と親しそうに戯れあってたギルドマスターが焦ってる!


「ソフィーさん、竜王様。

 私はミレーネ、ここ冒険者ギルド・イストワール王国王都ノリアナ支部の副ギルドマスターをしています。

 以後、よろしくお願いしますね」


「っ! はい! よろしく、ミレーネさん!!」


 ミレーネさん、お母様と一緒でなんかできる女! って感じがして、スラッとした美人で綺麗なのにカッコいい!!


「私……俺はグレン、一応このギルドのギルドマスターをしてる。

 よろしくなソフィーちゃん」


「っ! よろしく!!」


 おぉ〜! 普通に呼び捨てじゃなかったけど、なんか冒険者って感じで感動だわっ!!


「竜王様も、どうぞよろしくお願いいたします」


『ふふっ、そこまで畏まらなくてもいいわよ?』


「あはは、流石に竜王様を相手に気軽に話せるほど肝は座っていませんのでご容赦ください」


『そうかしら? 貴方もそれなりに強いように見えるけど』


「まぁ、グレンはギルマス兼、現役のAランク冒険者でもありますからね」


「うるさいぞエレン」


『まぁ……グレン、ミレーネ、これだけは言っておくわよ?』


「「っ!!」」


『ソフィーを利用したり、傷つけたりしたら許さない。

 よくよく覚えておきなさい』


 むふふっ! せっかくのカッコいいセリフも可愛い姿のせいで可愛らしさしかないっ!!


「ルミエ様! 可愛いです〜!!」


『もう、ソフィーったら……』


「「「「……」」」」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る