第24話 最終試験クリア!

「あ、あの、お兄様?」


 さすがに公衆の面前で抱きしめられるのは恥ずかしいんですけど……!

 うぅ、てか! 急にどうしたのっ!? いや、抱き着いてくるのはいつも通りだけども!!

 

「あぁ! ソフィー!!」


「無事でよかったっ!!」


 なるほど。

 どうやらお兄様達に心配をかけてしまっていたらしい。

 でも! 私に最終試験として魔の森の横断を課したのは他の誰でもない、お兄様達じゃん!!


 お兄様達はこの5年間で軟弱な深窓の箱入り令嬢だった私がお兄様達には勝てないまでも渡り合える程度には強くなったことを知ってるし。

 そんなに心配しなくてもいいのに……


「お兄様、そろそろ離して欲しいのですが……」


「ダメ! 本当に心配したんだよ?

 ただでさえ心配だったのに、竜種ドラゴンが出たって聞いて生きた心地がしなかったんだから」


「そうだぞ。

 それに……こんなに長時間も離れ離れになってしまっていたんだ、ソフィーを補充しないとダメだ」


「うんうん! エレンの言う通りだよ!!」


「……」


 私を補充って……いやまぁ、これでこそ過保護でちょっとウザい私のお兄様達だけども!


『「「……」」』


 ほら! すぐそばで見てるルミエ様と鎧を着た騎士様に、派手すぎないけど品のいい服を着た謎の人がドン引きしてるじゃんっ!!


「み、見ないでください……」


 お兄様達に抱きしめられてる状況だけど魔力感知のおかげでわかる、わかってしまう!

 竜種ドラゴンが……ルミエ様が降り立ったこの場所は現在、外壁にいる騎士様達や、冒険者達、帝都の人達にものすごく注目されている!!


 みんなに見られてるのに……一切、全く、これっぽっちも歯牙にも掛けずに私を抱きしめて、なでなでして、頬ずりする。

 これぞ、残念なお兄様クオリティー。


 うぅ、恥ずかしい……!!

 こ、こうなったらお兄様達の気が晴れて、解放されるまで現実逃避……こほん、違うことを考えて気をそらそう。


「……なるほど、気に入られるのもわかる」


『貴方ね……言っておくけど、ソフィーはまだ9歳なのよ?』


「さりげなく私をロリコン扱いするのはやめてくれますか?」


 むっ! ニュルっとお兄様達のそばに出現した謎の人が苦笑いしながらなにやらルミエ様と親しげに話してる。

 ロリコンとかいってるけど……知り合いなのかな?


『ふふっ、それにしても皇帝自ら出迎えてくれるなんて光栄ね』


 こ、こここ皇帝っ!?

 お兄様達と同い年くらいに見えるこの黒髪の人が400年間も帝国を守り続ける現人神!

 四大国が一角にして、同じく四大国のレフィア神聖王国と双璧をなす超大国たる帝国の皇帝陛下っ!?


「あはは、貴女が来たのならば当然でしょう?」


 全然、そんな凄い人に見えない。

 帝国の皇帝陛下といえば大賢者たるマリア先生と同じく伝説に語られる方なんだけど……でも、そういえばマリア先生も本来の姿じゃなかったとはいえ伝説の人って感じはしなかった。

 アルトお兄様に教えられるまで大賢者様だって気が付かなかったし。


「う〜ん」


 魔力とか、力とかを抑えていたら意外と気がつかないものなのかな?


「ソフィー? どうかしたの?」


「いえ、あのお方が皇帝陛下だって……」


「ああ、そうらしいね」


 そうらしいね!?

 そんな軽く済ましていいの? 皇帝陛下だよ? 伝説の現人神なのにっ!!


「そんな事より、あの竜種はどうしたんだ?」


 そんなことよりって……


「こほん、こちらのドラゴンさんはルミエ様です!

 魔の森の最深部で出会って、お友達になったのです!!」


 どやぁ〜! ふっふっふ〜ん! さぁ、お兄様達よ、驚くがいいっ!!


「ドラゴンさん……」


「お友達……」


 あ、あれ? なんか思ってた反応と違う。

 むぅ〜ここはもっと、さすがはソフィー! すごいっ!! ってなると思ってたのに……


『貴方達はソフィーの兄ね?

 私はルミエ、ただのしがない竜王よ』


「「……」」


「ただのって……」


 お兄様達は何もいわないし、皇帝陛下は苦笑いしてるだけ。

 お兄様達と一緒にいたダンディーな騎士様は……直立不動で微動だにしてない。

 ルミエ様と友達になったことに対してここまで反応が薄いとは……な、ならばっ!!


「それに! ルミエ様に加護ももらったんです!!」


 ふふん〜! これでどうだっ!!


「「……」」


「うぅ……」


 なんで誰もビックリしないのっ!?


『ふふ、ソフィーは本当に可愛いわ!』


「っ! 竜王様とは話が合いそうです」


「さすがは竜王様ですね。

 見る目がある! うちのソフィーは可愛いでしょう!?」


『ふふふ、貴方達も特別にルミエで構わないわ』


 なに!? 何でいきなりそんな話になって、秒で打ち解けてるのっ!?

 恥ずかしいからやめて欲しいんですけど!!


「しかし、どうしてソフィーがルミエ様に乗って帝都まで運んでもらう事になったの?」


「そ、それはですね……」


 ルミエ様に加護をもらったあと、暫く触り心地最高なルミエ様の鱗をなでてだけど。

 私には魔の森を横断するっていう試験があるわけだし、名残惜しいけどルミエ様に別れの挨拶して帝都を目指そうとした。


 すると、ルミエ様が特別に私と友達になって仲間になってあげるっていい出して。

 ちょうどルミエ様も帝都に用事があったらしく、背中に乗せてもらって帝都まで一緒に向かうことになった。


「と、いうわけです」


「なるほど……」


「ルミエ様の用事とは?」


『彼にちょっと挨拶しに来ただけだからもういいわ』


 彼って苦笑いしてる皇帝陛下ですか?

 なるほど、やっぱりルミエ様と皇帝陛下は知り合いらしい。


「何はともあれ! これで無事にお兄様達の最終試験はクリアしました!!」


 ふっふっふ〜ん! この話を聞くとルミエ様に運んでもらうなんてズルいって思う人もいるかもしれないけど。

 お兄様達に課された最終試験は、魔の森を横断して帝都まで辿り着くこと。


 一応ルミエ様いわく、ルミエ様がお昼寝してた場所。

 魔の森の最深部までは単独でたどり着けたわけだし、魔の森でお友達になったドラゴンさんに運んでもらったらダメなんてルールはないのであるっ!!

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